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青空  作者: ひとみ
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初めて投稿してみます。

ドキドキ。。

今日は朝からよく晴れている。ギラギラ照りつける日差しのもとで、蝉も元気に鳴いている。


私の職場である第二騎士団の本部は緑が豊かな公園に隣接していて、面した大通りには街路樹が立ち並んでいるから、この季節は蝉時雨でとても賑やかだ。


だから毎日、私は走る。

…後ろにも目がほしい。

何時なんどきぶち当たってくるか知れない蝉どもが、怖くて怖くてしかたがない。

嫌いではないのだが、なぜか、とにかく怖い。

背中にでもくっつかれたら、しゃがみこんで取って取ってとわめいて、泣き出すに違いない。

しかし私はもういい大人である。そんな風に取り乱すわけにはいかないので、毎日この危険地帯を走り抜けているのだ。


しかし、しかし、とうとう今日、恐れていたことが現実となった。

バチバチバチッ……と、身の毛もよだつ羽音が右側から迫り、耳元で消えた。

立ち止まって思い違いであることを願いながら側頭部に右手をやると、硬い手応えに、恐ろしい羽音が響く。

咄嗟に掴んだ手のひらに、暴れる羽とうごめく足の感触。


「…ぎゃ……!!!」

あまりの衝撃に悲鳴の途中で息が詰まり、蝉を握っているこの右手ごとかなぐり捨てたい思いで腕を振って、駆け出した足が縺れて倒れこんだ。

必死で立ち上がり数メートル走って違和感を覚えて立ち止まる。履いていたパンプスが片方、失くなっていた。

わめき出さずにはすんだが、相当取り乱してしまったことは間違いない。

荒い息をなんとか押さえつつ振り返ると、そんな私をびっくり顔で見ている人たちがいて、その中から、私のものと思われる黒い靴を手にしたすらりと姿のいい同僚が駆け寄ってきた。


「大丈夫?」

金髪に優しいグレーの瞳で穏やかに話すリアムの声を聞いた途端に、あっさりと恐慌状態はおさまった。再び聞こえてきた蝉時雨の中、なんとも言えない脱力感で声も出せずにつっ立っている私の前で、彼は片膝をつくと、裸足の右足を持ち上げて拾った靴を履かせてくれる。


「血が出てる。」

立ち上がると私の左腕を取りポケットからハンカチを出した。どうやら打って擦りむいた肘を手当てしてくれるようだったが、私はそれどころではない。気持ちが落ち着くとともに、この危険な場所でぐずぐずしていることにいても立ってもいられなくなってきた。

「ありがと、急いでるから、あとでね!」と彼の大きな手から腕を抜いて走り出し、守衛さんへの挨拶もそこそこに門に駆け込んだ時にはもう、汗だくだった。



「すげぇ痛そう。」

リアムが眉を寄せて、シャツの袖を捲って窓拭きをしている私の左肘を見つめている。赤く剥けて紫色に腫れあがっている様は、本当にものすごく痛そうだ。

王都の道は凹凸のある石畳なので、転んだりするとなかなかのダメージなのである。

「毎朝走ってるけどさ、危ないからやめた方がいいよ。いつか転ぶと思ってた。」

「鍛練だから。でこぼこの石畳でも安定して走るための。」

…ちょっと無理がある。走っているのは蝉の時期だけ、大通りに出てから本部の門に飛び込むまでの、ほんの200メートル足らずだ。

「でも本当に蝉、怖いんだな。靴が脱げるほど慌てて逃げ出すなんて。」

「別に。蝉なんか。」

「毎朝見てればわかるよ。びくびくしてるだろ。今日なんてとうとう泣いちゃってたし。」

「泣いてない。」

おしゃべりをしながらふたりで朝の支度をする。当番は1ヶ月ごとに交代で、窓を開けて換気、お湯を沸かす、気になるところを軽く掃除。


「ん??毎朝?見てるの?」

「うん、いつもニニが走り出すまで、ちょっと後ろを歩いてる。」


「…リアムの家ってどこらへん?」

「『ひなぎく』の近所。」

ひなぎくは中央通りから1本入った角にある喫茶店で、朝も昼も夜も、美味しいご飯を食べられる。騎士団本部から近いので、内勤の人たちがよくお昼に行っている人気のお店だ。

ということは、その辺りから、私のちょっと後ろを歩いているのだろうか。

全然知らなかった。声をかけてくれたらいいのに。そしたら毎朝一緒に出勤できるのに。

リアムは金髪の毛先をふよふよ揺らしながら、みんなの机をせっせと拭いている。私は柔らかそうな彼の髪の毛をいつかさわってみたいなと思いながら、ふたり分のお茶を淹れて、残りの机を拭いて掃除を終わらせる。


「明日から声かけてよ。一緒に行こうよ。」

お茶を飲みながら頷く笑顔を見て気がついた。

「あ、いや、やっぱり無理。私、この時期は走らずにいられないもの。」

「じゃあ夏が終わったらだな。」


嬉しい…。

もうお気づきの方もいらっしゃるだろうが、私はリアムが大好きなのだ。結婚したいと思っている。本人には言っていないけれど。

彼は26歳、私は23歳。ちょうどいい。

彼は183cm、私は161cm、ちょうどいい。

彼はお料理上手、私は食いしん坊、ちょうどいい、よね?


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