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旅路

さて、ヤズイの町を出発して50日、ひたすら歩いているわけだが、目的地もなく歩いているわけではない。

かなり遠方で、海を渡ったりしなくてはならないが、芸術の都、と呼ばれる都市があるらしいので、ティルファというその都市に行こうと思っている。花の都ティルファ、芸術都市ティルファと謳われるくらいだから、美しい場所なんだろうな。


そこに向かおうとしているわけだが、何故か道なき道を山登りをしている。

街道沿いに進むとかなり迂回するので、直線的に進んで行けばいいと単純に考えたからなのだが、もう一つの理由は人が通らなそうなマップにわざわざボスモンスターを配置しないだろうと考えたからである。

それにしてはマップの作り込みはすごくて、採取可能アイテムや植生なんかも変化している。

美しいカルデラ湖もあったし、燃えるような紅葉も見ることが出来た。

朝食と夕食は少量ずつ食べるようにしているが、夜中も歩き通しなので、EP上昇とEP自然回復がぐんぐん伸びていって、それぞれ(小)から(中)に進化した。コストは合計32SP。

上昇系や回復系は、進化する毎に必要コストも跳ね上がっていく。

(中)から(大)は256SPもかかることになる。計画的なポイント使用が必要だ。


気配察知も気配遮断も、魔力感知も魔力遮断もバリバリ使いながら歩いているが、確かにモンスターは少ない。

というか、ほとんど出会っていない。

50日も歩いていて、飽きないのかと言われそうだが、飽きないから困る。

自分がコツコツ歩くのに向いているのもあると思うが、このゲームがすごいのだ。

休憩をする時も、ソロキャンプみたいで楽しい。

MMOでソロキャンとは極まっているなあとは思うが、楽しいものは楽しいのだ。


子供達に貰った精霊石は鑑定しても、精霊が宿る石、充填率7%、LUK+1と説明が出るだけでさっぱりわからなかったが、メダイと一緒にチェーンにつけて装備している。


ある日、森の中で珍しくセーフティーエリアを見つけ、ログアウトしてみた。

再びログインすると、目の前に妖精がいる。

「ほあ?」

「あっ、起きた!起きた-!

お願いです、助けてください。お願いですー。」

と叫んでいる。どうやら花妖精のようだ。

「ハッ、申し遅れました。私は花妖精です。貴方のお力を見込んでお願いしたき儀がございまして…。」

「急に敬語喋らなくてもいいよ。」

「あ、そうですか、ありがとうございますー。

それでですね!お願いしたいことがあるんですが…。」

すると目の前にウィンドウが開く。


『ユニーククエスト!

花妖精の頼みを聞きますか?』


まだ内容も聞いてないのに早すぎないか??

いくら待ち望んだユニーククエストとは言え、疑心暗鬼にもなる。

しかも、よく確認すると、はい、いいえ、のいいえの部分がグレーアウトしていて、実質強制クエストになっている!


えええぇぇぇぇぇえええええ!?

とパニックになりかけるが、し、仕方ない、ままよ!と清水の舞台から飛び降りる気持ちで、はい、を押す。


「ほ、ほんとに助けてくださるんですね、ありがとうございます、ありがとうございます。」

「うん、わかったから、わかったから。」


どうやら話を聞くと、この付近に呪われたダンジョンがあり、その呪われたダンジョンから出た瘴気で湖が汚染され、その水を飲んだエリアボスもまた呪われて正気を失い、森を破壊しているとのこと。

花妖精の頼みとは

1.エリアボスを倒す

2.ダンジョンを浄化してダンジョンコアを壊す

3.湖や森を浄化して生態系を元に戻す

の3段階もあり、気安く請け負うものじゃなかった。


とりあえずエリアボスを観察してみることにする。

「…あのさあ、あの大きさは無理だと思うよ。」

カースドジャイアントベアと分析のおかげで表示された、デカい熊が視界を占めている。

あの腕の一振りでお陀仏になりそう…。

回避するにも対象が大き過ぎて、走って回避して逃げ回るにも間に合うかどうか。

「あれはカースドジャイアントベアですが、神聖魔法が効く相手ですから、大丈夫です。」

いや、どう考えても大丈夫じゃないです。

こちらは遠隔魔法で攻撃するとして、寄られたらどうするんだ。

大盾でも初撃を防げる気がしないぞ。


「大丈夫です!このクエスト中は死んでもデスペナルティはないですから!」

えええー。

だからこんな所にセーフティーエリアがあるんだな。怪しいとは思ったんだよ。

あとなんでそんなメタな発言してるんですか。

すると表情から読み取ったようで、

「妖精はお手伝い要員なのでゲームシステムにも精通しているのです!」

と、えっへんと胸を張る。


「先ずは戦って慣れないと。何事もチャレンジあるのみです!」

仕方なく、大盾を装備し、神聖魔法を唱えてみる。Lv.1で詠唱出来るのは、ホーリーレイだ。

2発打ち込んだところで距離を詰められてしまい、あっという間にセーフティーエリアに死に戻っていた。

「うーん、やっぱり神聖魔法の威力が弱いですね。まずは3発で仕留められるようになりましょう。

あとはこの際ダッシュのスキルも取りましょう。SP1ポイントですし!

神聖魔法の特訓は、ダンジョンがあるので大丈夫です!いくらでも敵が湧いてきて、コアを壊さない限り練習相手は無尽蔵ですよ。」


抗議空しく、ダンジョンに突入させられ、ダッシュのスキルも取らされた。

初めてのダンジョンに心が躍らなかったと言えば嘘になるが、真っ暗闇を進むのはテンションが下がる。

しかも常に瘴気で体力が削られていく。狂化耐性のスキル経験値がどんどん溜まっていくのがわかる。

このダンジョンは主にスケルトンとゴーストが出るらしい。

初ダンジョンはこんな筈ではなかったんだが…。


夜目を使いながらも、気配と魔力を遮断する。

花妖精の方針では、まずゴーストなりスケルトンなりに先手を取って不意打ちする。

相手が反撃してきた場合、スケルトンならば円盾で受け、なるべくパリィする。

ゴーストならば、高い生命力を活かしてHPで攻撃を受け、神聖魔法で反撃する。

「目標は浄化の魔法を使えるようになるまで、です。頑張って神聖魔法を伸ばしましょう。」

……浄化って神聖魔法のレベルが5にならないと使えないやつじゃないか。

それまで延々スケルトンとゴースト相手に戦えって言うのか!?


そんなわけで、現在の装備は円盾のみだ。

第1層はどうやらスケルトンしか出ないようだ。

マッピングしつつ、スケルトン相手に神聖魔法で先制攻撃し、剣の反撃を躱す。もう一撃を盾で受け止める。その間にホーリーレイを放ち、相手がくたばるまでこれを繰り返す。

地道な作業だ。

倒すこと自体は問題ないが、戦う毎に改善点も出てくる。

しかし、段々やってる内に回避のコツもわかってきた。パリィはまだ難しい。


第2層もスケルトンのみかと油断していたら、罠はあるし、時々キャプテンスケルトンとかいうちょっと強いスケルトンも出てきたり、複数のスケルトンと出くわしたりするので、結局今は第1層で特訓している。


STR上昇・AGI上昇・HP上昇・HP自然回復・MP上昇・MP自然回復・詠唱短縮・回避・身体操作・体幹・盾の心得・狂化耐性あたりのスキルが主に伸びていき、その成長のすべてを花妖精に把握されている。

もっと回避を意識しましょう!などとダンジョンを出てくる度に言われ、心安らぐ暇もない。


疲れたりHPが無くなってくるとセーフティーエリアで休憩、またダンジョンに特攻するという日々になってしまった。

癒しの時間は食事時に飲むお茶の時間のみだ。

やめてやると言えればよいが、クエストを失敗するのも業腹だし、スケルトンでの特訓は、成果も出ているからやめるにやめられない。


円盾でのパリィが安定してくると、今度は剣鉈、槍、斧でパリィの練習だ。

各武器でパリィ出来る頃になると、神聖魔法がLv.2になっていた。


今度は剣鉈と円盾を装備して、第2層にチャレンジする。

罠があるので慎重に進まないといけない。

やはり複数のスケルトンを相手にすると手間取るが、キャプテンスケルトン相手に苦戦することもなくなってきた頃、宝箱を見つけた。

すぐさま解錠のスキルを1ポイントで取得し、おそるおそる宝箱を開けると、中からは金貨が出てきた。

だが、不思議なことにUIを見ても所持金が増えたとはなっていないのだ。

これは、もしかしたら、現在の兌換出来る金貨ではないということか?

古い時代の金貨なのだろうか。

コインを見ると、サラディ王国通貨と書いてある。

なんだかワクワクしてきた。


発見スキルは罠にも宝箱にも働くので、ゲームスタート当初は特によくわかっていなかったが、今やなくてはならないスキルだ。

他にも何か手がかりが眠っているんだろうか。


複数のスケルトンを相手に立ち回れるようになってくると、スキルが軒並み進化した。

STR上昇(微)→(小)、AGI上昇(微)→(小)、MND上昇(微)→(小)、HP上昇(微)→(小)、HP自然回復(微)→(小)がそれぞれ4ポイント、

MP上昇(小)→(中)とMP自然回復(小)→(中)がそれぞれ16ポイント、

詠唱短縮(微)→(小)が25ポイントで、

合計77ポイントのコストを払って進化させた。


第3層はゴーストが出てきた!

ゴーストと、キャプテンスケルトンが複数で出てくるので、被弾する回数も増えた。

もう何回ホーリーレイを唱えたかわからない。

ホーリーレイは面白いように効いてくれるのだが、ひたすら同じ作業なのが苦痛で、ユニーククエストであるという事実と、サラディ王国、とあったコインの謎だけが支えだった。

花妖精の美しさを愛でるなんて意識はなかった。

ヤツはスパルタトレーナーだ。


第3層にはなんとボス部屋があり、当初はよく倒されていたが、ボス部屋の主であるカースドゴーストジェネラルと互角に戦えるようになる頃、ようやく神聖魔法がLv.3に上がった。


それからはマラソンである。この為にダッシュを取らせたのかとようやく悟った。

ボス部屋で戦った後、また引き返して第3層のモンスターを殲滅し、第2層・第1層も同様に駆けながら倒していき、ダンジョンの出口に辿り着いたら1回セーフティーエリアで休憩をし、またもやダッシュでダンジョンを駆け抜け、ボス部屋に行くのである。

無限リポップがこんなにも悪夢になるとは思わなかった。


ここまででレベルが14に上がっていた。

花妖精によると、このダンジョンは第7層まであるらしい。第7層は実質ラスボスのみなので、ひたすらスケルトンとゴーストを倒しまくる日々は、第6層攻略まで続くわけだ。


そんな時だった、発見スキルが仕事をしたのは。

詠唱短縮のポイントを修正しました。

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