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自ら没落した令嬢ですが、勇者様が迎えに来て求婚されました。〜ただし、呪いが解けるまでの契約結婚です〜  作者: 心音瑠璃
第三章 契約結婚生活

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20/30

契約夫の本音

「っ、ごめん!!」


 突然頭を下げたリディオ様を見て、私は慌てる。


「え、ど、どうしてあなたが謝るの?」

「……昨日、君に意地悪な質問を投げかけてしまったから」


 意地悪な質問。その言葉に、私はあぁ、と思い出す。


「この屋敷を手放せるのかということね」

「そう。あれは、自分でも大人気なかったと思う。

 ……君が、“真実の愛”の相手を何度も強調するから」

「え? でも、本当のことでしょう? 

 この“契約”結婚は、“真実の愛”を見つけるまでの結婚で」

「そうなんだけど! ……確かにそうなんだけど、でも俺は、君が望んでくれる限り、この生活を続けたいと思っている」

「……っ」


 思いがけない言葉に動揺する。

 彼もまた、必死な様子で言葉を続けた。


「俺も、君とのこの生活が一番幸せに感じているんだ。今までで、一番。

 ……あっ、学園時代からもそうだったんだけど! 前にも言ったように、君といる時間が一番自分らしくいられる。

 この一週間君と過ごして、改めてそう思ったんだ。

 君以外には何もいらないと、そう思えるくらいに」

「……!!」


(それって……)


 リディオ様の瞳の奥に宿る熱に、息を呑んでしまう。

 思わずその瞳に見惚れてしまっていると、リディオ様はふいと視線を逸らして言った。


「だから、“真実の愛”の相手を探さなくても良い。

 君には、不便をかけてしまうかもしれないけど。

 それでも、俺は君と暮らすこの生活が一生続けば良いとさえ思っている。

 ……君が望んでくれる限り」

「…………」


 リディオ様はずるい。

 私の心などつゆ知らず、この生活を続けたいと言ってくれるのだから。

 それもまた、私への気遣いであるのだからなおのこと、タチが悪い。

 私は息を吐き、口を開いた。


「リディオ様」


 私の呼びかけに彼がこちらを見る。

 その彼に向かって意を決して口にした。


「それは駄目ですよ」

「!」


 わざと敬語を使い、いつかの時のように彼を諭す。


「あなたは“真実の愛”のお相手を見つけてきちんと正式な結婚をするべきです。

 バルディの名を継ぐ後継者だって必要でしょうし、ご両親のためにも“契約”結婚などと言わず正式な結婚をするべきです。

 ……ちなみに、ご両親にはなんと?」

「……“契約”結婚をと」

「……悲惨ですね」


 思わず遠い目をした私に、リディオ様は言う。


「いや、確かに両親には卒倒されたよ!?

 兄達には全員からそれぞれ一発ずつ拳骨を喰らったし!」

「卒倒にげんこつ……」


 思わず口にした私に、彼はガシガシと頭を乱暴に掻いて拗ねたように言う。


「分かっているよ、こんなこと、本当は良くないって。

 屋敷に託けて、君に“契約”結婚を申し込もうだなんて正気の沙汰じゃないことは分かっている。

 ……けれど、俺は呪われているから。

 全て、計画が台無しになってしまったんだ……」

「計画?」


 小さく呟かれた言葉に首を傾げると、リディオ様は力なく笑う。


「あぁ、君が気にすることじゃないよ。これは俺の問題だから。

 ……とにかく、君の言う通りこの生活に甘んじずに考えてみるよ。

 “真実の愛”のことも、その相手のことも。

 きちんと、向き合ってみる」

「…………」


 その口ぶりはまるで、その二つの条件に何かあてがあるような言い方で。

 聞こうと思ったけれど、聞けなかった。

 自分で望んだことだけれど、リディオ様の考えが変わったことにやっぱり胸がチクッと痛んだから。


(……こんなの、矛盾しているわ)


 ギュッと無意識にブランケットを握る。

 リディオ様はそんな私に優しく声をかけてくれた。


「とりあえず、まだ熱があるからもう少し眠ると良いよ。

 俺、今日は休みを取るつもりだから」

「……え!? 確か今日から出勤予定よね!?」


 外はもうすっかり明るいし、と口にした私にリディオ様は大丈夫大丈夫と口にする。


「一日くらい大丈夫だよ。何せ、俺は勇者様だから」


 本当なら驕り高ぶってはいけないと、契約でも妻として諌めるべきなのだろうけど。


「……ありがとう」

「!」


 そう口にして、ベッドに横になれば、リディオ様は口元を押さえて呟く。


「……俺、やっぱり永久に休みたい」

「それは絶対ダメだと思うわ」


 その言葉に、リディオ様は「そうだよね……」と苦笑いしたけれど、心底残念そうなところを見て少し笑いそうになってしまって。

 それを堪えて布団を被ると、リディオ様はその場で話し始める。


「……あ、王太子殿下? ごめん、今日からだった仕事、明日に回してくれる?

 アメリアが疲れちゃったみたいで風邪を引いてしまって……、え? 違う! そんなことはしていない!!」


(……王太子殿下のお声は聞こえないけれど、リディオ様の反応で何を話しているか分かるわ……)


 薄く目を開け、布団からそっと顔を出せば、顔を真っ赤にして狼狽えている彼を見て、私は小さく笑ってしまう。

 ……王太子殿下にいらぬ誤解させてしまって、リディオ様には申し訳ないけど。

 それでも、リディオ様の優しい気遣いが嬉しくて。

 瞼を閉じて、彼の声を聞きながら思う。


(……そういえば私、リディオ様と出会ってから悲しい夢を見ることがなくなったわ)


 両親の夢、叔父家族の夢。

 毎晩のように見ていた悲しく辛い夢は、今では全く見ることがなくなった。

 その代わりに見る夢の中には、いつだってリディオ様がいて。


(……我ながら、重症かも)


 意識を手放す間際、そんなことを考えて温かな心地で眠りにつくのだった。





 次に目を覚ましたのは、まだ日が昇っていない明け方前だった。


(あ……)


 そっと目を向ければ、リディオ様が椅子に座り、私のベッドに突っ伏して寝ていて。


(……丸二日、リディオ様に看病してもらっていたのね)


 そうしてじっと見つめてしまってからハッとする。


(そうだわ、もうあまり時間がない。起きてご飯を作らないと)


 そっと彼に自分が使っていたブランケットをかけ、そろりとベッドから立ち上がる。

 洋服は二日間そのまま着ていたため着替えようとしたけれど。


(……寝ているとはいえ、リディオ様がいらっしゃるのに着替えるのは良くないわよね)


 そう思い、エプロンだけ手に取ると、そっと部屋を後にして厨房へ向かう。

 朝食にパンとスープ、ハムエッグを作りお皿に盛り付ける。コップにはリディオ様が魔法で冷たく保存してくれているミルクを注ぐ。

 私は疲労からの風邪とはいえ病み上がりだから、リディオ様のお皿に多めに盛り付け、自分の分を減らし、二人分食堂に並べて時計を見やれば、リディオ様が仕事に行く日はその時間には起きたいと言っていた時間になっていた。


(リディオ様って意外に朝が弱いことも、この一週間で知ることが出来た内の一つなのよね。

 朝食を一緒に作る時は、頑張って朝早く起きてくれていたんだわ)


 クスッと笑ってから口にする。


「そろそろ起こしにいきましょうか」


 そうして自分の部屋に戻れば、リディオ様はやはりまだ夢の中にいるようで。

 幸せにそうに眠っている彼を見ていると、つい起こすのが可哀想だなと思ってしまうけれど、それでも今日からお城で働くのだからと気合いを入れて彼を起こす。


「リディオ様、起きて。もう朝よ」

「……んー?」


 予想よりも、リディオ様は動きはゆっくりだけど、身体を起こす。


(あら、寝起きが悪いというのはリディオ様的に、という意味かしら?)


 とそんなことを思ってしまいながら、声をかける。


「朝ごはんの支度はもう出来ているから、一緒にご飯を食べましょう? 今日からお仕事よね」


 そう口にした私に、リディオ様がじっと私を見つめて。


「……? リディオ様?」

「……幸せすぎる」

「!?」


 そう呟くや否や、私を寝起きとは思えないほど強い力で抱きしめた。


「ちょ、ちょっと、リディオ様!?」


 驚き身を捩るけれど、リディオ様がとんでもない言葉を耳元で甘やかに囁く。


「ダメ、もう逃がさない……」

「〜〜〜!?」


 そんな朝から心臓に悪すぎることをされた私は、寝起きが悪すぎる彼に向かって……。


「……良い加減に起きなさーーーいっ!!!!」


 と、寝起きの彼の耳元で叫んだのだった。




「朝に弱く寝起きが悪いことは聞いていたけれど、まさかこんなに悪いなんて」


 思わず口にした私に、リディオ様は真っ青な顔で謝罪した。


「ほ、本当にごめん!! ちょっと夢を見ていたというか」

「夢?」

「あっ、いや、ごめん、忘れてください……」


 不自然すぎるほどにしどろもどろになるリディオ様に、それ以上突っ込まずに食事を摂りながら口にする。


「確かに、今回の場合は私の風邪を看病してくれていたから余計にしっかりと眠れていなかったのよね。ごめんなさい、これからは体調管理に気を付けるわ」

「え!? た、確かに君が苦しい思いをせずに済むから体調管理はするに越したことはないと思うけど……、こちらこそ、病み上がりの君に朝食を作らせてしまったね」

「あなたのおかげで体調は良くなったから大丈夫」


 そう言った私に、リディオ様は強い口調で言う。


「ダメだよ! 君はいつも“大丈夫”と言うけど、まだ安静にしていないと。

 君はすぐに無理をするんだから」

「……私が諭されてしまった」


 思わず呟いた私に、リディオ様が慌てる。


「あ、ご、ごめん、偉そうに」

「謝ることじゃないわ。お言葉に甘えて、この後はゆっくり休むわね」


 そう言って微笑めば、リディオ様もまた笑みを返してくれる。

 そんな朝の始まりは些か心臓に悪いけれど、それでも幸せすぎるくらい幸せだと、二人の時間を朝食と共に噛み締めるのだった。

これにて第三章終了です!ブクマ登録、評価、いいね等応援してくださっている読者様、いつもありがとうございます。

次回より、第四章「契約妻の任務」が始まります。

そろそろ書き溜めが尽きかけておりますが、頑張りたいと思いますので引き続きよろしくお願いいたします…!

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