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第四十三話 アデリーナ特訓開始 ~練習試合

「私のスキルだけは見送りになるけど」


 一秒じゃ使いようがないしね。

 アデリーナの今の形を作ったってことで、勘弁してもらおう。


「その分。生身部門で頑張って」


 ぐっ、と妹にガッツポーズで応援された。


「あ、ああ」


 俺がメイド服姿で、大勢の人前に出て、戦うのか……


 まあ、ベッドメイキングの美しさを競うとか、立ち振る舞いとか。

 そういう競技だったら、俺にはやりようがないしな。


「少し恥ずかしいけど、古代魔法のため。やるしかないね」


 でも、このメイド服。

 やっぱかわいい。

 見下ろすと谷間が見える……ちょっとドキドキ。




「メイド服、む、胸元を出し過ぎです! スカートも短い!」


 その夜……白い夢の世界で。


 案の定、顔を赤くしたファニーに怒られた。


 でも、選んだのはレリアたちだし……

 自分も、メイド服はロングスカートで露出なんて手くらいのもの、的なスタイルが良いと思うけど。


「戦闘するなら、動きやすい方が。多少は足を出すのも仕方が……」


「胸元は関係ないじゃないですかー!?」


 それはその通りとしか!


「で、でも」


 ん?


「あの。か、か……可愛い、と。言ってくれたことは、嬉しかったです……」


 それだけ言って、さっき以上に真っ赤になったファニーはさっと消えてしまった。


 うーん。面と向かって言ってるようなもんだからなあ。

 言った俺も、今になってちょっと恥ずかしくなってきた。


「……あれ。今日の夜会話は、これで終わりか。


 最初から最後まで、ファニーは顔が赤かったな……」





 翌朝。 


 MGメイドゴーレム・アデリーナの特訓開始だ。


 

 【高速成長】のスキルを一秒コピーしてもらい、さっそくマティの剣技を少しずつ……

 と言いたいところだったが。


 アデリーナは動きが鈍い、というより鈍くさい。

 歩けばフラフラ、その辺りの机や椅子にぶつかる始末。



「こりゃ基本的な体の使い方から、学ぶ必要があるか……」


 前途多難な気がしてきたが、まだ十日ある。焦る事はない。


「まずは、私たちの動作を見てもらいましょう」


「一秒見て、三秒休んで。また一秒見て、を繰り返すんだね!」


「一通り学べたら。実践」


 レリアたちの、つきっきり訓練が始まった。



 一日目は、歩いたりしゃがんだり、日常生活レベルの動作を学んで終了。


 二日目。物を掴んだり、道具を使うなどの、器用さが必要な動作を学んで終了。


 三日目。飛んだり跳ねたり走ったり、全身運動的なことを学んで終了。



「……よし、かなり人間らしく動けるようになった!」


「アデリーナちゃん、すっごい!」


「恐縮、です」


 頭を下げる動作も、最初はカクカクだった動きが今では見事になめらかに。

 一秒ずつだが、着実に積み重ねていった成果だ。


「そろそろ、マティの剣技、エリーザの格闘術を学んでいってもらおう……!」




 ――七日目。


 俺たちはアデリーナを連れて、共同訓練所に来ていた。

 ここでは、大会に備えて竜人が鍛錬に来たり、メイドゴーレム同士の練習試合を行ったりできる。


「ここ、良いですよ! 


 設備が充実していて、そのうえ女王のおかげで無料で利用できます!」


 エリーザが嬉しそうだ。アデリーナ特訓の合間をぬって、何度か利用したらしい。

 こういう場所で自己鍛錬するの、好きそうだもんな。


「今回の目的は、練習試合だよ。


 アデリーナの仕上がりを確認しよう」


「たのしみ! わくわく!」




「ん? おまえらも、練習試合の申し込みか?」


 試合用の四角いリングが設置された場所に来ると、いつぞやのフードにグラサンの男が話しかけてきた。

 

「ああ、そうだけど」


「結局あのポンコツを買ったのか? 底抜けに愚かな奴だなぁ!?


 紙袋なんか頭にかぶせて! 恥ずかしいなら、ちゃんとしたの買えよ愚か者っ!」


 今回、アデリーナには紙袋をかぶってもらっている。


 紙袋には、落書きのような目鼻、口が描かれていた。

 レリア画伯の仕業である。


「かわいいよね!?」


 さすがにレリア以外には微妙な反応だった……


 あと顔を隠すのには、いくつか理由があるのだ。

 そして、今回俺はメイド服を着ていない。

 

「当日のサプライズだよ!」


 というレリアの意見を採用してのことだが、メイドがメイドのマスターになってるぞ?とか言われそうだったし。



「で、一番強いメイドゴーレムと対戦希望なんだけど」


「あ? そんなの、俺のMGクラウディアに決まっている!


 今も、九十九人抜きしたところだ! しかし自慢にもならん!

 

 ここにはカスMGしか居ないからなぁ!」


 周りを見ると、ボロボロにされたメイドゴーレムが数十体。


 マスターと思われる竜人が、それぞれ自分のメイドゴーレムを抱きかかえている。

 そして修復の魔力を流し込んだり、グラサンフードに恨みのこもった目線を送っていた。



「くそっ。あいつ、態度は悪いが、確かにMGカスタマイズテクは抜群だ……」


「あんな、人を見下す奴に負けたくなかった……!」


「だが強い。まさか練習試合とはいえ、MGエルヴィーラに勝つとは。


 前大会の、優勝MGだぞ! 間違いなく、あいつは今大会の優勝候補マスターだ……」



 周囲の竜人たちから、そんな声が聞こえてくる。

 なるほど、MGの実力は確からしいな。マスターの人間性はともかく。


「おいグラサンフード。次の相手は、我らがアデリーナだ」


 アデリーナの背中を軽くトンと押し、前に出てもらう。

 グラサンフードは、フンと鼻を鳴らし、いかにも見下しきった目つきで、


「俺の名前は、グラサンフードじゃねえ。ブラスコだ。ブラスコ・アランジ。覚えておけ愚か者。


 今大会の、優勝者となる天才マスターだぁ!」


 と名乗った。


 お前のフルネームなんかに興味はない。

 さっさと、リングに上がってもらおう。




「では、両者、礼。


 練習試合のルールとして、頭部への攻撃は厳禁。


 ダウンした者、リングアウトした者を負けとする。それ以外は大会準拠だ」


 リングの上で、審判の説明が行われ、リング周囲に結界が張られた。

 これで、内部からも外部からも、一切の干渉が出来ない。


 ただしマスターは結界内にとどまり、リング外から自分のMGに声のみのアシストが出来る。



「最初は軽くでいいぞ、MGクラウディア。そして時間をかけていたぶってやれ。


 ゴミはゴミ箱に入るのが筋だと、教えてやるんだ」


「了解、マスター」


 ブラスコがリング上のMGに命令した。


 MGクラウディアは、セミロングに赤いリボンが特徴のメイドゴーレムだ。

 メイド服は、肩口が露出しているタイプで、フリルがややトゲトゲしている。

 ただやはりボディも顔も銀色、髪もカチカチだ。


「相手の動きをよく見れば大丈夫、アデリーナ」


「わかりました、ご主人様」


 アデリーナが俺の言葉にうなずく。



「あのMG、あんな紙袋かぶって何のつもりだ? 前が見えないだろ?」


「落書きの目の部分、実は開いてて見えるようにはなってるんだろ。意味不明なのは確かだが」


「これでMGクラウディアの百人抜きは確定的か」



 周囲の竜人たちが、そんな事を言っている。



「うーん、大丈夫かなー? アデリーナちゃん」


「皆の技術。たくさん学んでもらった。いけるはず」


「彼女のデビュー戦です。しっかり応援しましょう!」


 ティエルナの面々にもやや緊張が見られる。

 しかし、今日までアデリーナは頑張って来た。

 

 きちんとその成果を出してもらい、周りにいる竜人たちにも覚えていってもらおう。

 


 カーン。

 

 ゴングが鳴らされ、アデリーナと俺たちにとって、初のMG同士の試合が始まった……!

お読みいただきありがとうございます!


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