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ある日

ゲームの中だが、春真っ盛りになり、庭に花が溢れる季節になった。

花でも眺めながらゆっくりしたいところだが、マハン学資貯金計画があるので、今のうちに採取を頑張らないといけない。

それに、欲しい物も増えた。

魔導具屋で売っているアイテムバッグだ。この際収納量2倍とかじゃなくてもいい。

なんでアイテムバッグかというと、バッグの中に沢山の種類のアイテムを入れてからインベントリに収納すると、枠が1枠で済むし、何よりアイテムバッグの中の物はデスペナルティでの没収の対象にならないのだ。

もうビックイーグル戦の時のようなあんな緊張感は味わいたくない。

単に戦って負けるならそれでもいいが、大事なアイテムをロストしてしまうのは避けたい。

子供達にもらったキラキラなドングリや似顔絵がなくなってしまったら、運営に鬼問い合わせするのも辞さない所存だが、自己管理としてはここはお金で安心を買うべきなのだろう。


猫耳婆には高額報酬の指名依頼をバンバン出せと言ってある。

崖だろうが、谷だろうが、どこへでも行って採ってきてやる。


と、燃えているのだが、採取ばっかりするわけにもいかない。

午前中のユニ樹への魔力譲与も、畑仕事も、果樹園・庭の手入れも、どれも大事なものなので、タイムロスになるとわかっていてもこのルーティンを崩すことは出来ない。

限られた時間の中で採取の効率を上げていると、登攀と採取のスキルレベルがそれぞれ上がった。採取名人の称号も入手し、更に効率がよくなった


採取名人:沢山採取した証。採取量および採取したアイテムの質が上がる。

SP+1


日曜日を返上して働くと碌なことがないので、日曜日は相変わらず休みを取っている。

最近はコボルト村で読書していることが多い。コボルト視点の歴史書なんて最高に面白いし、民話集や子供用の絵物語も興味深い。

コボルトはこれらを薄い石板に書き込み、それを束ねて本にしているのだ。

ただ、コボルト村の厄介なところは、遊びに行くと毎回手合わせに巻き込まれることだ。

槍や剣の練習になってちょうどいいのはそうなのだが、毎度脳筋の相手をするのは辛い…。


ゴブリンの集落にも時々行っては薬草ポイントを教えてもらっている。

彼らは薬草をマズイと言って興味を示さないのだが、群生している場所は覚えているのである。


山越え禁止の約束は既にそれぞれと交わしていて、彼らの方も移動を考えていない様子だったので、冒険者ギルドには問題なしと報告してある。


山向こうで採れる草花は、薬師ギルドに大歓迎されている。

なんでも野性味があってより薬効が強いらしい。

最近はこの町で消費する以上の素材量なので、生薬などを近隣の町や村へ売り出している。

より広範な種類の薬の需要があるようで、猫耳婆からは新しいレシピをどんどん教えられ、じゃんじゃんと作らされ、バシバシと調薬スキルを鍛えられている。


成長促進スキルは気づかない内に効果を発揮しているようで、薬草の栽培量は変わらないのに、成長が早いから次から次へと採れるね、とギルド職員に言われて気づいた。

これは便利なスキルで、成長を促進するものと促進すべきでないものをよく心得ているようで、果樹園の下草なんかには作用しないので助かっている。

気づいたらLv.2に上がっていて、本当に地味に働くスキルだ。


薬師ギルドには秋になったら仕事が出来なくなるので、特に薬草園での交代人員を早く見つけるよう伝えておいた。


ある日、庭で水やりをしていると(庭にスプリンクラーは設置していない)、目の前をキラキラとしたものが横切っていった。

ゲームで飛蚊症でもないし、何だ!?と思って目を凝らすと、翅のついた、手くらいの大きさの、ちっこいのが浮遊していた。

妖精、でいいんだろうか?


思わず

「…妖精さん?」

と口に出してしまうと、妖精らしきちっこいのはこっちにクルッと振り向いて、

「あら、気づいたのね!」

と喋った。


「そう、花妖精よ!この庭も、アタシが来たからには安心ね!大船に乗った気分で全てアタシにまっかせなさ〜い!!」


キャラが濃くないか?

最近ゴブリンとかコボルトとかで疲れたから、そんなにファンタジー成分は求めていなかったのだが…。


「なによう、反応が薄いわねー。」

「いや、妖精を見るのが初めてで、ちょっと驚いてしまって。」

「まあ、そうなの!?アタシが初めて出会った妖精ってワケね!アタシが初めてなんて、アンタ最高にツイてるわよ?」

「うん、まあ、そうかな。ところで、花妖精って何するの?」

「ふっふふふーん。植物の成長を見守るのがアタシの仕事なの!花が元気になるようにパワーを与えて手助けするのが花妖精なのよ!」

「へえ、そうなんだ。」

「花妖精が住み着いている場所は、より花が美しくなるの!アンタはなかなか見込みがあるわ。より美しい花畑を目指して一緒に頑張るのよ!」

「お、おう。」


その後も花の妖精は、ここを間引けだとか肥料が足りないだとか色々と指示を出して五月蠅かったが、黙って従った。

相手をするのも面倒になったともいう。

ゲームでワンダーを感じたいし、ファンタジーゲームと銘打っているのを購入したくせに、あまりにファンタジーだとどうしたらいいかわからなくなるな。


途中で花妖精に仕事に行かないといけないと別れを告げ、薬師ギルドに逃げ込み、採取に出かけて現実逃避した。

孤児院に戻ってきた頃には、花妖精の姿は見かけなかった。


その日ログアウトしてネットで調べると、確かに妖精の記事が結構あった。

花妖精はガーデナーにはポピュラーな存在らしい。

色々なスクリーンショットが掲載されている。

花妖精の色味も様々で、ピンクやパステルブルー、ライトグリーンなど翅も髪もワンピースも様々だ。

性格は個体差があるらしい。

大人しくてシャイな花妖精もいるとのこと。

基本的に花が美しい、気に入った土地に住み着いて、サポートをしてくれるお手伝い要員だそうだ。


うちの花妖精は、パープルからインディゴへの淡いグラデーションの色味なのだが、如何せんパワフルな言動のせいで外観を愛でる暇などなかった。

基本放置でいいらしいので、庭のアドバイスだけありがたく受け取っておこう。


妖精はNPCには見えないそうだが、だとしたら、客観的に見ると虚空に話しかけてる変人ってことになるのか!?

気をつけないといけない。


妖精は他にも種類があるらしいが、なんとなく他の妖精のネタバレを見たくなくてタブを消していく。

しかし何の操作を誤ったのか、次のページを開いてしまい、家妖精(ブラウニー)という名前が見えてしまった。

慌ててタブを消したが、しっかりと記憶に残っている。

なかったことには出来ない。

ログインしたら、家妖精(ブラウニー)を探してみよう。


ロッククライマーの称号は既出だったので撤回しました。

採取名人のSPを追加しました。

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