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第六十三話 リナの話 ~ティエルナの決意

 え?

 シュイロークァ遺跡て言った?


 そして、エルフ宇宙へ?

 

「な、なんか情報が渋滞してて。シュイロークァって、古代文明のことですよね?


 星の舟? 宇宙?」


 エリーザがやや混乱している。

 いや、俺たちもちょっと戸惑ってるくらいだ。


 シュイロークァ遺跡って、まさか古代魔法のダンジョンはまだあったのか!?


「古代魔法? 知らないよ、そんなのは。


 遺跡にあるのは、星の舟。


 古代文明の人たちは、それを使って空に輝く星にまで、自由に飛んで行けたんだって」


 それは俺も聞いた事がある。

 しかし、その古代文明の人間が残した遺跡が、まだあったとは。


「今、古代文明の人たちがいないのは、空の星に住むようになったから。


 自分たちもそこまで行くべきだ、と言いだしたの。今のエルフ王が。


 星の舟を掘り出して、使えるようにしようとしてる」


 そしてリナは悲し気なため息を一度ついた。


「だから、いなくなっちゃった。若い人、みんな。


 星の舟を掘り出すため、連れてかれちゃったの」


 なるほど、労働力にならない老人と子供が残されたってわけか……

 しかし、女の人も?


「魔力タンクだよ。若い女エルフは。


 男たちの体力を回復させる、だけのね」


 魔力タンク……男の体力が尽きたら、強制的に回復して、また動けるようにする。

 女の魔力がいったん尽きるまで、それを繰り返すのか。


 なんてひどい労働環境だ。


「みんな、それでいいの? 反対する人、いなかったの?」


 レリアがリナにたずねた。


「反対したよ、もちろん。みんな、星の世界になんて、興味ない。


 エルフは、遺跡を守って、静かに暮らすべき。リナたちはずっとそうしてきた。


 でも、その方針に強く反対して、王に抗議にいく人たちがたくさんいたんだけど」


 リナがまたため息をつく。


「捕まっちゃった。全員。今の王は、自分の方針に逆らう人は絶対許さないんだ。


 反対する人を見つけ次第、特殊部隊が送り込まれるの。


 そうなったら最後。捕まるか、殺されるかのどっちか」


 特殊部隊……俺たちのところにも来た、アレかな。

 そんなのにも老エルフを使うあたり、若いエルフは発掘にすべて投入されてるのか。


 魔力による肉体強化をほどこしてあったようだが、長時間持たないのが弱点だ。老人ならなおさら。

 引き際のよさも、そういう理由によるのだろう。


「つまり、若いエルフは全員、強制的に労働力として駆り出されたってわけですか。


 暴君としか言いようがありませんね!」


「しっ。静かに。どこで誰が聞き耳を立ててるか、わからないんだから」

 

 リナが口の前に指を立てる。


 一般人による、密告制度も確立させているみたいだな。

 そうやって、反乱分子を見つけ出しているのか。


「だから。聞き込みをしても。答えずすぐ引っ込んだのね」


「ひどい話だね……!」


 レリアも憤る。

 

 俺は、ふと閃いたことがあって、リナに尋ねてみた。


「……ところで、私たちの国で、冒険者が何人も行方不明になってるんだ。


 それも、この里の近くで。エルフじゃない、人間も労働力として使われてるんじゃないか?」


「……あるかも。可能性。


 以前、リナが遺跡を探ってたとき、見かけない格好の人たちが連れてかれてるのを見たんだ。


 その時、『外部の労働力をまた確保した。第七管区へ送り込め』って。


 隊長さんっぽい人が、どなってたのが聞こえた」 


 『外部』の労働力。

 エルフの里の『外』ってことなら、俺の想像は当たりだろう。


 冒険者に限って連れ去るのは、体力や魔力が並みの人間より優れているからだ。


「今でも、その人たちは遺跡で働かされてる……?」


 レリアが声をひそめながらも、少し興奮したようにささやいた。


「可能性は大。だとしたら」


「助けるべき、だな」


 俺の言葉に、皆うなずいた。


「もちろん、エルフの人たちも。王の勝手な思想で、エルフの人たちが苦しんでいいわけがない。


 エルフ全員が王と同じ意見ならともかく、ほとんどが反対なら、そんな王は降りるべきだろう」


「助けて、くれるの? お姉ちゃんたちが?」


 リナが、少し涙ぐんだ。


「さっき、リナは『遺跡を探ってた』って言ったよね。


 ということは、誰か助けたい人がいるんじゃない?」


「いる、いるよ、お兄ちゃんが! だいすきな、アルカディーお兄ちゃん!


 この家だって、お兄ちゃんの家なの! でも、捕まったの! 


 遺跡の、ひどい環境で働かされてる!」


 声を震わせ、リナが叫ぶ。

 レリアがそっとその肩を抱いた。


「助け出そう、絶対に。


 私も妹がいるから分かるよ、そのお兄ちゃんも遺跡でリナの事をずっと心配してる」

 

「あ、違うよ、血は繋がってないの。リナは孤児だったの。


 それをお兄ちゃんが引き取って、育ててくれた。


 いつか、お兄ちゃんのお嫁さんになるのが、リナの夢だよ!


 ここら辺の子供は、リナが褐色だからってダークエルフってののしるけど。


 そんなの関係ない、リナはアルカディーお兄ちゃんがだいすきなの!


 絶対、結婚してやるんだから!」


 リナは、誇らしげに、にかっと笑った。


「リナちゃん、じゃなくて、リナは強いね!」


 レリアが感心したように言った。


「そ、そうかな?」


 リナが少し赤くなる。


「あたしも、そのくらい力強く自分の気持ちに、自信を持てたらなー……」


「わたしも、おにいちゃんと血が繋がってなかったら……」


 レリアとマティが俺を見ながら、小さな声でぼそりとつぶやいた。

 良く聞こえなかったので「え?」と返したら、「何でもない!」とハモった返事。

 ううむ?


「でも、ここのエルフ王が若い労働力をつねに求めているのなら……


 私たちも、そうなんじゃないですか? 完全に若い労働力ですよ?」


 エリーザが、ふと気づいたように腕を組む。


「だよねー? だったら、めちゃくちゃ狙って来るんじゃない!?」


 レリアの言葉が終わるか終わらないかのうちに、とつぜんリナの家の窓と扉が破られた。

 そこから黒い影が次々に家の中に入って来る。


 案の定、付け狙われてたってわけか!

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[良い点] とても面白く一気に読ませてもらいました これからも更新頑張ってください 応援しています
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