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自ら没落した令嬢ですが、勇者様が迎えに来て求婚されました。〜ただし、呪いが解けるまでの契約結婚です〜  作者: 心音瑠璃
第五章 契約結婚の終わり

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魔王との対峙

最終章、開始いたします!

「うっ……」


 酷く頭が痛い。

 この頭の痛みの正体を、私は知っている。

 それは、強力な魔法を使用した際に起こる“魔力酔い”だということを。

 そして。


「ようやくお目覚めか? 待ちくたびれたぜ」


 その声に反射的に顔を上げる。

 そこには、夜会で声をかけてきた人物がいて。

 ……ただし、一見男性に見えるけれど厳密に言えば人ではない。

 だって、今目の前にいるのは。


「……勇者様によって封印されたはずの魔王様が、どうしてここにいらっしゃるのでしょう?」


 そう冷静に口にすれば、魔王は一瞬目を見開いた後、おかしそうに笑って言った。


「そうか、気が付いていたんだな。さすがは勇者の嫁……、いや、今は仮なんだっけか?

 ま、そんなことはどーでも良いけど」

「……ここは、どこなんですか?」


 ここがどんな場所なのか、本当は知っている。

 けれど、それが事実かどうかを確かめるために敢えて尋ねれば、意外にも魔王は素直に教えてくれる。


「決まってんだろ。ここはあんた達が“神殿”……、魔界を封じ込めるだとかほざいて作りやがった忌々しい場所だ」


(……やっぱり、間違いないのね)


 神殿。魔王の言う通り神聖なその場所は、地下深くに存在し、魔界と人間界とを隔てる空間として存在している場所。

 そのため、勇者一行は道中現れる魔物を斃しながら、この神殿を目指す。

 そうして、たどり着いたこの神殿の最奥、大きな扉の向こう側に通じると言われている魔界を封じるのが彼らに課せられた任務であり、リディオ様率いる一行も遂行した、はずなのだけど。


「……あなたは、封印されたはずではなかったの?」


 リディオ様から聞いていたこととは違うと疑問をぶつけると、魔王は鼻で笑って言った。


「あんなお粗末な魔法ごときで俺様を封印出来ると思ってんの? ハッ、ちゃんちゃらおかしくて笑っちゃうね」

「…………」


 お粗末な魔法。リディオ様のことを言われていると思うと腹立たしいけれど、ここで腹が立ってはいけない。

 冷静になれとギュッと両手を握りしめ、慎重に言葉を発する。


「ではなぜ、この場に私を連れて来たの? 私が勇者の仮初の嫁だから?」


 そう尋ねた私に、魔王はこちらを見下ろしニヤリと笑う。

 それだけで背筋に寒いものが走ったのを感じたのも束の間、魔王は口角を上げたまま口を開いた。


「あんたを誘拐すれば、勇者を誘き出せるからだ」

「なぜそんな回りくどいことを?」

「はぁー……」


 魔王は片手で顔を覆いこちらをギロッと鋭く睨みつけた。


「あんたさっきから質問ばっかでうるさいなあ。本当に勇者が一番大切にしていた人間なのか?」


 一番大切。その単語に目を見開けば、魔王は何がおかしいのか笑いながら言った。


「ほんっとバカだよなあ。あんたのために戦ってるんだとかほざいて、俺様を封じ込めようとするもんだからさあ。

 だからあいつに“呪い”をかけてやったんだ。

 あいつもあんたも、そうすれば苦しめられるだろう?」

「…………」


 なるほど、“呪い”をかけたのはやはり彼と私を苦しめるためのものだった。

 ただその“呪い”は、彼が言っていた“呪い”とはやはり違うようだけど。


(では、魔王がかけた“呪い”とは一体)


「……お、意外に早かったなあ」


 魔王の言葉にハッとし後ろを振り返れば。


「アメリアッ!!!!」

「リディオ様!」


 そこには見たことのないほど焦ったリディオ様の姿があって。

 リディオ様が私に向かって近付いて来ようとした、けれど。


「「!?」」


 見えない壁にリディオ様が弾かれる。

 どうやらリディオ様が私に近付けないよう結界を張ったらしい。

 それを見た魔王が嘲笑う。


「残念だったなあ。お姫様を守れない雑魚勇者はそこで見ているが良い。

 ……あんたのお姫様が殺されるのを!」

「ッ、アメリア!!!!」


 リディオ様が私の名前を呼ぶのと魔王が私に向けて魔法を放ったのは同時だった。

 魔王の手から出現した禍々しい真っ黒な光の玉が私に向かって飛んでくるのが、やけにゆっくりと見えて。

 私は焦ったように手を伸ばすリディオ様の方を振り返ると、「大丈夫」と頷き笑みを浮かべてみせてから、もう一度魔王が放った魔法の光に向き直る。

 そうして、身体が真っ黒な魔法に触れた、刹那。


「「!?!?」」


 パァッと私の身体から、眩いばかりの光が放たれる。

 それは、魔王が放った魔法をも霧散するほどの強い魔法の光で。


(……感じる)


 目を閉じれば、身体の底から力が湧き魔力が全身に流れていくのが感じられて。

 次にゆっくりと目を開いた時には、黒い魔法の光は消え、代わりに魔王の身体が光で出来た鎖に縛られていた。

 魔王はそれを見て焦ったように口にする。


「何だ、何が起きているんだ!?」


 先ほどとは打って変わり焦ったような魔王を見て、自然と口角が上がるのをそのままに、今度は私の番と言葉を紡ぐ。


「見て分からない? 私の魔法は歴代の魔王皆が恐れた力だと思うけど?」


 祭壇の上にいる魔王を見据え、じっと見つめれば、魔王はまさか、と狼狽える。


「あんたは……っ、せ、聖女……っ!?」

「聖女……!?」


 結界が消え、私の元へ走り寄ってきていたリディオ様に向かって苦笑して答える。


「ごめんなさい、今まで黙っていて」


 私には普通の魔法があまり使えない代わりに、特別な力がある。

 それこそが。


「私の名前はアメリア。初代聖女の末裔よ」


 かつて魔王を封印した聖女としての力であり、そして王城から転移した際に魔王の魔力を無意識下で跳ね除けようとして、“魔力酔い”を起こした要因でもある力なのだ。

小説家になろうサイトメンテナンスのため、本日は正午に更新いたしましたが、次回から0時投稿に戻ります。(と言いつつ、もうすぐ完結なので、執筆完了次第最終回まで一気に投稿するかもしれません)

最後までお読みいただけたら嬉しいです…!

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