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第三十八話 隠された迷宮? ~竜人都市

「とりあえず、ここがアンニザームの関係する土地だという事が分かったのは朗報だね」


 アンニザーム、第三の古代魔法ダンジョン。

 文献が間違っている説は、間違っていたようだ。


「でも、地上にも、地下にも、空にも……なにもなかったよー」


「不思議。探知できない見えないダンジョン?」


 レリアとマティが首をかしげる。


「古代魔法のダンジョンは、自然発生するダンジョンと違って、古代人が作ったもの。

 

 魔法を封じるなら、後の人間が見つけられないよう、普通隠そうとする」


「でも、アルニタクとミンタカは見つかってるよー?」


「なにかの理由で、隠ぺいする魔法が解けてしまったのかも」


 アンニザームだけは、いまだにその隠ぺい魔法が維持されている。

 今のところの仮説だけど。


「だとしたら厄介ですね……」


 【空間収納】と同じような隠され方なら、重力魔法でどうにかなるかも。

 問題はどこに撃ちこむべきかだけど…… 


「この土地の話をもう一度思い出してみよう。牛の突然死、幽霊、奇妙な犬、空の飛行物体……

 

 牛と犬、それに幽霊は、おそらく魔力の淀みによる影響だろうね」


 大地の下には、マナラインと呼ばれる魔力の流れが存在する。


 その流れが偏り、魔力の淀みや溜まり場が出来ると、空間が異界化。

 ダンジョンが出来上がる。


「モンスターって、淀んだ魔力が凝り固まって出来る、魔法生物の一種なんだよね!


 エウフェーミアさんとこのキマイラは、人工的に魔力を淀ませて作ったって聞いた!」


 ダンジョンに迷い込んだ一般的な動物も、変異してモンスター化することがある。

 エウねーさんはそれを応用して、キマイラを作ったんだろう。ヤバい発想だ。


「つまり、ここら辺は地上で魔力が淀みがちで、犬は変異したということですね。


 牛は変異についていけず、死んでしまった」


 エリーザの言葉に俺はうなずいた。


「でも、マナラインは地中にあるんでしょ?」


「普通はそう。でも、地上の犬や牛が変異したり、幽霊が集まってたり。


 それはつまり、ダンジョンは空にあるんだ。


 地中に作ったダンジョンが、なんでか空に浮かび上がったのかもしれない」


 皆で、空を見あげた。

 そこには星だけが輝いている。


「古代魔法のダンジョンも、中に魔力の淀みが出来るようになっている。


 そうすれば、自動的にモンスターが発生して、ダンジョン内の古代魔法を守ってくれるんだ。


 ドラゴンは、古代人の最終生体兵器なのかも」


 エウねーさんがキマイラを作ったように……


「その空中ダンジョンの存在が、マナラインの流れを乱して……


 地上でおかしな事を引き起こしていると?」


「幽霊も。その乱れに引き寄せられて。たくさん集まってるのね」


 エリーザがぶるっと身を震わせる。


「だから、探知すべきは魔力の流れ。


 明日、それを試すとして……今日はもう寝よう」


 皆うなずいた。


「わ、私が寝ずの番を務めます。なので聖水をたっぷり頂きたく……!」


 エリーゼが勇気の提案をしてくれた。

 それは尊敬できることだけど、一人寝不足になることはない。 


「【清く、可愛く、つつがなく】でブーストした『結界』で、安全な領域が出来るよ。


 皆、これで朝まで安心してぐっすりだよ」




 ▽




 次の朝。


 超広範囲の探知魔法で、空の魔力の流れを探った。

 特に、淀みが集中しているところを。


 すると、反応あり。

 探知妖精さんたちが、人文字で矢印を作って嬉しそうに「ここ!」「ここー!」と示してくれた。

 

「やっぱり、空だったね! シルヴィアちゃん、大正解!」


「さすが。おに……おねえちゃん」


 空といっても、地上から15メートル程度の空中だ。

 そこに、重力魔法を撃ちこんでみる。


 バリンと音がして、空間が割れた。

 人が入れるくらいの穴が開き、その向こうに灰色の部屋のようなものが見える。


「あれがおそらく、アンニザームのダンジョン……!」


「今まで、長らく誰も発見できなかったダンジョンをついに!


 それだけでも偉業として祝福されるでしょう! シルヴィアさま!」 


 エリーザが感激に、やや涙ぐんでいた。


 古代魔法のダンジョンに関する文献が見つかって以来、数10年もの間、未発見だったダンジョン。

 見つけた俺もかなり興奮している。


「シルヴィアさま、さっそく国に報告を!」


「いや、まだそうと決まったわけじゃ。入ってみたら全く違うダンジョンの可能性もあるし」


 つとめて冷静に、俺はそう言った。

 まずは、探索だ。


「でも。どうやって見分けるの?」


「アルニタクもミンタカも、名前は入口に書いてあったから。古代文字で」


「あんがい簡単! って、誰か古代文字読めるー?」


「アルニタクとミンタカとアンニザームだけは、判別できるよ」


 そうでないと判断しようがない。

 国がそこだけ、部分的に解析出来ている古代文字を発表している。


 ギルドでも閲覧できるが、それを読んだ事があるのは俺だけだった。

 


「ではまいりましょうか! 問題はどうやってあそこまで飛ぶかですが」


 空を飛ぶ魔法は存在しない。

 古代人は、自由自在に空を飛ぶ技術を持っていたらしいが。

  

「任せて。【のろく、可愛く、ぶっ叩く】。ストーンパンチ」


 パリスをボロクソにした、地面から生えるパンチだ。

 今回は、それの動きをゆっくりにして、自分たちの足元から生やした。


 岩の拳に持ち上げられ、俺たちはゆっくりと空中に開いた穴までたどり着いた。


「まずは安全確認」


 探知魔法で危険物があるかどうかを確かめたが、問題なさそうだ。


 いよいよ、アンニザームのダンジョンへ。

 ティエルナは、そこに足を踏み入れる最初のパーティになる……!


「よし。入ろう……!」


 俺たちは、空間の穴へ踏み込み……石で出来た、固い床へと降り立った。




「ここが、ダンジョン?」


 レリアが首をかしげてつぶやいた。


 見た感じ…… ただのよくある地下室、って印象だ。

 物置に使われてるような……樽が並んだ棚と、木の机。椅子。


「人が、使ってそうですね……ダンジョンっぽくないというか」


 埃の積もり具合からも、放置されてる感じはない。


「階段があるよ!」


 レリアが指さした先には、出入り口と登り階段が見える。

 その、結構長い階段を登り切り、出た先は。



 天まで届きそうな超高層の四角い建物が乱立する、都市だった。


 そこを歩いているたくさんの人々。しかし。


「人間じゃ。ない……!」


 耳の後ろから、伸びる角。

 尻から伸びた尻尾。


「竜人! 竜人の都市だよ!」

 

 レリアが興奮して叫ぶ。


 古代シュイロークァ文明のあとに、栄えていたという伝説の、竜人。


 ある時に地上から消え去り、わずかな痕跡が残っているのみで、存在の不確かな竜人文明。

 それが、今目の前に……!? 



「誰だ貴様ら! に、ニンゲン? 貴様ら、ニンゲンか!?


 ここアンニザームに、何の用だ? 戦いに来たのか!?」


 警備兵らしき、長槍を持った二人の竜人がやってきて、問いただされた。

 言葉は通じるみたいだ……


 そしてどうやら、ここはアンニザームらしい。

 とりあえず……様子見の返答をしておくか。


「何って……観光?」 

お読みいただきありがとうございます!


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