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第一話

「センパーイ、僕の好きなこのサッカー漫画、イレブンブレード、っていう漫画なんですけど、アニメ化しますかねー」

 野田先輩は、部室でイヤホンをしながらスマホでアニメを見ている。この高校では、スマホ禁止なのに。背の高い体で寝そべるから、部室のほとんどの面積を野田先輩が取っている。

「いやー、厳しいでしょー」

「そうですかー」

 この部活で一番アニメに詳しい野田先輩に言われてしまったら、もう諦めざるを得ない。



2年後

 

 はー、やっとおわったー!

 部活を引退してから、勉強しかしてないけど、9月までに終わらせることを目標にしていた問題集が、終わった時の達成感はすごい。

 

 夜の1時、か。


 アニメが、やってる時間だな。


 おれは、テレビをつけた。



 「パスが渡ったー!」


 あれ……?


 おれは、目を擦った。


 青田がいる。

 五十嵐も。

 翔太も。


 これって。

 イレブン、ブレード!?



「それを、五十嵐がシュート!決まったあああ!」

 


 五十嵐たちが!

 イレブンブレードが!


 動いてる!


 すげえ!


 夢みたいだ!


 憧れのキャラクターたちが!


 動いてる!


4年後


 大学四年の10月ともなると、紅葉が少し目立つようになってくる。

 そんな中に、愛衣ちゃんを見つけた。

「愛衣ちゃん!」

「わあ! 成田先輩!」

「一緒に帰ろ!」

「いいですよ!」

 今日は、なんかついてる気がする。

「就職、決まったんですか?」

「まあ、一応、ね」

「わあ! おめでとうございます!」

 茶髪のショートヘアから覗く黒目の大きな瞳が、くしゃっと笑った。

「ありがとう! でも、ちょっと迷ってるんだよね」

「まあ、迷いますよね。でも、ひとまずお疲れ様です!」

「ありがとね」

 愛知公立大学、と書いてある校門を出て、そのまま、なぜかもう駆動している愛知県のリニアモーターカーの駅に着いた。

「先輩は左のホームでしたよね」

「うんじゃあね」

「はい、さようなら」

 反対側の豊田に向かうホームは、人がほとんどいない。その中に、愛衣ちゃんが1人。

 こっち側の名古屋に向かうホームは、人がたくさんいる。

 いま、走り出したら、告白できるかな。

 でも、足が動かない。

 あ。

 リニモ、きちゃった。

 帰らなきゃ。



「なるほど、テレビ局の選考は早いから、内定が出るのも早い。そうなると、今から受けても卒業までに内定が出るから就職留年をする必要がない、一年アルバイトをして生活すればいいから・・・・・・ごめん、もう一回言って」

 キャリア支援室の相談部屋で、単発でメガネの四十代くらいのスーツを着た藤本さんは、眉間に皺を寄せながら、腕を組む。

「だからえっと、その……」

 おれは言葉に詰まり、右手をぎゅっと握る。

「つまり君は、四年生の九月っていう今のこの時期から、3年生に混じってテレビ局の選考を最初から受けたいっていうことね!」


「はい!」

眉間に皺がもっと寄った。

「厳しくない?だって、今までテレビ局受けてきて思わなかった?内定者は東京の私立大学の人がほとんどだって。ここは地方国公立だよ?それに、国公立って就職いいわけで、現に君はいい企業の内定を持っているわけじゃない。それなのに……」

「僕は……僕は、世に出ている素晴らしい小説たちを、マンガたちを、アニメ化させたい!動かしたいんです!自分の力で、動かしたいんです!やっと、十年間探し続けて、やっと、やりたいことが、やっと見つかったんです!だから!」

おれは、進路相談室で力説するも、藤本さんはメガネを直し、首を傾げながら、おれに質問した。


「本気なのかい?」


「本気、です。だって、ほら!」



 おれは、パソコンを取り出し、カチャカチャと動かした。


「君の性格を書きなさい

君の長所を描きなさい

短所を書きなさい

弊社に入社してやりたいことを書きなさい」


「エントリーシートも完成してるんです!」



藤本さんがメガネをあげた。

藤本さんがメガネをあげる時は、真面目になる時だけ。

「……若干誤字脱字はあるけど。」

ごくっ、と唾を飲んだ。


「なるほどな。わかった。付き合ってみよう」


「本当ですか?」


「ああ。やるからには本気で行くぞ。まず、エントリーシートからだ。これじゃあ、なにが書いてあるのかわからない。本気度は伝わってくるけど、企業に対しては、簡潔に、筋を通して伝えるんだ。締め切りまで何日ある」

「あと1週間です」

「よくそこまで持ってこれたな」

「はい!」

「じゃあ、次回までに、簡潔に、筋を通して伝えるように書き直しだ」

「え、は、はい。わかりました」

 

 おれは、進路支援室のドアを開けた。

 おれの気持ちが伝わった!

 やった!

 協力してくれる!

「あら、成田くん。なんかいいことあったの?」

 パーマがおしゃれな40代くらいの進路指導室の青木さんがおれに話しかけてくれた。

「はい!藤本さんが、就活これからも手伝ってくれる、って!」

「あれ、就活はもう終わったんじゃなかった?」

「そ、そうなんですけど……」

「まあいいわ、頑張ってちょうだい」

「はい! がんばります!」

 

新連載です!

もしよろしければ、


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・下段の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


をしていただいて読み進めていただけると幸いです!

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