湯築城—戦後処理と新たな局面
宇都宮家の降伏により、河野家は伊予統一の大きな一歩を踏み出した。
しかし、晴通の目はすでに次なる標的——西園寺家へと向けられていた。
湯築城では戦後処理のための評定が開かれ、家臣団が集められていた。
河野道宣
家老
重見通継・村上通康
奉行職
大野直昌・垣生盛国・平岡房実・町田経堯・南通忠
家臣団
忽那通乗・忽那通著・二神重直・和田道勝
武田信充・正岡経政・今岡伯耆守・土居通利
宇都宮豊綱・野村助之進・石山九郎介
「皆、今回の戦で疲れたであろう。しかし、伊予統一への道はまだ半ば。次に備えねばならぬ。」
晴通は落ち着いた声で家臣団を見渡した。
「宇都宮家は正式に河野家の配下となった。豊綱には名目上の大洲城主として残ってもらうが、実権は大野直昌が握る。宇都宮の家臣団にも、こちらの意向に従う者にはそれなりの地位を与える。」
宇都宮豊綱
「はっ!」
重見通継が進み出る。
「宇都宮の家臣の中には不満を持つ者も多いでしょう。そのまま、お使いになるのは危険ではないでしょうか?」
「その通りだ。大洲城の周辺には、友直の部隊を駐屯させる。また、戒能家の兵を一部大洲城に配置し、城内の動きを監視させることにする。よいな?」
宇都宮豊綱
「勿論でございます」
次に、西園寺家への対応について話し合われた。
「問題は西園寺をどうするかだ。」
晴通は問いかけた。
戒能道運が即座に答える。
「今回の戦で西園寺家も河野家の新型兵器の威力を知りました。彼らが再び戦を挑んでくる可能性は低いでしょう。しかし、このまま放置すれば、次はどこかの大名に援軍を求める可能性があります。」
「大友か大内か…。」
重見が呟いた。
村上が慎重に言葉を選びながら進言した。
「ここは戦の準備を整えながら、従属の交渉をするのが最善かと思います。」
晴通は考え込み、決断した。
「よし、西園寺には使者を送り、宇都宮と同様に従属を求める。しかし、拒否する可能性が高い。準備は怠るな。秋の収穫が終われば、即座に出陣できるよう手はずを整えておけ。あと平岡房実は清月と連携して西園寺の国衆に働きかけてこちらに寝返らせるのだ」
平岡房実
「はっ!了解しました」
こうして、伊予統一に向けた次なる動きが決まった。
大洲城
大洲城では、大野直昌が新たな領主としての責務を果たし始めていた。
「まずは領民の安定だ。戦で荒れた田畑を復興し、領内の治安を確保せねばならん。」
大野直勝(大野利直が7男)
「兄上それにしても大筒の威力は凄いものですな城の壁がこうもボロボロになるとわ」
大野直昌
「そうだな、流石は殿が量産に力を入れている理由が分かる」
2人はボロボロになった大洲城を見て思った戦が変わったのだと。この大筒と今の河野家の勢いなら四国統一も夢ではないと言う思いを抱いた。
大野直昌
「だが民あっての我等だまずは復興が先決と言う事を忘れるでないぞ」
大野直勝
「はい!もちろんであります」
直昌は、足軽たちを動員し、田畑の復旧作業を急がせた。
また、大野直勝は商人たちを集め、戦で流通が滞った物資の取引を再開させた。
大野直昌
「宇都宮領だった頃よりも良い暮らしができると思わせることが肝要だ。ちゃんとした田植えなどの農法を教えるのだ。そうすれば今より豊かになることは間違いない。」
直昌の指導の下、領内は急速に安定へと向かっていった。
しかし、一部の宇都宮家臣たちはまだ従う気がなかった。
その筆頭が安藤甚三郎だった
安藤甚三郎
「河野に屈するくらいなら…。」
陰で不満を募らせる者もおり、直昌はこれらの動きを警戒していた。
大野直昌
「油断はできん。戒能家と連携し、動きを監視しておけ」
大野直勝
「はい!兄上」
宇都宮家の旧臣の中には、豊綱への忠誠を貫く者もいた。彼らをどう扱うかが、今後の課題となる。
八幡浜
一方、八幡浜では盛国が新たな任務に取り掛かっていた。
「ここは交易の拠点となる港。今後、河野家の財源となる重要な場所だ。」
彼はまず港の拡張を決めた。波止浜と並ぶ港として発展させるためには、荷揚げ場の整備や交易路の確立が必要だった。
「まずは商人たちと話をせねばならんな。」
地元の商人を集め、今後の港の発展について意見を聞いた。
「戦の影響で交易が滞っている。我々としては、一刻も早く商売を再開したい。」
「だが、安全が確保されなければ、安心して荷を運ぶことができぬ。」
盛国はうなずいた。
「交易の安定のためには、まず治安の確保が必要だな。」
彼は領内の警備を強化し、賊の取り締まりを徹底した。
さらに、船の修理や新造にも着手し、商業の発展を後押しした。
「八幡浜を四国有数の港にする。そのために、今できることを一つずつやっていこう。」
西園寺家
河野家の使者が西園寺家へと向かい、従属を求めた。
「河野に従え、か…。」
当主・西園寺 実充は苦悩した。
「先の戦では、河野の新型兵器の威力を見せつけられた。兵の損耗も少なくはない。だが、ただ降るのも口惜しい。」
家臣の土居清晴が進言する。
「ここは時間を稼ぐのが得策かと。河野がさらなる戦を起こす前に、他の大名との交渉を進めるべきでしょう。」
法華津範延も同意する。
「河野は確かに強いが、大友や大内が介入すれば話は変わる。どちらかに援軍を求めるのが得策かもしれません。」
魚成 親能
「土居殿と法華津殿は何をそんなに恐れますか。いかに河野家が新兵器を導入して強大となったといえど対抗できないほどではないでしょう」
渡辺 教忠
「魚成殿の言う通り。我らが全力で当たれば勝てぬ戦ではないでしょう」
法華津範延
「お二人は見ていないから戦っていないからそう思うのです。まともにやりあったらこちらの損害は計り知れないでしょう」
観修寺基栓
「ならば無理に戦をすることもないのではないか?向こうも本気で臣従するとは思っていないだろうから落としどころを探ったのでいいのではにか?」
西園寺は悩んだ末、決断した。
「とにかく、使者にはこう伝えよ。『即答はできぬ。話し合いの余地はある』と。」
これは、時間稼ぎに過ぎなかった。
河野晴通の決断
湯築城に戻った使者から報告を受けた晴通は、微笑を浮かべた。
「西園寺は時間を稼ぐつもりか。しかし、それは命取りになるぞ。」
彼は家臣団を集め、宣言した。
「西園寺が即答しないということは、いずれ誰かに援軍を求めるつもりだ。ならば、我々が動くしかない。秋の収穫が終わり次第、西園寺討伐に向かう」
友直が前に出る。
「準備は整っております。いつでも出陣できます。」
平岡房実
「内応も順調です今城能定・津島通顕は寝返る手筈が出来ております」
重見通継も意気込む。
「足軽も一両具足も士気は高い。今こそ、南予統一の時です。」
晴通は深くうなずく。
「河野が南予を統一すれば、四国の未来が変わる。我らがその先駆けとなるのだ!」
こうして、次なる戦いが幕を開けようとしていた。




