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狩猟

「油断するなよ!仕留める時が一番危ないんだからな!!」


オラスの忠告が飛ぶ。

くくり罠にかかった鹿を仕留めるのが自分の役割だ。

左手で大盾を構えて鹿を押さえつけ、暴れる鹿の喉元に狙いを定めグッと力を込めて槍を押し込み、切り上げる。

ヤズイの店売りで一番高いものを購入しただけあって、切れ味は抜群だ。

仮死状態になり硬直した鹿を尻目に槍を手放し剣鉈を抜く。

この瞬間が一番緊張する。

すぐさま剣鉈で頸動脈を切り、血抜きする。

槍の時点で血は抜け始めているが、更にスピードアップする為だ。

ダバダバと流れる血を見ながらオラスが祝詞を唱える。

祝詞を奏上し終わると腹をかっ捌いて腸を取り除く。

鹿の足を縛り、ロープで木にくくりつけ、逆さまにして最後まで血抜きをする。

あとはインベントリに収納し、腸や血で汚れた地面に土魔法のソイルで出した土を被せて終わり。


オラスが祝詞を唱えている間は自分が、それ以外はオラスが見張りに立ち、血の匂いに誘われてモンスターがやって来ないか確認している。

作業が済んだらすぐさまその場を離れ、次の罠に向かう。


必ず罠にかかっているわけではでないのでハズレの時もあるが、森歩きの達人の称号のおかげか、森の中での成功率はなかなかいい。

一応猟師ギルドの割当頭数は守っているが、鹿の頭数制限は緩い。


鹿の血はブラッドソーセージや錬金術の材料にもなるので、以前は丁寧に保管しておいたが(なんせインベントリだと鮮度を気にしなくていい)、猟師ギルドからそんなに卸さなくていいと言われたので今は森の微生物に献上している。

なんかいい利用法他にないものだろうか。


リアルだとワイヤーが切れたりバネが反射したりと、くくり罠の設置時や解除時の事故もあると聞くが、ゲームでは、ササッと罠猟のスキルで設置したり解除したり出来て便利だ。

罠設置・罠解除というスキルも習得した。これは罠猟だけでなくダンジョンなんかでも役に立ちそうなスキルだ。

勿論このゲームにはダンジョンも存在する。

ヤズイの近くには残念ながらないが。

どこかにシークレットダンジョンとかないかな。


そんな益体もないことを考えながら帰路を歩き、シーズンが終わりつつある樹上茸を採取する。

白鷺草のシーズンは既に終わってしまった。

登攀スキルはLv.4に育ち、ロッククライマーの称号も得た。

ロッククライマーの称号は、岩壁を沢山登った証だそうで、ロッククライミング中の安全度と移動スピードが上がる効果がある。スキルポイントは1ポイント貰えた。


夜はひたすら錬金術のレベル上げの為のポーション大量生産と、薬の作り溜めと弓矢の作製、スノーシューズ作り、防寒具の作製、衣服の補修をしているので、資料整理の方は中断気味だ。

遂に錬金術の為に錬金台も購入した。この方が成功率が上がるのだ。

新しいスキルとしては、矢作製・ポーション作製・瓶作製・靴作製・型紙作製のスキルを習得している。

特にポーション作成は錬金術の成功率が上がるので、生えて嬉しいスキルだ。

錬金術はMPを使うので、MP上昇やMP自然回復のスキルのレベル上げにも役立っている。

夜の内職には何をするにもDEXが関連するので、ステータス上昇系の中ではDEX上昇(微)が1番伸びていて、Lv.7にまで育った。

弓や罠の設置、解体、皮鞣しでも効果を発揮するのでほぼ1日中お世話になっている。


皮鞣しの手伝いの方も順調にいっている。

皮鞣しをするようになってから解体の意識も変わり、皮剥ぎナイフを購入した。

今までだったらよく切れないナイフを買う意義を見いだせなかったが、皮剥ぎナイフのおかげで更に皮の質がよくなり、買取値も上がった。

素材加工のスキルはLv.3にまでなった。


フォレストウルフの毛皮は脱灰しないでフサフサ感を活かそうかと思ったが、誤射が起きるかもしれないからやめろとオラスから忠告を受け、毛も剥ぎ取ることにした。

この革で革コートっぽいのを作りたい。

革コートとか厨二っぽいけど、雪山での狩猟を目標にしているので誤解しないで欲しい。

まあ革コートの上に剣帯巻いて剣鉈差して、弓担いで槍持ってる姿っていうのはどう考えてもアレだけど…。

武器防具換装という装備武具防具を一瞬で切り替えるスキルがあるのだが、5ポイントもするので、今はまだこの全部盛りスタイルで狩猟をしている。

大盾は罠猟で仕留める時と、巻狩りの時だけ装備する。


巻狩りは既に1度経験した。大迫力だった。

ストーンウォールの魔法を掛けた後は正直何も出来ないで終わった。

横から挟み込む動きはしたが、もし熊が進路を変えて向かってきたら為す術もなくやられていただろう。

猟師のおっちゃん達は、皆最初はそんなもんだと言って慰めてくれたけど、情けない気持ちでいっぱいだ。

猪猟もしたけど、熊よりサイズ感は小さくとも、普通に怖かった。


罠に猪が掛かっていたこともあった。

怒り狂って暴れている猪を大盾で押さえるだけで大変で、体幹とSTR上昇のスキルを取っておいてよかったと心底思った。

とどめを刺してからの作業は基本鹿と一緒だが、精神的には鹿の倍疲れる気もする。

次の熊猟の予定も決まっているのでリベンジしたい。


熊と言えば、噂の秋の熊肉は最高だった。

ちょっと濃いめのタレに漬け込んで焼くと獣臭が緩和されて、噛みごたえたっぷりのジューシーな肉になるのでおすすめだ。脂も美味しかった。

熊は棄てるところがなく、すべて売れるので、猟師達のやる気が高いのもよくわかる。

薬師ギルドからは熊の内臓を使った薬のレシピを教えてもらい(頼んでないが勝手に教えてくれた)、熊猟の後は調薬三昧をさせられた。多分婆が又サボりたかったんだと思う。


日曜日は午前から動けるので鴨猟にも行ける。鳥が寄り付く池はそれぞれ割当が決まっていて、自分たちの担当は町からかなり遠くの池だ。年功序列でおじいさん達の方が町に近い池を割り振られている。


時折カラスやガン、キジを狩ることもある。

カラスは箱罠を仕掛けておくと複数羽まとめて獲れ、猟師ギルドに持っていくと必ずいくつかは孤児院に持っていっていいと言われるので、大事なたんぱく質源だ。

鴨や雁は、仕留めると羽だけは持ち帰らせてもらっている。子供達に暖かい羽毛布団をプレゼントする為だ。

猟師の人たちもどうして自分が羽を集めているのかわかってくれているようで、今年は羽は売らず、皆孤児院に寄付してくれるようになった。

今までもヤズイの町民は教会や孤児院に寄付してきたのだが、自分が住み込みで働き出したことによって孤児院のニーズが可視化出来たらしく、寄付の方針が変わったところもあると聞く。その1例が猟師ギルドなのだ。

羽は重要な資金源だが、量を集めないと売れず、猟師達にとっては現金を寄付するよりも負担は少ないらしい。

自分がいなくなっても肉や羽を直接寄付していってくれたら嬉しい。


雉の羽は矢羽になるので、これも大事だ。

鴨でも雉でも雁でも烏でも、羽を毟る時はとにかく無心だ。無の心で手だけひたすら動かすのだ。そうすると気づくと丸ハゲの鳥がそこにいる。

どうやらこの作業もDEX上昇のスキル経験値になるらしいので、モチベーション維持になっている。

矢の軸は矢竹を使って作製し、鏃は武器屋から購入してきている。

鏃が勿体ないので、なるべく回収して再利用するようにしているが、弓の心得のスキルレベルが低い内は回収も大変だった。

今はほぼ命中なので、矢の回収率も高い。回収には発見のスキルが役立っている。


あれから剣の心得は伸びておらず、弓と槍の心得の方がレベルが上だ。

剣の方は薮漕ぎしたり解体すると一応スキル経験値になっているようだが、微々たるものだ。

弓と槍使いのストライダーというのも悪くない。

迷走しているとはいえ、ストライダーのロマンビルド道からは外れていないのでヨシとする。


教会と孤児院の建物の修復は完了し、これで安心して冬を迎えることが出来る。

今は食卓や椅子の傾きを直したりしている。

本格的な冬になる前に、木のおもちゃや人形とかも作りたい。

ヤズイは結構降雪が多く、雪に降り込められる日も多いと聞くので、冬の間子供達が退屈しないよう、知育玩具を用意しておきたいのだ。

自分の手慰み用として農家ギルドから羊毛も買った。羊毛フェルト人形もいいと思う。スノーシューズの内側のボア用の素材としても使うつもりだ。

毛糸を買い足して編みぐるみもいいかもしれない。


このゲーム世界は個々のお誕生日というのはなく、冬に一斉に年を取る数え年システムなので、計画的に子供達全員分のプレゼントを作っていかなくてはならない。

薬の作り溜めの段階が終わったら夜はプレゼント作製の時間に充てなくては。

結構真剣にネットを漁っては、プレゼントのヒントになるものがないかと調べている。


ホーヤーと一緒に秋のはじめ頃に種を植えた春菊や大根、白菜なども順調なので、冬の食卓も心配しなくて良さそうだ。

反対に、薬師ギルドの薬草園での仕事は、鉢上げの作業がかなり大変だった。

貴重な越冬に難のある薬草は、鉢に移して室内で栽培しないといけないのだ。

新しい作業だったので、スキル経験値としては美味しかったが、労力がかかった。

屋内になったおかげで鉢植えにはまた水魔法で水をやらないといけなくなったが、魔力操作も上手くなったのか、同時に複数の鉢に水を溢さず水やりを出来るようになった。

屋外の薬草は休眠期に入っており、剪定して来春に備えている。


森でも薬草は採れなくなったが、インベントリには何かの時の為に保管している。

インベントリの中にはポーションの在庫もあるし、風邪薬も孤児院で風邪が大流行しても大丈夫な量を確保している。

今は薬師ギルドの依頼で薬を作り溜めているが、本当はインベントリに薬師ギルドの薬草を保管すれば解決してしまう。

でも自分がいなくなってもここの人達の生活は続くわけで、既に出来上がっているシステムを崩すつもりはない。

収納量だけでなく鮮度も保つアイテムバッグとなると相当高額らしい。

薬師ギルドとしても手が届かないのだろう。

秋の内に丸薬を作り溜めておくのがヤズイの人達の冬支度なのだ。


備えあれば憂いなしとばかりに今まで冬支度をしてきたが、それでも絶対何か抜けがある気がする。

リアルでは暖かい地方に住んでいるので、本格的な冬支度なんてやったことがない。

大丈夫なんだろうか。


秋の熊猟は出来てあと2、3回だろう。

それまでになんとしても動けるようになっておかないといけない。

晩秋の夕日にリベンジを誓う。


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