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武器選び

自分でも早く冒険者ギルドに行けよと思わないでもないが、今のスケジュールだと、冒険に出られるのは日曜日のみだ。

でもそこまでゲーム内でせこせこと働きたくないので、のんびりと図書館で過ごす時間も欲しい。


時間を捻出するには文明の利器の力を借りるのみだ。

スプリンクラーがあれば今までやっていた水魔法での水やりの時間を短縮出来る。

薬師ギルドの薬草園にはスプリンクラーが設置されていて、その便利さに憧れていたのだ。


早速魔導具屋に行きスプリンクラーを買ってくると、子供達がわあわあと水で遊び始めた。

スプリンクラーって楽しいよね。


これがあれば、自分がいなくなってもこの畑を維持出来るだろう。

神父様はものすごく忙しそうだけど、子供達なら家庭菜園をやり続けられるんじゃないか。

彼らは遊びながら栽培や収穫を楽しんでいる。

そのうち栽培のスキルを習得する子も出てくるかもしれない。


HPを回復するのがHPポーション、MPを回復するのがMPポーション、EPを回復するのが食事とEPポーション、病気を治すのが薬、という世界のようだが、神父様はどうやら心の病気担当らしい。

町のカウンセラーってとこかな。

聞き役だけでなく、魔法を使って治すこともするそう。

神父様が使っているのは神聖魔法という魔法だ。

プレイヤーも取得可能なのだが、なんと取得ポイントが100ポイントもするのだ。

魔法ばっかりは自然にスキルが生えてこないので、ポイントを使って取得するしかない。

でも100ポイントはないわー。


そんなわけでどんなに神父様やシスターがお疲れでも、後方支援に徹するしかないのだ。

けれども彼らはすごく感謝してくれて、いつもおかげで助かっていますと声をかけてくれる。


ちなみに、HPもMPもEPも、睡眠でも回復する。

眠りisパワー。

何事も睡眠大事。


とか言いながら、自分がログインしている時間はキャラクターは寝てない。

消耗するのもEPだけだし。夜は大切な内職タイムだ。

なんてったってEPだけは高いステータスなので、食事のみで回復は間に合っている。


このゲームのリアルさなら、昼寝も気持ち良さそうだけど、そもそも現実で寝る前の時間にプレイしているのだ。ゲーム内では動きたい。


また、スキルとしてはHP、MP、EPを自然回復させるスキルがそれぞれある。

何秒で1ポイント回復する、というシステムのやつだ。

でも今はエネルギー総量の収支がマイナスになっていないので、取得は後回しにしている。


買い物としてはもう一つ、憧れのブルーベリーの苗を3つ買ってきて植えた。

実が生るのが楽しみ。


栽培スキルはLv.3になり、薬草栽培スキルと生薬栽培スキルが生え、野菜栽培スキルもLv.2になった。

レベルが低い内は上がりやすいらしい。

薬草栽培と生薬栽培って被ってるんじゃないかと思ったけど、生薬はみかんの皮とかも入るから、別カテゴリーなのかな。


消費するEPも時間も減ってきて、品質も上がってきたので、薬師ギルドと交渉して、午前中の早い時間を孤児院の手伝いをし、遅い時間を薬草栽培と薬草の選定をして過ごすことになった。


これで午後は3時間まるまる自由時間になる。


そしてなんと、薬師ギルドに如何に自分のタイムスケジュールがギリギリだかを説明していたら、洗濯機の魔導具のお下がりを寄付してくれた!

これで朝の洗濯の時間も大幅に短縮される!


めちゃくちゃ感謝してお礼を言ったら、猫耳婆は横を向いて、単なる初期投資だよ、と宣った。

ツンデレかな?


シスターアンナは特に飛び上がって喜んでいた。

冬は冷たいし、重労働だったよね。

未だに雨が降ると大量の洗濯物を取り込まなくちゃいけないのがめんどくさいので、生活魔法も早急にレベルを上げないといけない。


一応生活魔法もLv.2になって、浄水を覚えた。

これで川の水も飲めるし、お風呂に定期的にかけて大人数での入浴も快適に出来る。

孤児院の子供達は男子6人、女子4人なので、男子のみ1回、女子のみ1回と回を分けて入っている。

それに加えてシスターも神父様も自分も入るので、この能力は無駄にはならないだろう。


ゲーム内で寝ないのに、お風呂はオフラインでもオンラインでも入っている。

お風呂っていいよね。

何回入ってもいいものです。

ゲーム内でも汗をかく仕組みになっているので、入浴は大事だ。

町に公衆浴場もある。


資料整理の方はようやく古い資料の修復および写本作成段階に入った。

羊皮紙や古い紙の修復は、現実でも難しい作業なので、迷わず1ポイント使って修復スキルを取得した。

スキルのアシストによる説明と細心の注意を払っての作業なので、時間はすごくかかる。

先に全部修復してから写本するか、一つずつ修復して写本するか、迷ったのだが、全部一気に修復するのは集中力が続かないので、一つずつ修復して写本する流れになった。


所々経年劣化で掠れて読めなくなる箇所があり、どうしようかと思ったが、読書スキルがいい仕事をしてくれて、スキルアシストで読めるのが助かった。

ひたすら写本していたら、速記と書写スキルが生えた。


これも大変有り難いスキルなのでとっても嬉しいのだが、どこを目指しているビルドなのかますますわからなくなってきた。


そんなわけでお金と時間に余裕が出来たので、ようやく冒険者ギルドに向かっています。


冒険者ギルドの扉を潜ると、ゲーム内で日曜日の朝にも関わらず、ギルドは結構人がいた。

総合受付には若い女性と、初日にお世話になったグレイヘアの男性がいたので、男性の方に並んでみる。


「おや、ダッサイさん、お久しぶりですね。」

「今日はお金が貯まったので、登録に来ました!」

「ようやく、ようやくですかー。

感慨深いものがありますね。

ではまず登録料500Gを。」


はい、と登録料を差し出す。

ふふふ、今の自分には500Gなど端金に似たようなものよ。


まあ、大体の初心者にとっても初期資金10000Gに対しての500Gなので端金みたいなものだとは思うが。


用紙に色々記入して、冒険者カードを作ってもらい、このカードに依頼や依頼達成件数・ギルドランクなどが入力されるのでどこの冒険者ギルドでも参照出来る仕組みなのだと説明を受けた。

ファンタジーな世界で便利なロジック、それは魔導具である。このカードシステムもまた、魔導具によって成り立っているのだ。

魔導具様々である。


ギルドランクはGから始まってAランクまで刻み、その更に上がSランクらしい。

農家ギルドも薬師ギルドもGランクから始まり、既にFランクになっている。


初心者には戦闘チュートリアルなどの講習が用意されているらしい。

まだどんなスタイルで行くのか決まっていなかったので、冒険の心得、という座学の講習を受けることにした。


この講習で説明されたのはセーフティーエリア外での注意事項だ。

気配察知、気配遮断、地図、分析のスキルも推奨されていた。

最も力説されたのは、撤退の意義だ。

いくらプレイヤーは生き返るといってもデスペナルティーはいやだし、NPCは本当に死んでしまう。

プレイヤー同士だけでなく、NPCともパーティーを組めるシステムなので、この辺は重要だろう。


近場に出没するモンスターの特徴も説明してくれた。

その他のモンスターについては冒険者ギルドの資料室に本があるらしい。

資料室があるとは!

それは是非行ってみねば。


推奨された気配察知、気配遮断、地図、分析のスキルも取ってみた。

気配察知と気配遮断はそれぞれ1ポイント、地図・分析はそれぞれ5ポイントだった。


今までUIの地図は行ったところを埋めるマッピング方式だったが、この地図スキルを取ったことによって行ったことがない場所でも地図を読めばそれがUIに反映されるようになる。


分析はモンスターの名前やレベルなどがわかるようになるらしい。

スキルレベルが上がればモンスターのスキルや弱点もわかるようになるとのこと。


どれも有用なスキルだ。序盤で取っておく価値がある。


その日は昼過ぎまで資料室で地図やモンスターの図鑑、動植物図鑑を読んで過ごした。


この世界にはモンスターもいれば、普通の動物もいる。

モンスターと動物の一番大きな違いは魔石があるかどうからしい。

モンスターは倒せば報酬が出るが、動物には出ない。

動物を狩るにはライセンスが必要であり、猟期もきっちりと定まっていると本に書いてあった。

ライセンスは猟師ギルドが管理しているそうだ。


資料室での本を粗方読み終わった後、ギルドの練習場を訪ねてみた。

ここで戦闘チュートリアルを受けたり、練習をしたり、教官の講習を受けたり出来るらしい。

ずらっと武器が並んでいて、これらは練習場内で自由に使っていいそうだ。

一つずつ武器を手にとって振ったり払ったりしてみる。

うーん、斧は使いづらいかな。

弓もカッコいいけど、いきなりソロで弓って難易度高いしなぁ。

やっぱり片手剣なんだろうか。

中衛ってことで槍も良さそう。


結局どれも決め手にかけたので、武器屋に行ってみることにした。

ここぞとばかりに商品を鑑定してみる。

どうやら鑑定スキルは一種類を何回も鑑定するよりも、多種類を鑑定した方がスキルレベルが上がりやすいみたいなのだ。

鑑定のレベル稼ぎをしつつ、武器を吟味してみるが、どれもなかなかしっくりこない。

店内から出られる裏庭に出てみると、鋤や鍬などの農具も置かれていた。

時間短縮には農具のバージョンアップもいいかもなー、などと検討していたら、農具コーナーに鉈と剣鉈が置かれていた。

剣鉈を見た瞬間にこれだー!と思った。

攻撃力は片手剣より低いが、耐久性は剣鉈の方が遥かに上だ。

手にもよく馴染む。

そして片手剣より安い。

剣鉈の中でも全長が45cm刃渡りが30cmほどの大きなものと小さな解体用のものを選び、鉈も一緒に選ぶ。

革製のそれぞれのシースと剣帯も購入した。


購入したばかりの剣鉈を装備して、また冒険者ギルドに戻り、戦闘チュートリアルを受ける。

剣鉈は剣術のうちに入るらしいので、対応するスキル、剣の心得を1ポイント使って取得する。

剣の心得は剣術の下位スキルらしい。


解体スキルも1ポイント使って取り、冒険者ギルドで解体の講習を受けた。

冒険者ギルドの解体所でアルバイトでもすりゃ、自然に習得出来るらしいが、そんなに解体したくないので、サクっとポイントで労力を買った。


最後に防具屋に寄って革製の膝当てと丈夫そうな靴を購入し、その日は孤児院に戻った。


次の日薬草園での作業を終わらせ、薬草を選定していると、猫耳婆がやってきて、

「お前さん、採取と登攀のスキルも取りな。

そうしたら指名で冒険者ギルドに依頼してやるから。」

と言ってきた。


採取はもともと取るつもりだったが、登攀とは?

何で、と顔に出ていたのだろう、猫耳婆は続けて、

「木の上や、崖の上の難しいところに生えている草花ほど報酬が高いんだよ。

そこらに生えてる薬草採ってきたって、アンタが薬草園で働くほど時間給はよくない。

どうせなら、なかなか他の冒険者がやらない依頼しな。」


一理ある。

でも登攀、木登りやロッククライミングねぇ。

リアルだったら絶対しないけど、ゲームだったらいいかな。

高所恐怖症じゃないけど、高いところあんまり好きじゃないんだよね。

ゲームだったら逆に絶景が見られて楽しいかもしれない。


気がついたらそれぞれ1ポイント使って採取と登攀を取っていた。


猫耳婆はニヤリと笑って、それじゃ、冒険者ギルドに依頼しとくからね、と言い残して去っていった。


野菜栽培→薬草栽培→薬草採取、と草まみれだが、とりあえず冒険の第一歩だ。

いのち大事に、なるべくモンスターに遭遇しないようにして薬草採取といこうか。


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