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家妖精

ログインして先ず、木製の小さなコップを作った。

ヤスリもかけて滑らかにする。

家妖精(ブラウニー)といえばミルクだろうということで、台所の片隅にミルクを入れたコップをそっとおいておく。

どうだろう、この孤児院にいるんだろうか。


それからは自室に戻って、サンダル作りに邁進する。

子供はすぐ大きくなるから、いずれ捨てられる運命だろうけど、思い出になってくれるといいなと願いながら作っていく。

最初は靴と違って戸惑ったけど、2足くらい作るとだんだん慣れてきた。

デザインはグルカサンダルにしてる。

編み込むのがちょっと大変だけど、安定性はあると思う。

付与術で防汚機能とLUK+1をつけるつもりだ。


朝、台所に向かうと、コップは空だった!


その日も花妖精にあれこれ指示を受けながら庭の手入れをこなし、ルーティンを行う。

花妖精への受け答えは「ふうん」「そうだねー」「わかった」の3種類で大体回している。

庭仕事を真面目にやってる限り、花妖精はご機嫌だ。


庭も、町民達に好評のようだ。

神父様の話によると、日曜のミサの前後に庭で過ごす人が増えたんだそうだ。

時々平日に和んでいる人も見かけるらしい。


花妖精が居ついたということは、自分が去ってもこの庭は大丈夫だろう。

そう考えると、悪くない出会いとも言える。

第一印象が強烈過ぎたが。


家妖精(ブラウニー)は家事を夜中にこっそりと手伝ってくれる妖精だ。

現実の言い伝えでは、彼らはとってもシャイで人前には姿を現さないらしい。

恐らくゲーム内でもそうなんじゃないかな。


そんなわけで夜にそっとミルクを用意して、さり気なくその場を離れることがルーティンに加わった。

あまり騒ぎ立てなさそうなヒューにだけ、家妖精(ブラウニー)の話をしておいた。

自分が旅立った後のことは彼に任せると言うと、表情はあまり変わらなかったが、確かに嬉しそうにしていた。


ところで、ミルクはどこから入手したのかと言うと、酪農家が毎日ミルクを孤児院に無償で届けてくれている。

彼も孤児院出身だそう。

彼は結婚して牧場を継いだけど、孤児院の子供達は皆15歳になると独立する。

最初は丁稚奉公したり、どこかの工房の弟子になったりして、やがて開業したりする。

時々冒険者になる子供もいるけれど、あまり多くないそうだ。

衣食住も必要だから、住み込み出来る丁稚や弟子の方が人気がある。


町民はどうかと言うと、大体家業を継ぐのが多いらしい。

兄弟が多いと、冒険者になったり、他所の都市へ出ていく場合も多い。

高等教育を受けるのは裕福な商人の子供が通例だそうだ。

大学まで出る子は珍しい。

奨学金制度もあるが、ここヤズイには高校はない。

都市にまで行かないとないのだ。

寮生活出来るようにはなっているけれど、お金が掛かることには違いない。

学用品や本、衣服、交際費など細かい出費が重なると結構な額になるだろう。

まして大学に入るとなるとそれなりのお金が要る。


高校の受験をするにも旅費と宿代が必要だ。

高校は冬から始まるので、夏の終わりに試験がある。

都市から遠い、雪が降る地域の子供達は、秋頃移動して高校生活に備えるのが普通らしい。

寮も秋から新入生を受け入れるようになっている。


ユステフ神父とマハンの進学の話をした。

マハンの進学・生活費用を出すつもりであることを話すと、神父様はかなり驚いていたが、その後はひたすら感謝された。

夏の終わりに月光草を採れたら、大学進学費用も出す予定であることも話した。

先ずはマハンに高校進学の話をすることで合意した。

高校生活の費用・旅費は既に貯まっている。

これは確実性があるので、今話しても大丈夫だ。


マハンに話をしてみる。緊張の瞬間だ。

高校進学をしてみないか、と話すと、マハンは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして

「で、でも…そんなお金持ってないです!」

と叫ぶ。

「お金の心配はしなくていいんだよ。

こちらのダッサイさんが出してくださるとおっしゃっているんだ。

マハン、君の気持ち次第だよ。

どうしたい?」

とユステフ神父が問いかける。

「そ、れは……行きたい、です。行かせてください。」

「じゃあ、決まりだな。先ずは受験、頑張って。」

そう声を掛けると、マハンは感極まったようにありがとうございますと言ってくれた。

ユステフ神父とマハンは受験申し込みについて話し合っているが、なんとなく恥ずかしかったので、その場を逃げ出し、自室に戻った。


翌日から、よりいっそう採取を頑張った。

あんな風に頭を下げられて感謝されると身の置き場に困ってしまうが、高校進学で終わりではないのだ。なんとか大学まで出させてあげたい。


薬師ギルドからは新たな採取依頼が出ていて、風鈴草という、夏に風鈴のような花をつける植物の葉を採取してきて欲しいとのことだ。しかし、風鈴草は川のそばや谷底に生えている草だ。

崖でも谷でもどこへでもとは言ったが、文字通り谷底にしなくてもいいのに。


マハンは放課後、図書館でよく勉強しているようだ。

試験会場までは行商のキャラバンに着いていくそうだ。まあ、冒険者ギルドで募集する護衛もいるし、大丈夫だろう。


後は自分がひたすら採取をしまくって、お金を稼ぐだけだ。

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