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第九十三話 その頃エリーザは ~三匹のシーサーペント戦

「いやー残念です!


 私が、泳ぎが不得意なばっかりに、シルヴィアさまのお側にいる事ができず……


 人魚国行き、良い旅になることを祈るだけしかない私を、お許しください!」



 ――リリアーナを加え、エリーザが抜けたティエルナ一行が人魚国へと旅立ったのち。


 エリーザが、浜辺で海を眺めながら、なにやら懺悔のような事をしていた。

 


「(シルヴィアがいたら、「よく言うよ」とか突っ込むんだろうねえ)


 アタシも、人魚国には興味大アリだったんだけどねえ……


 もしアタシの身に何かあった場合、えらいことになるからね」


 エウフェーミアがエリーザの後ろに歩み寄る。


 その場合、あっちの小屋で今も研究中の、クローンたちに影響が出る。

 クローンたちはエウフェーミアの秘術で、動いているわけだ。


 エウフェーミアが万が一にでも、クラーケンの洗脳にでもかかってしまえば……

 クローンが暴走し、シルヴィアが危惧した通りの反乱が起きるかもしれない。


 そう考え、エウフェーミアは好奇心を抑えてここに残ったのだった。



「せっかく、あと少しでシルヴァンの体を元に戻せるところまで来たんだ。


 ここにきて、台無しになっても困るからね……」


「え、何の話ですか?」


 けげんな表情でエリーザがエウフェーミアを振り返った。


「いや、気にしないどくれ。とりあえず、アタシもニーナさんも荒事には不向きだ。


 ここらがティエルナ領になったとはいえ、ごろつきたちがうろついてないとも限らない。


 アタシらの護衛を、エリーザに任せられて安心だ、ってね」


 とエウフェーミアが肩をすくめ、笑みを浮かべながら言った。


「それはお任せください! 


 海の中で戦えない分、陸上で思い切り腕を振るってみせます!」


「何事も無ければ、それが一番だけどねえ。


 どれ、アタシはここで日焼けのついでに、エリーザさんを鍛えでもしようかね」


「良いですね! 私、鍛えるのは大好きです!」


 グッと腕を曲げ、力こぶを作るエリーザ。


「今後はこういう事が無いよう、『怖いもの』に対して耐性つけとかなきゃね。


 アタシが怖い話百連発でもしてやればバッチリ、克服も出来るだろうさ」


「え゛っ!?」

 

 エリーザが、腹の底からしぼりだすように「え゛っ」と言った。


 もう体が高速で震えはじめ、砂浜に少しずつ沈み始めている。

 するとニーナさんが、


「地震かしら?」


 と小屋から出て来て言った。




 ▽




 くわっ、と口を開けたシーサーペントが三匹、向かってきた。

 サメよりこいつらの方が、泳ぐのが早いようだ。


 ……それから逃げ切ったエリーザも大概だな。


「それはともかく……シーサーペント。


 半魚人との戦争では、こいつらが戦局をひっくり返したらしい。


 人魚たちに、甚大な被害をもたらした海の怪物……ある意味、海のドラゴン。


 しかし。結局こいつらは攻撃手段が口しかないのがな」


「おにいちゃんの言う通り。それが弱点」


「海の中だとおっきい生き物、なんかすっごい怖いけど……がんばる!」


 確かに、海の中の巨大生物って妙な迫力があるのは分かる。


「大丈夫。皆なら、レリアならやれるよ」


 レリアが俺の言葉にうなずいた。


「ぼ、ぼくはお姉さまの後ろで頑張ります……あのサメならなんとか……」


 リリアーナは、俺の腰にしがみついている。


 まあ、無理をすることはない。

 折を見て【時間停止】とか使ってくれれば、って変なとこ触ろうとするな!



「まず。一匹目」


 マティが、口を最大まで開いたシーサーペントの前に立ち、牙が噛み合わされる寸前に横へかわす。

 そして、宇宙的安物の剣をシーサーペントの側面に突き立てる。


「後は。このままでいい」


 マティの言う通り、剣を保持したままその場で動かないようにすると……

 勝手にシーサーペントが剣で切り裂かれていく。シーサーペントは急には止まれない。


 速度があだになり、シーサーペントは「開き」になって力尽きた。




「二匹目は私が」


 向かって来るシーサーペントに対し、腕を組んで待ち構える。

 そして、


「【デカく、可愛く、ぶっ叩く】……『ストーンパンチ』!」


 海底から超巨大な岩の腕が生え、俺とシーサーペントの間に伸びてきた。

 体をひねり、シーサーペントはかろうじて正面衝突は避けたが……

 

 岩の手が開き、身をよじったシーサーペントを横からガシッと掴む。

 そしてそのまま海底に叩きつけ、さらに上から瓦割りの要領でぶっ叩いた。


 二匹目のシーサーペントは一部がミンチと化して倒れた。

 

 


「やっぱりこわい! でも、シルヴィアちゃんが、やれるって言ってくれた……!」


 ぐっと両拳を握って、シーサーペントの前にややフラフラと出ていくレリア。

 そこへガブリと食らいつくシーサーペントだったが、なんとかレリアはかわしたようだ。


 そしてシーサーペントは食らいついた勢いのまま、なぜか力を失ったように海底へ沈んで行った。


「? 何をしたんだ?」


 俺がレリアに聞くと、レリアは笑顔で瓶をかざす。

 ラベルには何も書かれてなかったが、どくろマークが中身を如実に表していた。


 ああ、そういうのを飲ませたのね……





「……さて、次は巨大サメだ……ってあれ?」


 シーサーペントを三匹すべて片付け、残りは巨大サメ一匹だった、のだが。


 サメはこちらへ向かって来る途中で、混乱したように突然ぐるぐると回りだしたかと思うと……

 なぜか方向を変え、クラーケンに向かって食らいついていった。


「仲間割れ……?」


 しかし巨大サメの攻撃は一切クラーケンには通用せず、逆に触手を巻きつけられ、潰されてしまった。


「あ、ありゃ。やっぱり、総大将はそんな簡単にはいかないね」


 とリリアーナ。

 今のは、リリアーナの仕業なのか……?


「【生物操作】。い、今まで使ってたのは、直接、触って発動させるもの。


 いま、ぼくがやったのは、遠隔の操作なんだ」


「遠隔? 巨大サメを、ここから操ったということ?」


 そんな事が出来るのか。

 じゃあシーサーペントや、まさかと思うがクラーケンすら、自由にできるのか?


「そ、それは無理。遠隔操作できる条件は、一度、『それを食べること』。


 巨大サメ、人魚国で、食事に出て来たでしょ。


 そ、それを食べたおかげで、巨大サメは操れるようになったんだ」


 なるほど……


 ということは、食べた事のないシーサーペントや、クラーケンは不可能ってことか。

 しかしどっちにしろ、それらは食べられるものとは全く思えないけど……


 まあとりあえず、これで取り巻きは片付いた。

 あとは、クラーケン本体のみ……!

お読みいただきありがとうございます!


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