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生命の反逆者  作者: 彩川 彩菓
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第2話 「戦」の「開幕」

『中央地区』は、その名前の通り巨大な大陸の中央に位置している。かつて王国が栄え、人間と魔人がともに笑って暮らしていた広大な街はその影と形を残しながら戦争が最も激しい場所になっている。

 東には人間の拠点があり、そして中央付近には仮拠点テントがあるように。向こう側には魔人族のテントがあるはずだ。

 つまり、中央地区を勝ち取り、そして向こう側に攻め込む。それが自分たちの仕事となるわけだ。

「ねぇ、一応聞いとくんだけどあんたはどういう戦い方すんのよ」

 一人思案にくれていたアリアだが机の向こう側に座っていたリンに話しかけられて顔を上げた。

 テントの一つ。それなりの広さはあるが椅子と机の並べられただけの質素な空間。その一組に二人は向かい合って座っていた。

 一緒に来たほかの人も基本二人一組で座っていて会話は、まぁまばらといったところか。

「お前に言う必要があるか?」

 だからといって自分がわざわざ話す必要はないと思った。あまり話はしたくなかったし、そもそも論アリアは疑い深い性質だった。今日であったばかりの少女を信頼する方が無理なのだ。

「聞いときたいでしょ。これから二人で戦いに行くのよ? だったら戦い方くらいは聞いときたいわ。本人の口からしっかりね」

 きれいな瞳が真っ直ぐにこちらを見てくる。宝石のような瞳に映る自分を見てアリアはため息をついた。

 確かに、その理屈には一理ある。

「ボクのメイン武器はコイツだ」

 腰に備えた剣を取り外して、さやに入れたまま机に置いた。ゴト。と重たい音を立てるそれがアリアの武器であった。

「これは……両手で使う剣? それとも片手?」

 鞘を挟んでもわかる程巨大で分厚い剣。装飾なんて一切ない。ただ破壊と殺りくに特化した剣は片手で扱うにはあまりに大きく、かと言って両手には小さいだろう。

「片手用だ。これで、切ったり殴ったりだな。銃は使うつもりはないし弓も使わねぇ。基本的には近距離で以外戦うつもりはないから聞いたからにはその辺は理解しとけよ」

「やっぱり噂通りの戦い方ね」

「……知ってたんだろうが」

「確認よ。それを聞いて安心したわ。いやだけど私の戦い方はアンタに合ってる。ちゃんと協力してあげるわ」

「……そういうお前はどんなスタンスなんだ? シンセイの二つ名はよく聞くけど実際のスタンスは聞いたことがないぞ」

「ソレは……」

「全員! 直ちに外に集合せよ! 敵襲だ!」

 先程まで確かにそこにあった静寂を男の絶叫にも近い声が叩き割った。ともに来た人たちはそれぞれ武器を担いで、あるいは手ぶらで外に出る。

「行くわよ」

「おい。待てよ。お前の戦い方をまだ聞いてないぞ」

「……見た方が早いわよ」

 そういうと、リンはニヤリと笑った。しかし、アリアは思うのであった。なんだこいつ……と。


「えぇ……。いや。もはや細かい指示は無しだ。君たちが遊撃部隊としてやることは一つ。敵のせん滅だ。が、こちらも流石に好き勝手にやれ。と命じるだけというわけにはいかない。そこで、だ。おい、例のものを頼むよ」

 グロウツが手をたたくと素早くやってきた黒衣の男が何かを差し出していった。六人全員に一つ一つ手渡されたソレは最後にアリアのもとに来た。

「なんだこれ? ちっこくって、突起がついてて……そんで……なんか、変」

 手のひらよりさらに小さいうえに突起に至っては小指の先程しかない。こんなものが何だと言うのか。

「あぁ、突起部分を耳に、こう、押し込んでくれ」

 言われた通りにその部分を耳に押し込む。意外と不快感はなくそれどころかぴったりとする感覚が案外悪くない。

「これは、こうやって使う」

 グロウツは右手に小箱のようなものを握るとそこに向かって話し始めた。

「あ。お父様の声が耳元で聞こえるわ」

「その通り。これがあれば遠く離れた場所にいてもこちらから連絡を取ることができる」

「なるほどな。こりゃあいい」

 相変わらず開発組は面白いことを考える。アリアは耳に刺さったそれを軽くたたいた。

「えぇ、以上。まぁ各自思うところはあるだろうが、心してかかれ。期待しているぞ」

 期待というには随分と高圧的だ。しかし、そんなことはどうでもいいのだ。アリアにとっては、より多くの魔人を殺せることこそが正義。

 だからといって命令に歯向かって事を荒立てるつもりは毛頭ない。だから、まっすぐに背筋を伸ばした。

「心してかかれ。百年の歴史に終止符を打つのだ!」

「「「「「「「了解!」」」」」」

 六つの声がきれいに重なった。


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