第1節プロローグ2
ここ桜川第二都市。与えられた使命を遂行するために魔王が住む事になった人口150万人の超大型都市だ。農業地区、工業地区、商業地区、住宅地区、学園地区この5ブロックを中心に構成されている近未来型第二都市。
その5ブロックで構成されている内の一つ商業地区、桜川旧市街地に魔王とソフィが居た。目的は勿論、買い物だ。しかし、魔王たちの見た目は大きく変わっていた。カイルの白かった髪は漆黒の黒、服装も今時の若者が着る冬らしい、動物の毛が付きのフードが目立つ黒のダウンジャケットに中は白のオシャレロンTに青色の宝石をはめ込んだリングを銀のチェーンにとうした物を首から下げ、そして、茶のカーゴパンツにカーキ色のブーツ。一見、ただの人間。人間界ではこの白い髪は目立ってしまう。そして、魔界での黒を強調したマントなども異様に目立ってしまう事もカイルはやってきて当日に散々味わっていた。
周りの人間からは変な目で見られる一方、興味本位で話し掛けてくる高校生、因縁をつけて金を巻き上げようとする怖い人たち(運良く治安部隊という都市の安全を守る者達がカイルを助けたのだが)、なので、カイルはその時から色々考え今の余り目立たない状態になっている。髪は黒彩スプレーで一時的に黒色にしているのだ。
並々ならぬ努力でやっと目立つ事がなくなり、浮かない存在になったのである。しかし、何故かカイル達に注目の視線が集まっている。歩いていると、いきなりカメラで撮られたりするのである。何故か、そんな事は簡単な事だ。カイルは余り表情を崩さないまま隣を見る。
そこには、黒と白をベースにしたゴスロリを着こなし灰色の長い髪を靡かせ、薄赤い瞳で静かに前を見つめてカツカツと歩くソフィの姿があった。
「せめてお願いだから、これ着けてね」
カイルが引きつった笑みでソフィに色付きの伊達眼鏡を差し出す。それを何も言わずに着けるソフィを見てカイルは思う一緒に家を出ていれば、こんな事にはならなかったのだろう。と
家を出る時の事だ。「ちょっと時間掛かるから先に行って、すぐ追いつくから」この言葉を安易に受け取り、先に市街地に向かったカイル。女の子は着替えに時間が掛かる生き物だと父上が母上から隠れながら呟いていた事を思い出しながら適当に歩き、店が増え周りに活気が満ち人が増えてきた時だった。後ろの方から、人がざわめく音が聞こえて振り返ってみれば
「魔王・・・・・・お待たせ」
ゴスロリを優雅に着こなすソフィさんが登場したのであった。頭に黒彩する訳でもなく、目を隠すような色付きの眼鏡を付ける訳でもなく、素の状態のソフィさんがそこにいたのだった。
痛々しい視線が集まる中、平然と佇み首を可愛く傾げるソフィに向かって思わず魔王は叫んだ。
「ボクの努力を返せぇぇえええ!!」