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第三十一話 初めての香水 ~パリス出現

「あ、そうだ!」


 ミンタカのダンジョン、二度目の攻略開始……しようとしたところ。

 レリアがカバンを探って、霧吹きのようなものを取り出し、


「えい!」


 とこっちに向かってシュッと一吹き。


「ん? なんだ?」


 レリアが急に遊びだしたのかと思ったが、


「わあ。良い香り……」


 ……確かにマティの言う通り、良い匂いだ。


「虫よけの香水だよ!」


 と、自分や他の二人にもかけて回っている。


「ほう……良い香りですね。落ち着きます」


 エリーザも、目をつぶってうっとりしている。


 前、俺が虫系モンスター苦手って言ったから研究してくれてたんだな。

 虫よけというには、やたら良い香りだけど……ちゃんと効果あるんだろうか?


 しかし。

 

 その後通路を進むが、いっこうに虫系モンスターが現れることはなかった。

 めっちゃ効いてる!


「これはありがたい。嫌な奴らに全く出会わないってのは最高だ」


 これは感謝しかない!疑ってすまなかったレリア!


「えへへ! 役に立って良かったよー!

 

 苦労して成分調整したかい、あった!」


「レリア。いい仕事」


 しかし香水なんて、つけるの初めてだ。

 うーん。


 良いな、これ……常用したい。





 通路に敵はなく、扉も問答無用でこじ開けて。

 ミンタカのダンジョン、ついに地下九階。



「古代魔法まであと一息!


 だけど、ポータルで一度戻って休憩するのもありかな。


 皆、どうする?」


「あたしはだいじょーぶ!」


「わたしも。問題ない」


「私も全く消耗しておりません! ファニー様は大丈夫でしょうか!」


 俺も万全だ。

 全会一致で、進むことに決定。

 

 今日中に目的は果たせそうな勢いだ。

 マティを狙った、あいつがちょっかいをかけてこなければいいが……



 と、ここで妙な小部屋に出くわした。


「なんだ? ……革袋?」


 血で汚れた革袋が、床に散らばっている。

 なんとも不気味な光景だ。


 小部屋には誰もいない。


「……おそらく、冒険者が血を持ち運ぶための革袋です。


 扉の紋章は半分、赤くなっています」


 エリーザが扉を確認する手が震えている。


 この市で、血が目的の誘拐事件が起こっているのを彼女は知っている。

 正義感からの怒りで、震えているのだ。


「……しかし、ここまで降りてきている冒険者が、他に居るってことになる」


 ここのギルドは結構いい加減で、番付もないため誰がどこまで潜っているのか不明だった。


 初日に捕まえたあの男は、下層にすらたどり着けない、と言っていたが。

 あの男のパーティだけの話だったのか?


「強者が居るんだな。最下層一番乗りを取られるところだったかも」


 今までこの階を巡った感じ、この扉を超えれば最下層……十階への階段だ。


「血が足りなくなって。戻ったんだね」


「正解だよお嬢ちゃん」


 !?


 とつぜん、男の声がマティの後ろから聞こえた。

 マティが身構えるより早く、男はマティの腕を絡めとってひねり上げた。


「痛っ!」


「マティ! マティから手を離せ!」


「おーっと、何もせんほうがいいぜ。こいつの命が惜しくば、離れろ離れろ。


 まあ、いっぺんに飛び掛かられたら俺もヤバイけどな。


 その時は即こいつの腕一本折って、ポータルに逃げ戻るだけだが」


 男の後ろには、ポータルがいつの間にか出現していた。


「しっかし、お前さんら、とんでもない速度でここまで来たな。


 たまたまポータル先のチェックしてなきゃ、見逃すところだったぜ。


 またまたついてるな、俺ってやつは」


「お前は、パリス!?」


 男はまさしくパリスだった。

 以前会った、軽いが油断ならない印象の……


「ありゃ、慌てたんで素のまま来ちまった。


 また会ったなティエルナの嬢ちゃんたち。と、女騎士の誰か」


 朝、マティをさらおうとしたのはこいつか。

 おそらく、変身する魔法かスキルの持ち主だ。


「マティの手を離せ!」


「うるせーな。主導権はこっちにあんの、分からねえ?


 お前らさっさと部屋から出ていけ。今すぐ腕折るぞ?」


「待て! ……お前の目的は、その扉を開けるための血だろ。


 私なら、血を使わず扉を開ける事が出来る」


 だがパリスは疑いの目を俺に向ける。


「都合のいい嘘ついてんじゃねえよ」


「本当だ。だから私たちは血を消費すること無く、普通の冒険者たちよりも早くここへ着いた」


 俺の言葉に、ちょっと考え込む様子を見せるパリス。


「……確かに。ここに来るまでには、かなりの血が必要なはずだ。


 行方不明者がそうとう居なけりゃ、確保できる量じゃない。

 

 お前らが消耗している様子もない」


 ふむ、とパリスは頷いた。


「なるほど、それなりの根拠がありそうな話かもな。


 んじゃ扉を開けて見せろ。だがちょっとでも変な動きをしたら」


「わかってる。……【強く、可愛く、いきとどく】! ポイズン!」


 ブーストされた毒魔法が、あっという間に扉を侵食。

 大きく穴が開き、修復もされないまま通行可能になった。


「毒が効くだと? い、いや今まで試した奴は居たはずだ。


 てことは、とんでもない上級魔法ってことか……」


 パリスが驚きの声を上げ、俺を警戒する目で見た。


「扉は開けた。マティを離せ」


「ま、いいだろ。なーんて、言うかよ。


 地下十階の扉も、同じように開けてもらう。それまでは、このままだ」


 くそっ。だが仕方がない。

 マティを人質にされたまま、俺たちはパリスと共に地下十階へと降り立った。


「ありゃ? ここは、今までとは全然違うねえ」


 パリスの言う通り、地下十階は、小部屋と通路の構造ではなかった。

 ただひたすらに広い空間が、どこまでも続いている。


 いや……遥か遠くに竜のシルエットが小さく見えた。

 アルニタクと同じ、守護のエンシェントドラゴンが居るようだ。


「あの先に古代魔法があるんだよな? 話は聞いてるぜ」


「ああ。大きな扉があって、竜を倒せば開く。

 

 もういいだろ。吸血扉がないなら、マティを離せ」


 繰り返しパリスに言うが、


「俺がこいつを離したら、即俺がヤバイ目に合うだけだろうが。


 その前に、お前ら武器を外して床に置け」


 武装解除を要求してきた。


 今のところは、従うしかない。

 後で回復できるとはいえ、マティの腕を折られるとか、あってはならない。


「なんだこりゃ、薬? お前さんは薬師か」


 床に置かれた武器をチェックするパリス。


「魔法使いは何も持ってないのか。ん、賢者か? よく分からねえスキルを持ってるようだが。


 とりあえず、やたら強力な魔法は封じさせてもらうぜ。『沈黙』」


 パリスは俺に、しばらく喋れなくなる魔法をかけた。


「じゃあここからは、どちらが古代魔法にたどり着けるか、よーいドンだ。


 武器のないお前らは、いったん戻るしかないと思うが……な!」


 パリスはマティを突き放し、竜の居る方向へ駆け出した。


「マティ! 大丈夫か!?」


 妹に駆け寄って声をかける。

 疑似オリハルコン装備がパリスの魔法を弾いたため、『沈黙』は効いていない。


「大丈夫。ちょっと痛かっただけ」


 パリスめ。

 妹を痛い目に合わせた借りは、絶対に返す!


 それも何倍にして、だ……!!

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