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第五十七話 オーブと研究者確保 ~研究所大爆発

「ここだ」


 エウねーさんの使い魔にあらかじめ調べてもらい、オーブが集められている場所は特定してある。

 俺たちは、その部屋の前にまでたどり着いていた。


 こっそり扉をあけ、中に入る。

 

「うわ、なんつー汚部屋だ」


 床は足の踏み場もないくらい、物やゴミであふれていた。

 机にも棚にも、様々な実験器具のようなものが、ところせましと並んでいる。


「いかにも、研究者の部屋、って感じだね!」


「オーブ。どこかな……」


 用心深く、部屋を見渡す。

 さすがに国の最重要アイテム、そこら辺にぞんざいに置いてあるわけはないだろうが……


「あった」


 ぞんざいに置いてあった。

 部屋の一番奥、長机の上に三つまとめて、ごろんと。


「不用心だなー……


 いや、かなりの数の警備兵もいたし、あの結界。

 

 安心しててもおかしくはないか」


 (床のゴミのせいで)抜き足差し足、俺はゆっくりと部屋を進んだ。


 しかし何かぐにゃりとしたものを踏み、それが「ふぎゃっ!」とか声を上げたので、


「うわ!?」


 と俺は前のめりに倒れてしまった。

 倒れこんだ先も、妙に柔らかいものの上で、またそれが「ふぎゃ!?」と声を上げた。


「な、なんだ……?」


 身を起こすと、白衣を着た少女が俺の下にいた。

 ゴミの中に埋もれて寝ていたようだ。


 さっきはこの子の足を踏んでしまい、その上に倒れこんだのか……


「ん?」


 俺の右手に柔らかく温かい感触。

 それは下にいる、少女の左胸だった。


 自分のサイズほどではないが、けっこうデカ……じゃない!


「ご、ごめん!」


 慌てて離れる。少女も身を起こし、白衣で体を隠そうともがいた。

 てかこの子、全裸に白衣だけじゃないか!なんて格好で寝てるんだ……


「あわわ……さ、触られた……お、押し倒されて……


 あ、あなた……さては、ぼくが好きなんでしょ……!? そうなんでしょ!?」


 少女が真っ赤になって、俺を指さした。


「こ、これは。


 研究ひとすじだった、ぼ、ぼくの人生に、新しい世界への導き手がやってきたんだ!


 い、良いよ! さあ……つ、連れてってくれ!」


 ぶかぶかの白衣を着た少女は、訳の分からない事をわめき、両手を広げた。


 とりあえず、白衣の下にも何か着てくれ!





「で、あ、あなたたち、だ、誰?」


 少しあって落ち着いたあと、少女が改めてこちらに向かって言った。


 紫がかった、もさもさ黒髪に顔が隠れがちな、ややおどおどした印象の少女だ。  


 胸の身分証によると、彼女はリリアーナという名らしい。

 白衣の下にはシャツ一枚。部屋の状況といい、かなりずぼらかも。


「えーと、私たちは……」


「こ、こんな警備が厳重な場所に忍び込んで、ぼ、ぼくを押し倒して。

 

 は、初めてを奪っていくんだもの、その情熱、認めないわけにはいかない」


 しかしこちらの話も聞かず、リリアーナは顔を赤らめてそんな事を言った。

 妙な誤解を生んでしまっているようだ?


「……」


「……」


 そして気のせいか、さっきからレリアとマティの視線が痛い。


「(大きいのが、そんなにすきなんだー……)」


「(わたしも。もっと大きくなりたい)」


「(おっぱい賢者……)」


「(牛乳。飲もう。もっと)」


 そんなぼそぼそ声も聞こえてくる。

 おっぱい賢者って何!?



「私たちは、そのオーブに用があって来たんだけど……」


「お、オーブ? オーブも欲しいの、よくばりさん。


 い、良いよ! ぼくと一緒に連れてってくれ!」


 あっさり、承諾されてしまった。

 つか、この子ここを出ていくつもりか?


「良いの? この国の最重要機密でもあるオーブだろ!?」


「そ、そうだっけ。別に、いいんじゃない。この国ときたら。


 ぼくが古代魔法のオーブから新しい発見をして、検証の実験をしようとしても……


 手続きの書類だの、実験棟の使用許可だの、め、めんどくさい手順が多すぎて、いやになる」

 

 とリリアーナは愚痴りだした。

 


 リリアーナは数年前、天才的な魔法解析知識を買われ、王立研究所の所長となったという。

 今では、古代魔法のオーブの解析の第一人者。


 そして古代魔法オーブの解析自体はかなり進んでいるものの、検証実験は思うよう進まず。

 なかなかオーブ技術の実用化が動かない状況に、ストレスがたまる毎日だという。



 ……これって、けっこうこちらに都合が良いんじゃないか?


「なら、君にうってつけの、自由に好きなだけ実験が出来る場所があるんだけど」


 と俺は提案してみる事にした。


 もちろん、エウねーさんの所だ。

 また「勝手なことを」とか思われるかもしれないが、あの小屋、この手の実験に向いてすぎる。


 顔も見られてしまったし、リリアーナを連れ出せるなら、口止めの必要もない。

 こちらがティエルナであることには、全く気付いてない様子だが。


「ほ、ほんと!? めんどくさい、手続きもなしで!? 自由に!?


 さすが、ぼくから初めてを奪っていった、白馬の王女さま!


 ま、まさに運命!?」


 白馬の王子さまでなく、王女さまと来たか。

 確かに、元、王女だけど……


「じゃ、さ、さっそく行こう! そろそろ、ここは爆発するし!」


 は?


「爆発!?」


「あ、ああ。ぼくが、朝、なかなか起きれないから。


 ちょっと緊張感を持って、起きれるようにしよう、って思って。


 け、研究所が吹っ飛ぶくらいの爆発魔法を、ぼく個人のオーブにセットしてるんだ」


 なんですとー!?


「毎朝、決まった時間までに、ぼく固有の魔力を流し込まないと、だ、大爆発って寸法。


 でも、それでも起きれない時があって、よく職員に叩き起こされたりするんだ。


 所長、あと10秒です! は、早く起きて、魔力を! ってね」


 ここって、毎日大爆発する可能性のある研究所が、すぐそばにある城だったんだな……

 なんて危ない城だ、って早く逃げた方がいいのか!?


「あと、い、1分だね」


「!? 早く魔力を!」


「いいよ、もうぼくは、こ、ここに居る必要ないし。


 景気よく、吹っ飛んでもらおう!」



 というわけで、オーブを確保し研究所の外に出て、アイテムボックス空間に逃れた。

 眠らせた職員も連れ出し、適当に離れた場所にポイしておく。


 

 その直後、地面を揺るがす爆発音が轟き、研究所が吹っ飛んだのが分かった。





「やれやれ」


 宿に戻り、エリーザに経過を説明して、やっと落ち着いたところ。

 窓から、王城ちかくに煙が立ち上っていくのが見える。


 城下町は大騒ぎだ。


 しかし、その状況を作り出した本人はあっけらかんとしており、


「さあ、連れてって、お姉さま! あ、新しい世界に!」


 そしてリリアーナは俺の腕に、自分の腕を絡ませてきた。

 お姉さま!?


「……」


「……」


 ま、またレリアとマティが冷たい目を!


「で、あなたたちは、結局誰なんだい?」


 そういや未だに自己紹介してなかった!




 しかし、これで「オーブは全部失われた」ということになってくれれば……

 結果オーライかもしれない。


 盗まれた、と騒ぎにならないで済むし。

 あの職員が、爆発の理由を説明してくれたら納得も行くかな。

 

「王がこれで完全に諦めてくれれば、いいんだけど……」


 それはやや、望み薄かもしれない。


 しかしこちらはオーブを全て確保したうえ、オーブの第一研究者まで仲間になった。

 俺の体を取り戻すという目標に、また一歩近づいた!はず!

お読みいただきありがとうございます!


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