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バッドデイ  作者: ふゆむしなつくさ
フォー・ラヴ・オン・クリスマス・デイ
8/16

(2)

 もしもこれがドラマチックな物語の類だったら、この土壇場どたんばの機会に降って湧いたチャンスが巡ってきて、僕はそれを見事に掴み取り、モノにすることが出来たのかもしれないね。


 でもここはろくでもない現実で、ただ待つことしかしていない奴の足元にそんな都合よく何かが転がってくるなんて、そもそもあるはずがないんだ。


 なんて言ってしまえば察しもつくというものだろうけど、結局この日も、僕のもとになにかしらの変化が訪れることは、ついぞなかった。


 いつもと何も変わらず、これまで通り、何の成果も得られなかった、ってやつだね。


 むしろ、普段より更に無為むいな時間を過ごしたと言ってもいいかもしれないよ。なんせ今日はいつにもまして、目に見えて人のりが少なかったからね。コヨリどころか、そもそも学生の姿がほとんど見られなかったんだ。


 もう遅えよ、そう揶揄やゆされてる気がしたな。


 なんというか、多分さ、クリスマスってのは、その人の過ごしてきた結果が表れる日なんだよ。わかりやすい形でね。何も持ってなければ、何もしてこなければ、それ相応の帰結きけつにしかならないんだな。


 最初はなっからわかってたさ。それでもすがることしか出来なかっただけで。



 辺りが暗くなり始めた頃に大学の敷地を後にして、下宿先のアパートへと帰る途中、適当に目についた居酒屋に、そのまま潜り込んだ。


 別に僕は、これといって酒が好きってわけじゃない。

 酔っ払う感覚もどちらかといえば苦手だし、飲んで美味いと感じたことも一度もない。


 でも、こんなことを言ったら純粋な酒好きの人に怒られるかもしれないけど、アルコールってのは、見たくないモノから一時的に目を逸らすには、うってつけの代物なんだ。逃げるための手近てぢかな手段としてこれ以上に優れているものを、僕は他に知らない。


 …もしかしたら、酒におぼれるってのは、こういうことを言うのかもしれないな。


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