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第六十一話 入国、エルフの里 ~おめかしタイム

 いったん直近の村まで引き返し、一晩泊まって、次の日の朝。



「入国の目的は?」


「……観光」



 俺たちは森の里の、天然樹の壁に設置された関所まで来ていた。



 そこで老エルフの入国管理官と対面し、冒険者カードを提示。

 エルフの里への入国を希望していることを伝えた。


「……ほう、ティエルナ。あの、国王が求める古代魔法のオーブを、全て集めたという……」


 なんと、ここまでティエルナの名は届いているのか。

 交流が無いわりに、外の情報収集はおこたってないらしい。 


「あたしたち以外、入国希望者っていないみたいだねー」


「辺境の地であること、エルフが他種族に冷たい傾向がある事に加えて、『冒険者狩り』。


 その話が広まって、商人たちも用心深く近づかないようになりましたしね。


 あっ、レリアさんはそんな傾向はありませんけど!」


 レリアが少しうつむいたのを見て、エリーザが慌ててフォローする。


「でも。襲撃された翌日に入国。大丈夫かな」


「マティの心配はもっともだけど、だからこそ、相手も想定してないんじゃないかな」


 また来るようなら、今度は逃がさない。

 そしてレリアを傷つけたやつらが居るところに、早く乗り込んでやりたい気持ちもあったのだった。


「ふふ」


 ……なんだ?


 マティが、少しほほ笑んだと思うと、レリアのそばへと歩み寄る。


「レリア。大事に思われてる。毒矢の件。おにいちゃん結構頭に来てる」


 とぼそっと耳打ち。

 とたんにレリアはぼっと赤くなった。


「そ、そんな! えー!? んー!? え、えへへ……」 


 あたふたしたあげくに、へらっとした笑いをこぼすレリア。

 妹は何を言ったんだか……



 しかし、また『観光』で入国しようとしてるな俺たち。これで二度目。

 今回は『戦い』に発展する可能性もある気がするが……


「……いいだろう。入国を許可しよう」


 老エルフの入国管理官がぼそりと告げた。


 そして俺たちは徹底的な身体検査、持ち物検査を受け……

 天然樹の壁の中に作られた、トンネルのような通路をくぐり、ついにエルフの里へと入国したのだった。



「おお……」


 俺たちは、天をつくような高さの巨人樹に、目を奪われた。

 エルフはその巨木に寄り添うように家を作って、樹上生活を送っている。


 樹と樹の間には、かけ橋が渡され、エルフたちが何人も行きかっていた。


「すごい。家が樹に生ってる」


 マティも、遥か上にあるエルフの住居を見上げて、驚きの声をもらす。


「ひえー! 壮大な眺めですねえ!」


「ここに、おかーさんは住んでたんだ……おっきい樹……」


 巨人樹から広がる枝葉で、周囲が暗くなっているほどだった。

 明るさ確保に、そこかしこにランタンが設置されている。


 地上にも巨大な根っこの間をぬうように、建物がたち並び、街を構成していた。


「……ん?」


 ここが中心街、目抜き通りのはずだが、そこまで人は多くなかった。

 そして、妙な違和感がある。


「……ここのエルフ、老人と子供ばかりだな?」


 奇妙な事に、周囲には年老いたエルフか、幼いエルフの二パターンしかいない。

 若いエルフはどこへ行ったのか……? 


「我々も向こうをじろじろ見ていてなんですが、向こうも我々をじろじろと見てきますね……」

 

 エリーザが居心地悪いといった感じだ。

 確かにエルフたちは、こちらを何とも言えない目つきで見てきている。

 

「まあ、他種族に冷たいという話だし……


 とはいえ、これから情報収集する上で、全く相手に馴染めないってのは良くないかな」


「服装が全く違うもんねー?

 

 あたしたち、悪目立ちしてるかも?」


 レリアの言う通り、エルフたちは独特の衣装を身にまとっている。


 白もしくは緑を基調とした、ゆったりとしたローブだ。

 金糸が織り込んであったりして、洗練された印象がある。


「そういや、若い女性のエルフは、透け透けで極薄の服を着ているって話を聞いたけど」


 そんなエルフ、どこにもいない。若い女性自体、いない。

 詐欺では!?


「……おにいちゃんのえっち」


「シルヴィアちゃんのえっち!」


 マティとレリアに冷たい目で見られた。

 ち、違うって! そんな話を聞いただけだって!


「シルヴィアさまは、そういう服を着て、周囲に馴染もうという考えなのでは?」


 エリーザが妙な解釈をした。

 そうも言ってないんだが。


「あー、だったら、シルヴィアちゃんに着てもらおう?」


「同意。透け透けの服。合わせよう」


 なんかまた俺が着る流れ!?


「すいませーん! 服屋さんてどこにありますかー?」


 さっそくレリアが一人の老エルフを捕まえ、店の場所を聞いている。

 行動が早い!


 しかし、相手の老エルフは嫌な顔をしているな。

 ハーフエルフでも、関わり合いになりたくないのか……? 


「教えてもらったよー! ここが初めてなら、地図屋で地図を買った方がいいって!」


 しかし、きちんと教えてはくれたようだ。


「さあ、お着替えしましょうね」


「ね」


 レリアとマティが俺の両隣りに立ち、腕を組んで来た。

 逃さない、という意思を感じる……


(あ、あまり恥ずかしい格好、しないでくださいね!?)


 ファニーが脳内で抗議してきたが、どうなるかはもう、流れによるしかない。

 あきらめて。




「うわー、ほんとにあった! 透け透け!」


「これはすごい。ごくり」


 レリアが教えてもらったのは、エルフの民族衣装を売っている店だった。

 そして話に聞いた通りの、極薄の服がある。


「めちゃめちゃ体の線、出ないこれ? 大丈夫? あっサイズですか。ええと」


 店員のエルフ(やはり老エルフだった)にテキパキとコーディネイトされ……


 気づけば、白い極薄の細い布を何度も重ねて着るような、エルフの民族衣装を身にまとった俺がいた。


「うわー透け透け! だけど、肝心なところはきっちり布が重なってて見えない!」


「すごく綺麗。耳が長くないのと髪が黒いだけで。他は完全にエルフ」


「まるでエルフのお姫様のようです! シルヴィアさま!」


 ぱちぱちと三人が拍手をする。


「いやーこれ肌触りが良すぎる……軽くて、紙を着てるみたいで心もとないけど」


 歩くだけであちこちの布がふわりと風に浮き、さやさやと衣擦れの音を立てる。

 着心地は最高だけど、防御力ゼロでしょこれ。


(うう、やっぱり恥ずかしいです! 一人だけこんな格好……!)


 ファニーがそう言うのなら……


「じゃあもう、こうなったら皆で着よう」


「えっ?」


「えっじゃないよ。私だけ着るのは逆に不自然でしょ!


 エルフの民族衣装、全員で、着るよ!」


 前回は一人だけメイド服を着させられたからな!

 今回は皆を巻き込む!


 皆で、可愛いかっこしよう!

お読みいただきありがとうございます!


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