第四十話 大会参加へ ~メイドゴーレム専門店
頂上決戦メイドバトリング大会。
何をやるのかさっぱり分からないものに、俺たちも参加しろって?
「なっはっは! 単純明快じゃろうが。
最強の名をかけてメイドたちが集い、壮絶な戦いを繰り広げる……
四年に一度開催される武闘大会なのじゃ」
女王が当たり前だろうという風に言った。
なんでメイドが最強の名をかけるんですかねえ!?
「武闘大会ですか。戦いと聞くと、なにやら腕がなりますね!」
エリーザが軽く拳の突きを繰り返しはじめた。
脳筋……
「んー、おぬしら自身が出るのか? まあ腕に自信があるなら構わんが」
ん?なんか、俺たちが出ることは想定してなかったような?
「メイドバトリングには二部門あるのじゃ。生身部門と、ゴーレム部門。
おぬしらが出るなら、生身部門。
元々は、おぬしらにはゴーレム部門に参加してもらいたかったのじゃが」
ゴーレム部門?
そういや、女王の両脇に控えているメイドがゴーレムみたいだが。
「おぬしらには好きなゴーレムを一体、見繕ってもらって、それを自由にカスタマイズするのじゃ。
そしてティエルナ代表として、そのゴーレムに戦ってもらうのじゃ。
バニア、軽く演武を見せよ」
「かしこまりました」
控えていたメイドゴーレムの一人が進み出て、拳と突き出したり、蹴りを繰り出したり。
その動きは、少しだけぎこちなさが残るものの、れっきとした格闘家に見える。
十秒ほど演武を行い、礼をして元の場所に戻った。
「良い動き。そして喋れるんだ。すごい」
マティが感心している。普通ゴーレムはそんな事は出来ない。
どういった魔法なんだ? まさか古代魔法?
「うむ、やはりメイドのスカートがひるがえるさまは、美しいのう……!」
女王はスカートヒラヒラフェチだった!?
まさか、それを見るためにこんな大会を考えたのでは……
「そんなわけあるか。せいぜい五分の三ほどの理由にしかなっとらんわ」
六割もあるじゃない……
「ともかく。このメイドゴーレムを戦闘用に仕立て上げ、自分の代わりに戦ってもらう。
己に自信がある人間は、自ら出場して良いということじゃ」
なるほどな。
メイドに限ってるのが謎なんだが。
「どうします? 竜人の戦力は未知数ですが」
「【鑑定】したけど。女王のそばのメイドはなかなか強い。女王はかなり。
ここの近衛兵の竜人ならまあまあ」
守護竜を倒せるくらいだからな、女王は相当なもんだろう。
本人はさすがに大会には出ないだろうが……
近衛兵でまあまあなら、俺たちの誰が出ても行けそうか?
「生身部門、出れるのは一人だけ?」
女王に聞いてみる。
「そうじゃな。全員出れる……と言いたいところじゃが、出場枠はあと二つしか開いてないのでな。
ゴーレム部門に一枠、生身部門に一枠。なので、おぬしらからは一人選ぶのじゃ」
一人か……エリーザが出たがってるみたいだし、彼女に決めるか。
「あと生身部門も、出場するからにはメイド服を着てもらうからの。可愛く着飾るのじゃぞ」
「あ、私遠慮しておきます」
エリーザが即断即決。
メイド服可愛いのに……そして可愛いの好きなくせに、素直じゃないんだから!
「じゃ、シルヴィアちゃんで決定だね!」
「やったね。おねえちゃん」
レリアとマティも即断即決、って俺が出るの!?
メイド服を着て?!
そもそもなんだよそのルール!
「じゃ、生身部門はシルヴィアで決定じゃの。
あとでメイドゴーレム専門店に案内させるでな。
そこで、ゴーレム部門に出す一体を選んでおくのじゃ」
俺の出場、決定されちゃったーーー!
本人の意思はどこに?
……でも。
メイド服を着てみたいという気持ちが、ほんのちょっとあるのは否定できなかった……
▽
「ここが、メイドゴーレム専門店でございます」
メイドゴーレム専門店。
俺たちの国のどこを探しても、そんな奇天烈な店は存在しないだろう。
案内してくれたのは、女王お付きのメイドゴーレム、バニア。
ほんとにゴーレムなのか疑うほど、人間ぽく動き、会話も可能。
「体を銀色に塗っただけの人にしか、見えないねー!
目の中まで銀色なのがちょっとこわい、かな? あ、ごめんね!」
レリアがバニアに手を合わせた。
ボディは液体ミスリル製だとか。
確かに表面は固く、髪の毛もガチガチだ。
液体とはいえ、一度形が決まったらもう変形はしないらしい。
「ゴーレムも凄いが、『知性の秘術』ってのもまた凄い」
女王が持っていた古代魔法のオーブは、『知性のオーブ』だった。
無機物に、知性のエネルギーを与える事の出来る秘術だ。
それを与えられた物体は、精神や心のようなものが発生して、喋れるようになる。
「人間より、自我はやや薄いようだけど……なるほど、メイドみたいな『仕える者』向きなのかも」
メイドの目の前で、手をひらひらしてみる。反応なし。
頬をつんつんしてみる。多少、嫌がるそぶりあり。
「アンニザームでは、竜人に仕えるメイドを誰もが所持しています。
それらは全て、女王の手により『知性』を与えられたゴーレムなのです」
とバニアが説明してくれた。
最初はただ便利なお手伝いさんだったが……
そのうち、自分のメイドをカスタマイズすることが流行りだした。
そしてカスタマイズは、可愛く着飾らせたりするだけにとどまらず。
剣や鎧で武装させるのが流行りだすと、次はお互いのメイドの『どちらが強いか』を競いだすようになった。
そうして、武闘大会を国が公式に開催することとなったのだ。
「それが、頂上決戦メイドバトリング大会……」
「娯楽の乏しい、都市国家の皆さまが楽しまれる最大の催しものです。
みなさまのご参加、歓迎いたします」
「……女王のオーブ。『魂の秘術』じゃないなら。無理に出なくても」
俺の出場が決まり、そのあと女王からオーブについて説明をされた時、マティに言われたが。
バニアのように無機物が人間のように喋る。
薄いながらも自我がある。
「それは、ある意味『魂』が宿っているとも言えるんじゃないか……?」
ちょっとばかり、哲学的な話な気もするけど。
なので『知性のオーブ』も確保したい、と思ったのだ。
「せっかくだし、全部そろえたい気分もあるしね。
三つ揃ったら、何か起こる可能性も」
ということで、マティも納得した。
「あとマティちゃん! シルヴィアちゃんにはメイドの格好、絶対してもらわなきゃ!」
「そうだった。うかつ」
レリアがめっちゃ張り切ってる!
メイド服は制服として、デザインとして好きだけど……俺が、着ることになるとはなあ。
なんか、ソワソワする……
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