表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/34

最難関

さて、ダンジョン攻略が終わったことで、最も難しいであろう問題と直面することになった。

そう、湖の浄化と生態系の回復である。


でもその前にUIに届いた通知を確認しておこう。

あの戦いで、レベルは21に上がった。一気に3レベルも上がってしまって、如何にラスボスが規格外に強かったかがわかる。

スケルトンキラー・ゴーストキラーの称号は、骸骨殺し・幽霊殺しの称号に上書きされ、それぞれSPを10ポイントずつ貰えた。ソロ討伐特典はなんと50ポイントだった。

やっぱりユニークボスは美味しい。

そして、インデュランス、ダンジョンコア破壊者、ダンジョン踏破者という称号も手に入れてしまった。


インデュランス:1回の戦闘に於いて、ゲーム内時間で一定以上の時間戦闘した証。戦闘時のEP消費減少。

SP+1


ダンジョンコア破壊者:ダンジョンコアを破壊した証。ダンジョンボスに対してクリティカルが発生しやすくなる。ダンジョンコアを破壊する毎にクリティカル率上昇。

SP+10


ダンジョン踏破者:ダンジョンを踏破した証。ダンジョン内のモンスターに対してクリティカルが発生しやすくなる。ダンジョンを踏破する毎にクリティカル率上昇。

SP+10


普通のダンジョンを訪れた時に役に立ちそうな称号で嬉しい。


湖と森の浄化について、森はカースドジャイアントベアが寝床にしていた所や辿った所を浄化していくだけだったので、比較的簡単だった。後は森の再生力に期待したい。

カースドジャイアントベア以下のサイズの動物は呪いの水を飲んで死んでしまった、という花妖精の話だったので回復には時間がかかるだろうが、森の安定が戻ってくれば隣接している森や山から動物なども移り住んでくるかもしれない。

幸い、季節は冬に入りかけているので、春になったら新しい芽吹きが生まれるのではと願っている。

問題は湖である。ダンジョンを通って地下から水が湧いてくるので、呪いを浄化するのも一苦労だった。


神聖魔法の浄化と、生活魔法の浄水を湖に向かってかけまくる日々。

ダンジョン攻略の単調さといい勝負をしそうだが、屋外という点と、浄化が可視化されて自分で成果を確認出来るところが違う。たとえ雪が降りしきる日でも、外の開放感は比べ物にならない。

耐寒スキルがガンガン上がる中、浄化と浄水を繰り返した。

セーフティーエリアは屋外で寒いので、花妖精ともども洞窟に引っ越して冬越ししている。

光魔法のエリアライトで照らすと、なかなか居心地のいい洞窟に見えてくるから不思議だ。

花妖精のライムグリーンの翅がキラキラと光るのも幻想的だ。

コットと寝袋の組み合わせはこの寒さの中でも寝心地のいい寝床を提供してくれた。

今までゲーム内で寝たことはなかったが、冬の最中うたた寝するのは気持ちよかった。

シスターアンナがくれたセーターを着込み、なるべくぬくぬくして、刺繍や編み物、蛍石磨きなんかをして冬を過ごしている。

そうでもしないと冬の湖を浄化しまくる毎日を続けていけないからだ。

昼間は浄化・浄水、夜は手仕事をしながら花妖精の話を聞く。

花妖精の話は面白かった。メタなネタからこの森の話まで、次から次へと話してくれた。

ゲームに精通しているというのは嘘でなく、どの職業が1番人気だとかストライダーを選んだプレイヤーは何人いるとか、どのクランがランキングされているかなど、データも色々と教えてくれた。

花妖精と呼ぶのが当たり前過ぎるほど当たり前になっていた頃、花妖精が名前を明かしてくれた。

リリィとかラベンダーとか花の名前がついているのかなと思ったら、花妖精36512号だという。

名前がついている花妖精もいるらしいが、ついていない花妖精も沢山いるらしい。

ドン引きして聞いていたら、めちゃくちゃ怒られて、だったら名前をつけてみろ!と言われたので、マグノリアとつけてみた。

重複はあるようだったが、距離が離れている為混同の恐れなし、花妖精のあだ名扱いということで、そのままマグノリアで通ったらしい。

マグノリアと呼ぶと花妖精はご機嫌だった。

ヤズイでの最初の花妖精との出会いは最悪だったが、マグノリアは今や居なくては困るほどの存在だ。

この単調な日々に文字通り花を添えてくれている。


ダンジョン攻略で大分使ったポーション類を補充していたら、HP上級ポーションが作れるようになったので繰り返していると、錬金術・調合・錬成もスキルレベルが上がった。


長い長い日々を繰り返していると、いつの間にか春になっていた。

その頃には浄化も一通り済んでいて、あまり浄水しすぎると逆に生物が住めなくなると忠告され、雪解け水に後は任せることになった。


急に手持ち無沙汰になってしまったが、まだクエスト完了のウィンドウが出てこないので、この地を離れるわけにもいかない。

いくら栽培スキルを持っていても、水やりくらいしかやることないしなあ。

マグノリアによれば、こういう時に精霊召喚出来ると便利らしい。

「精霊召喚ってエルフしか使えないんじゃないの?」

「何言ってるんですか!エルフは最初から取得可能なスキルですが、プレイヤーなら皆さん使えるスキルなんですよ?」

「そうは言っても取得可能スキル一覧にないし…。」

そんなわけで光魔法のエリアライトと風魔法のウィンドで地道に水草を育てたり、苔類を遠くの森林から移植して水やりしたりしている。

しかし自然の力はすごい。雪が溶けるにつれ、虫が戻ってきたり、草花が生えてきたりしている。

キャンプ拠点をセーフティーエリアに戻し、気ままなキャンプ生活を満喫した。

残りの食料事情から1日1食に減らしたが、EPが多いせいで特に問題は生じなかった。

日々鮮やかさを増していく周囲に感嘆しながら、今までの単調な日々を塗り替えつつ春を楽しんだ。


ある夜、マグノリアが興奮しながら呼びに来たので、何かと思いながら湖に行ってみれば、湖全体が淡く光っていた。

いや違う、蛍のように微かな光の粒が大量に湖の上に発生していた!

「な、何だこれ…。」

「精霊、これこそが精霊ですよ!!下位の精霊がこの湖にも存在するようになったんですよ!」

「下位の、精霊?」

「そうです、下位の精霊はこのようにはっきりとした姿を持ちませんが、自然環境が豊かな所、清廉な所にいるものなんです!湖の環境が精霊が住めるまでに改善したってことですよ!!」

呆然としながらも幻想的な景色を眺めていると、自分の胸元もうっすらと光っていて驚いた。

慌てて確認してみると、ペンダントが光っていた。

それも、子供達がくれた精霊石のペンダントだ!

手に取ってしげしげと見つめていると湖から複数の光が漂ってきて、スゥッと石に吸い込まれていった。

驚いて鑑定すると、精霊が宿る石、充填率38%、LUK+3に変わっていた。

「マグノリア、精霊石って何?さっき精霊が吸い込まれていったんだけど。」

「精霊石は精霊魔法や精霊召喚を行う際の触媒となるものです!エルフだけは触媒なしでも精霊魔法・精霊召喚を使えますが、他の種族だとこの石が必要なんです。

精霊が宿っていて、充填率が多ければ多いほど、上位の精霊を召喚出来るようになるんですよ。」

「そもそも、精霊魔法や精霊召喚ってどんなものなんだ?」

「精霊魔法はパッシブスキルで、精霊魔法(火)なら火属性の攻撃の威力を増幅させ、火属性のダメージを軽減することが出来ます。

精霊召喚はアクティブスキルで、上位の精霊を召喚して各属性の攻撃を行うことが出来ます。

攻撃の威力・効力はINT依存、召喚出来る時間はMP依存で変わってきます。

両方とも火、水、土、風の属性の他に樹という樹木に関する属性があるのが特徴です。

それから各属性に対応したスキルを支援する役割があります。精霊召喚の場合は召喚している時間のみですけどね。

例えばサラマンダーを召喚したら、鍛冶のサポートをしてくれますし、ドライアドを召喚すると、樹木の手入れを任せることが出来ます。」

「ふうん、便利そうだな。まあ使えないけど。」

「精霊魔法・精霊召喚を取得可能にする条件は何通りかあるんですが、ここで教えちゃうとつまらないでしょう?

是非冒険して、探してみてください。」

ゲームに精通している花妖精にしては気の利いたことを言う。楽しみが増えた。


花妖精と言えば、春になったので、ヤズイで旅立ちの時に貰った花妖精の種を湖の周りに蒔いてみた。

どうやら1種類の植物ではなく、沢山の種類の種がミックスされているらしい。

それから秋蒔きが失敗した時の為に念のため取り分けておいたダンジョン産の種も、洞窟周りに蒔いた。

種から育てて水やりしたりすると、栽培や成長促進のスキル効果がはっきりとわかった。


それからは、小鳥やフクロウが利用出来るよう巣箱を作ったり、蜂の巣箱を設置したりしてより環境を整えることに専心した。

巣箱については今年利用されなくてもいい、今後役に立ってくれるといいなと思っている。


余裕があったので、運営の主催する季節イベントにも参加してみた。

今回は春の花を咲かせるイベントだ。本物の花でもいいし、絵画、彫刻、造花、アクセサリーの花でも何でもいいらしい。生産職や芸術職向けのイベントになっている。

色んな種類の花を咲かせることによって、ポイントが貰え、ポイントに応じた報酬を貰える仕組みだ。

ちょうど花妖精の種やサラディ王国に関連するっぽい謎の種を育てていたので、渡りに船だ。

締め切りは存在するが、成長促進もあるので間に合うだろう。


ある日ログインすると何やら通知が沢山来ていた。

その内の1つは、ユニーククエストの達成のお知らせだった。

評価は優++で、達成報酬が貰えていた。達成報酬は何と装備品だった!このゲームで初めて装備品を貰えたので、テンションがあがる。蛇が腕に巻きつくようなデザインの腕輪だ。LUKとINTが+100されるアクセサリーで、所持している装備品の中で1番補正効果の高いアイテムになった。ついでにSPも100貰えた。


それからイベント評価のお知らせだ。

ということは、花が咲いたんだ!

一旦通知の確認は後にして、湖へ走って行ってみると、辺り一面花が咲き乱れていた。

青やら水色やら紫やら黄色やら白やらピンクやら色とりどりの花が咲いていて、桃源郷のようだった。

思わずスクショしてしまったほど、美しかった。

ついでに洞窟の方も見てみると、洞窟の周囲に真っ赤な花が咲き誇っていて、圧巻だった。

こっちもスクショしていると、花妖精が大興奮して話しかけてきた。

「やっぱりこの種、サラディ王国の国花だったんですよ!勘は的中しましたね!それにしても美しい花ですね〜。初めて見ました。一輪でもゴージャスで、圧倒されるほどです。」

確かに一輪でも十分美しかった。


ひとしきり騒いで落ち着いたので通知を確かめてみると、イベントのポイントはかなり高くて、イベントランキングの100位以内にランクインしていた!

やっぱりサラディ王国の国花というユニークな花を育てたのが高評価だったらしい。

報酬としてペット用の動物が何種類も用意されていたので、ポイントは全部動物に変えた。ルリビタキ、オオルリ、トラツグミ、キツツキ、キジ、エナガ、ゴジュウカラ、オコジョ、モモンガ、ヤマネ、タヌキ、野ネズミと交換して、一旦ペットにしてから解除して野に放った。

一瞬外来種になるのか?と思ったけど、ゲーム内だから大丈夫だろう。

テイムが出来ないので、自分だけのペットに憧れるものはあるが、冒険する中で可哀想な思いをさせそうなので諦めた。

今回もアンケートに答えるとSPが1ポイント付与された。


そして加護が増えていて、湖神の祝福と、森神の加護を貰えていた。


湖神の祝福:INT・LUK各5%増加。対応する各スキル支援。

SP+50


森神の加護:INT・LUK各2.5%増加。対応する各スキル支援。

SP+25


それぞれの加護の支援するスキルが多すぎる為か、支援スキル詳細は別途タップで表示されるようになっていた。

なんか今回はINTとLUK祭りだが、自然というのはそういうものなのかもしれない。

生き物も賢くないと生き残れないし、運もあるだろう。


称号も3つ増えていた。


生態系の守護者(ガーディアン):生態系を保全・回復した証。生態系を保全・回復しやすくなる。

SP+10


花妖精の友:花妖精との友好の証。花妖精の好感度が上がりやすくなる。LUK成長率増加。友好な花妖精が増える毎に成長率上昇。ときどき花の蜜や種を貰える。

SP+10


サラディ王国の友:サラディ王国民との友好の証。サラディ王国関連の遺跡・遺物を発見しやすくなる。INT成長率増加。サラディ王国の歴史を広める毎に成長率上昇。

SP+25


サラディ王国の友はなかなかプレッシャーのある称号だ。


ユニーククエストを達成してしまったので、ここに残る理由がなくなってしまった。

出発の準備をしていると、マグノリアはやはり寂しそうに見えた。

そこで、時空魔法を取ることにした。時空魔法はLv.1で覚えるのが通話で、以降Lv.10になるまで新しい魔法を覚えないという鬼畜仕様だが、Lv.10で覚える転移は非常に魅力的だ。特にファストトラベルのポータルを利用出来ないストライダーにとっては夢の魔法である。

取得コストは50SPとかなり重いが、それだけの価値はある。

マグノリアに、転移が使えるようになったら必ず会いに来ることを約束すると、彼女は小瓶を要求してきた。

小さな小さな瓶を錬成して渡すと、満足げに頷いて、出発はあと3日待って欲しいと言ってきた。

そのくらいは待ってもいいので了承すると、どこかへ飛んでいってしまった。


時空魔法の通話について詳細説明を読んでみると、プレイヤー同士で遠距離で会話出来るらしい。この場合片方が時空魔法を持っていればいいそうだ。

通話時間・通話可能距離はMPとMND、INTを参照するとのことで、それじゃあフレンドチャットやクランチャットの下位互換という気がするが、時空魔法を持っているNPCとも会話出来るそうで、そこが違う点だ。

更に転移はMP依存だが、時空魔法を持っていないプレイヤーやNPCと一緒に転移出来るようにもなる。

ファストトラベルの場合は行ったことがない場所には行けないが、時空魔法を持っていないプレイヤーやNPCが転移を一緒に行う場合、行ったことがない所へも行けるらしい。但し転移を唱えるプレイヤーは、行ったことがない場所には行けない。

マグノリアが冬にしてくれた話によると、生産職のプレイヤーはそうしてキャリーしてもらうことも多いようだ。

残念ながら妖精は場所が固定されているので、この魔法には対応していない。


出発の日、マグノリアから小瓶一杯の花妖精の蜜のプレゼントを貰った。

この3日間で必死に集めたらしい。

彼女は次に会う時までに今以上に美しい森と湖にすると言って、ニコニコしながら送り出してくれた。


これが誰も知らない土地の、ユニーククエストの顛末。

初めての妖精の友達が出来た、冒険の一幕だ。

時空魔法の通話がMPのみ参照になっていたのをMP 、MND 、INT 参照に訂正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] レベル18でレベル50とレベル40を倒しても、レベル3しか上がらんのか… 称号とかで手に入るステータスの底上げとかSPが本体みたいなイベントだな。まあ、そっちが主体みたいな主人公だしちょう…
[良い点] マグノリアちゃんかわいい! 無事に花が咲いてよかった~ サラディ王国の品々がどうやって博物館に収まるのかも楽しみです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ