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港湾都市

歩きに歩いてようやく人里に下りてきた。


旅の間に称号が1つ増えた。闇妖精の友、という称号だ。

不思議な体験としか言いようがないのだが、夜間は夜目を使って歩いていたところ、うっすらと光る円状に生えたキノコを見つけた。

これがフェアリーリングか-、と感動し、なんとなしに菌輪の中に足を踏み入れた途端、夜目が効かない闇の中にいた。

パニックになりながら手探りしてみるが、何の感触もない。するとくすくす、あはは、と笑う声がして、やがて手を取られ、振り回されるようにクルクルと回転させられた。そのままずっとクルクル、クルクル、あっちの手に引っ張られ、こっちの手にエスコートされ、回り続けて、その時間が何時間経ったのかもわからない。

気がついたらフェアリーリングの外に横になっていて、空が白み始めていた。

よくよく考えてみると新月の夜のことだった。

起きたら何故か闇妖精の友の称号が増えていて、そしてダンスと浮遊のスキルを習得していた。

闇妖精の友になる意図は一切なかったが、SPを10ポイント貰えたので、まあいいかと深く考えないことにした。

追求すると怖そうだし。

ダンスも浮遊も自分では使いこなせないスキルだが、タダで覚えたので、まあいいのだ。

うん、そういうことにしておこう。


人里に下りてきたと言っても小さな村だが、何にせよ人がいるところが辿り着いたので、やっと人心地ついた。

冒険者ギルドもない村だったので、薬と食料を物々交換したり、柵を直したり収穫を手伝ったりなどのちょっとした手伝いをして野菜や果物を恵んでもらったり、納屋を貸してもらって寝たり、現金が足りていない村で食料を大人買いしながら過ごした。

サラディ王国についての情報がないか尋ねると、彼らは一様に知らないと答えたが、古老なら知っているかもしれないと案内してくれた。

古老は様々な伝承を覚えていた。

そして勿論、王国のことも。オーラルヒストリーってすごい。

王都はこの先の港湾都市、カアウにあったらしい。ハグルシド帝国は都市名ごと塗り替えたのだ。


古老含め村の人々にお礼を言って村を出発し、カアウに向かうことにした。もともとティルファに行く為に海を渡るつもりだったので、ちょうどいい。

今回は街道を歩いて港湾都市まで行くことにした。途中の町で投宿しては本を読み、ゆっくりと進む。

やがて遂に港湾都市カアウに辿り着いた。


カアウは活気溢れる交易都市で、歩くだけでも楽しい。市場や商店街を練り歩きつつ、寄り道しながら教会を目指す。

香辛料を売っている店では、沢山の種類のスパイスを買い込んだ。

単調なダンジョン生活で、手の込んだ料理やスパイスたっぷりの料理に飢えていたのだ。

忘れないうちにと焚き火台も買った。

ウィンドウショッピングなんてあまりにも久しぶりなので、無駄に買い物をしたくなって困る。

ようやく教会に着いた頃には、だいぶ日も傾いていた。


ユステフ神父に貰った紹介状を持って孤児院の扉を叩く。

中から出てきたのは快活そうな神父だった。

ユニ樹の成長を手助け出来る人材ということでトントン拍子に話は進み、孤児院で寝泊まりできることになった。

条件はユニ樹への魔力譲与と、資料整理だ。どこも古い台帳の修復・整理に四苦八苦しているらしい。

神父・シスター合わせて8人居るとのことだが、如何せん港町なので喧嘩や交易トラブル・家庭問題が多く、8人居ても足りないくらいなんだそうだ。

「しかも巡回があるんで、なかなか手が回らないんですよ。」

と話を聞いてくれたムワン神父が言う。

「すみません、巡回とは?どういったお仕事なんでしょうか?」

「いや、何、ここに来るまでに小さな村があったでしょう?ああいった教会がない近隣の村々を裁判官・行政官と一緒に巡って手助けするのもここの仕事なんです。」

「そうなんですか、大変ですね。」

「ははは、なーに、大したことはないですがね。

さあ、この部屋です。狭い部屋で申し訳ないですが…。」

「いや、十分です。ありがとうございます。」

「今日はお疲れでしょうから、ゆっくりしてください。明日色々なご案内をしますから。食事時になったら、お呼びします。」

そう言ってにっこり笑ってドアを閉めていってくれた。

疲れたつもりはなかったけど、確かに疲れたかもしれない。

港湾都市は情報の洪水だ。大きな声、話し声など、沢山の声がして、色々な音がして、看板も多く、お店も多く、いちいち確かめていたら情報酔いしそうだ。

バフッとベッドに横になると今までの旅を思い返してみる。

色々ありすぎて時間の感覚がよくわからないことになっているが、面白い旅だったのは確かだ。途中で単調さに死にかけてたけど。総合的には充実してたと言っていうと思う。

今度の滞在では、先ずは図書館でサラディ王国のことを調べ、何か遺跡があるかどうか確認するのを優先して、孤児院の充実はそれからにしよう。ヤズイの町よりは孤児院が困窮してなさそうだし。

考えを巡らしながら横になっていたら、いつの間にか眠ってしまっていたらしく、その日は食事の時間まで寝てしまった。


翌日、ムワン神父とは別の、タガ神父に教会と孤児院を案内してもらい、詳しい仕事内容の説明を受けた。

サラディ王国について尋ねると、神父様自身は知らないが、古い土地台帳が沢山あるので調べてはどうかという話だった。

台帳整理・修復は夜に作業することにして、図書館に足を向ける。

カアウの歴史書を漁り、速読スキルを使って貪り読んだが、サラディ王国についての記述はあれども、詳述のある書籍はなかった。やはりハグルシド帝国は王都での抵抗・反乱を警戒したのか、歴史も塗り替えていた。


冒険者ギルドに寄って、資料室で本を読むも、有益な情報はなかった。いや、近隣のモンスターについての情報は得られたのだが、サラディ王国については成果はなかった。

この辺でアンデッドというとサラディ王国絡みの可能性があるので、カウンターでアンデッド関連の依頼がないか尋ねてみる。

するとカウンターのお姉さんはびっくりした顔をし、あれよあれよという間にギルド長室に案内されていた。

「俺がギルドマスターのドゥーラだ。あんた、アンデッドの依頼について尋ねたらしいな?神聖魔法が使えるのか?」

ここのギルドマスターは看破をいきなり使わない良心派だった。偉い。

「はい、神聖魔法が使えます。今は孤児院に寝泊まりさせて貰っています。」

「そうかそうか、ってことはもしかして…。」

「ああ、魔力譲与ですか?使えますよ。それが孤児院に間借りさせて貰う条件なんです。」

「そりゃよかった。ところで、アンデッドの依頼なんて聞いてどうするつもりだったんだ?」

そこで簡単な今までの経緯を話し、サラディ王国について調べていることを明かすと、ギルドマスターは唸ってから

「これは内密の話なんだがな、王都の地下にスケルトンが守っているダンジョンがあるんだ。あんたが調べているその王国と関連があるかはわからないが、あまりにも昔からあるもんで、依頼も出さず、代々ギルドマスターが放置という名の管理をしてきたダンジョンなんだ。」

と地下ダンジョンの存在を話してくれた。

「っ、それは可能性が高いですね。」

「だろ?まあ、地下の下水道にあるんだがな。」

「…………。」

「なんせ古いもんだから、管理出来ていない区域もあって、地下水道にはモンスターもいてなぁ。」

「…………。」

「あんた、清掃も使えるか?」

「……はい…。」

そう、浄水を使いまくっていたおかげで、生活魔法のレベルが上がり、Lv.6の清掃も使えるようになってしまっていたのだ。

「じゃあ、決まりだな、下水道のモンスター駆除と掃除をやってくれたら、あんたにダンジョンの場所を教えよう。」

「…………。」

「悪い話じゃないぞ?あんたは王国について調べられる上に、依頼報酬まで貰えるんだ。な?悪くないだろ?」

「…わかりました。ところで匂いを感じなくなる魔導具とかないんですか?」

「んー、ないなあ。ま、頑張れよ。」

他人事だと思って…。


そういうわけで、地下水道の掃除とモンスター退治をやる羽目になってしまった。

ギルド長室からホールに戻ってくると、流れるように受付のお姉さんが依頼の説明をしてくれ、地下に入る為の出入り口も教えてくれた。


一旦孤児院に戻ってユニ樹に魔力譲与をし、夜中は台帳を読み込み、翌日地下水道に向かった。

出入り口には警備兵がいて、冒険者ギルドカードを見せると中に通してくれた。

案の定、暗くて、じめじめしていて、異臭がする。

思わず臭覚設定をゼロにしてしまった。

仕方なく自分の周りに浄水をかけ続けながら進む。明かりは光魔法のエリアライトにした。あんまり明るくして克明に汚れを見られるのも考えものだが、清掃しなきゃいけないしな。

地下のトンネル内に清掃をかけ続け、水に浸らない石壁をピカピカにしながら進むことになった。

こんなところで多重詠唱のスキル経験値を稼ぎたくはなかった。

出てくる虫型モンスターはすべて火魔法で焼き尽くし、鼠型モンスターも風魔法で瞬殺する。

MPの値が高いのをいいことに魔法でゴリ押ししまくった。

魔石も一応回収しつつ、殲滅していく。

奥へ奥へと進んでいくと、なんとエリアボスまでいた。鼠型の大きなヤツだ。

素早い動きと毒攻撃が厄介だったが風魔法と剣鉈で対処し、剣鉈でとどめを刺した。Lv.40~50のアンデッド2体を相手にした経験が活きた。全く慌てずに戦えたのは収穫だった。

討伐証明になる尻尾を切り落とし、魔石を取り出して、死骸は火魔法で焼いた。

なんの伝染病があるかわからないしな。

そのまま周囲を清掃し、今日のところは引き返すことにした。

出入り口付近で自分に清掃をかけたが、気分的にどんよりしながら階段を上っていると、警備兵が憐れみの目で近くの公衆浴場の情報を教えてくれた。

ありがたく情報を活用し、公衆浴場で汗を流した。


2日目、3日目も同じように地下水道を清掃して過ごし、渡された地図全体を清掃するという依頼を達成した。

公衆浴場に寄ってから冒険者ギルドに行き、依頼完了とエリアボス討伐を報告すると、報酬を渡された後またもやギルドマスターの部屋へ案内された。

「お仕事ご苦労さん。じゃあ、これがダンジョンへ行く地図だ。」

「ダンジョンコアは壊しても?」

「ああ、別に壊しても構わない。だが、くれぐれもカアウを陥没させるんじゃないぞ。」

「わかりました。」


遂にダンジョン討伐だ!サラディ王国関連だといいな。

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― 新着の感想 ―
[一言] レベル50のアンデッド2体を相手にした。とあるけど、姫様は40じゃなかったかな?
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