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第十四話 王都へ出発 ~パーティ名決定

 次の朝。


 俺たちは、王都へと出発の準備を進めている。


「もっとシルヴィアちゃんと語り合いたかったなあ。


 そんで、妹ちゃんも行っちゃうの? さみしいよー」


 などとエウねーさんはわざとらしくぼやいた。


「にゃん」


「ほら、ペルラもさみしいってよ」


「猫を使うのは卑怯だよー。ここ、色んな薬があるから勉強になったなー」


 ペルラをなでなで、レリアがちょっと葛藤する様子を見せた。


 レリア、エウねーさんの薬の数々を眺めて回ってたから、薬師の腕はまた上がっただろうな。

 悪い影響、受けてない事を信じたい。


「さーみーしーいーぞー」


「また戻ってくるから、勘弁してくれ」


「まあ、妹ちゃんが治って、本当に良かったよ。


 オマエの女体化とか、妙なスキルという面白いものも見せてくれたし。


 久々に楽しい一日だった」


「そりゃ、良かったな……」


 むすっとした俺の表情に、エウねーさんが笑う。


「だはは。また何かあったら頼っとくれ。

 

 マティを預かってた借りとやら。妹ちゃんの全快と、楽しい一日で返済されたよ。


 これでチャラだ」


 エウねーさんがぱちん、と手を叩き合わせた。


「むう。エウねーさんがそう言うなら……」


 本人が良いと言うなら、無理に借りを返そうとするこもないか。


「……さて」

 

 自分の計算によれば、そろそろファビオ一行は準備を整え終わるだろう。

 そして、ポータルを使って最下層に挑もうとするはず。


 『仕掛け』があるため、そこまで慌てる必要もないが……

 早めに戻って、ファビオたちに借りを返すための準備もしないとな。


 

「おにいちゃんが行くなら。わたしもついてく」


 準備中、マティがそう言い出した時にはちょっと驚いた。

 冒険者ギルドへ行って、自分も適性を試してみたいらしい。

 

「おまえは病み上がりだろ……」


 と止めようとしたが、どう見ても完全健康体。


 昨日まで命にかかわる病の身であったことなど、嘘のように元気なのだ。

 寝てばかりで衰えたはずの体力も、完全に無かった事になっている。

 

 エリクサーおそるべし。


「やったね! 


 マティちゃんも加わるなら、そろそろパーティ名、考えようよ!」


 とレリアがはしゃぐ。


「そうだねえ。シルヴィアちゃんと可愛い仲間たち! てのはどうだい?」


「エウねーさんのセンスは古いから却下……」


「来ーーーい! 改良型キマイラ!」



 などと余計なひと悶着があったが……



 今、俺たち3人は首都へ向かう馬車の中で、ガタゴト揺られている。


「おにいちゃんと遠出。すごい久々。というかあの街の外に出るの初めて」


 マティは無表情ながら、ソワソワしっぱなしだ。

 不安もあるようで、ずっと俺の腕にしがみついている。


「王都、すっごいおっきくて! 色んな店があって、楽しいとこだよ!


 ついたら案内するねー!」


 レリアがちょっとだけ先輩ぽいところを見せる。

 

 そうして、俺たちは一日かけて王都まで戻ったのだった。




 ▽




「ここが、冒険者ギルド!」


 王都に着いた俺たちは、ちょっとした王都案内ツアーを行ったあと。

 マティの冒険者適性を見てもらうため、ギルドまでやってきたのだった。


「ここに名前を書いて、手のひらをつけて……」


 レリアがマティに色々と教えてくれている。

 健康になってすぐ、年の近い友達が出来るなんて。


 おにいちゃんはうれしいぞ。


 王都案内ツアーも、二人は手を繋いで色んなところを見て回った。

 妹も最初は俺にべったりだったけど、だんだんレリアの活発さに乗せられていったようだ。

 

「いや、ほんとに嬉しい……」


 思わず、目頭が熱くなる。

 妹が元気に外を走り回れるようになるなんて。

 

 思わず感慨にふけっていると、ギルド内がざわついていることに気が付いた。


「なんだ?」


 と、たたたっと俺の元にマティが走り寄って来て、誇らしげに告げた。


「あたし。適正職が勇者だって!」



 ▽



「びっくりだねー! マティちゃんが勇者になるなんて!」


 宿屋に部屋を取り、三人で落ち着いたところだ。

 いや、言葉通りには落ち着けてはいない。


 まさか、妹の適性職が勇者だなんて。

 レリアがすごいすごいを連呼して、マティは耳を赤くしている。


「ほんとに驚きだよ。」


「むかし。おにいちゃんが勇者で。わたしが賢者でサポートする。


 なんて言ってたのにね」


 現実は、真逆の職を提示してきた。


 勇者。数ある冒険者の中でも、10年に一度、現れるかどうかのレア職。


 最近ではファビオが勇者職を得て、一躍有名になったが……

 それからすぐ、新たな勇者が現れるなんて、前代未聞のことらしい。


「おまけに。固有スキルまで。【高速成長】」


「なーにそれ?」


「一言で言えば、レベルアップが超早いってことだ」


 これなら、俺らと一緒にダンジョンに潜っても、あっという間に主戦力になってくれる……


 元気になったとたん、これだ。

 妹の元々のポテンシャルは相当高かったみたいで、兄として鼻が高い。


 冒険者適正がなかったら、いったんエウねーさんの所に戻らせることも考えていたが。


「おにいちゃんの役に立てる。命を助けてもらった借り……すぐ返せるかも」


 俺の信念みたいな事を言いだした。


「兄妹でそんなこと気にしなくていいのに……でも、頼もしいな」 

 

 頭をわしわし撫でてやると、猫のように目を細めて気持ち良さそうにした。


「しかし、勇者と賢者かー。あたしが薬師、パーティでつり合いが取れないかも」


「何言ってるんだレリア。レリアはものすごく助けになってる」


「そう。卑下する事なんてない」


「えへへ。ありがと」


 勇者だからってそれだけで偉いわけじゃない。ファビオみたいなやつもいるしな。

 大切なのは、肩書や見た目じゃない。中身だ。


「マティもレリアも、その点、最高の仲間だよ」


「うれしい」


「わーい!」


 と、ここでふとレリアが何か思いついたように、指を立てた。


「パーティ名、ティエルナ、ってのはどーかなー?」


「うん? 響きはなんか、いい感じだな」


「おにいちゃんに同じ」


 マティも頷いた。


「やったね。じゃ、けってーい!」


「どういう意味なんだ?」


「えっとね、奈落にいた人が使ってたの。どこかの国の言葉で、『可愛い』なの」



 え。




「いいね。合ってる。わたしも含まれてるかどうか。分からないけど」


「とーぜん、含まれてるよ!かわいい!」


「レリアも。かわいいし」


「えへへ!」


 いちゃこらしだす二人。その様子は微笑ましいが……


「当然、シルヴィアちゃんもね!」


「う、うん……」



 また、『可愛い』か。

 傍から見れば、美少女三人パーティってことで、合ってるんだろうけど……


 スキル名といい、俺は『可愛い』から逃れられない運命なのか!?


 


 それはともかく……


 明日から、ダンジョン攻略だ。

 目標は、最新層を突破して、古代魔法の獲得。


 そしてそれが、ファビオたちに対する……借りの返済になる。

お読みいただきありがとうございます!


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