第66話 都市移動
その後、ルイズの承諾を得た俺は、裁きの魔王の首都を荒野の居住区へ移すことになった。
あれからルイズは何か考えている様子だったが、特に口出しはしてこない。
本人にしか分からない心境があるのだろう。
あえて訊くのも無粋なので、俺から触れることもなかった。
とりあえず許可は貰ったので、さっそく首都を運ぶことにする。
俺は居住区のそばにある広大な土地に注目した。
ここに持ってくるのがちょうどよさそうだ。
しかし、首都はあまりにも巨大すぎる。
収納したものをそのまま取り出すのは不便すぎるのではないか。
そこまでの規模はいらないし、却って邪魔になりかねない。
(前準備が必要そうだな)
そう考えた俺は白い空間へと移動する。
広大なその場所には無人の首都が君臨していた。
元より景観を重視された場所だ。
魔王と一部の幹部しか住んでいなかったため、機能性は度外視されている。
やはり新たな居住区として使うには改良が必要だろう。
さっそく俺は首都を切り分けていく。
適切な大きさにして、とりあえず居住区の住人が困らないように仕立て上げていった。
足りなければ追加で切り分けて配置するだけだ。
幻創魔術を扱う俺にとっては大した労働ではない。
首都が綺麗に分断される光景を想像するだけで作業が進んでしまう。
(一応、城も持っていくか)
俺は中央部にある建造物を見やる。
ルイズは魔王だ。
その住まいがみすぼらしいのは良くない。
城だと威光を知らしめることができる。
住人達も賛成するはずだ。
機能性だけを追求するなら城は選択肢に入らない。
しかし、魔王としての復帰を宣伝する意味でも、立派な城が居住区にそびえ立つのは悪いことではないだろう。
(宿敵の面子を考えてやるなんて、どうしてこうなったのやら)
俺は思わず自嘲する。
利害の一致から協力関係を結んでいるが、ルイズとは敵対しているはずなのだ。
それこそ五年前は殺し合うために決意をしていた。
しかし現在は共闘するまでの仲になった。
正直、自分でもよく分からない。
世界を乱す魔王達を討伐したら、俺達はまた敵対するのだろうか。
頭ではそうなると理解できているものの、なんとなく実感が湧かない。
きっと、魔王の居住区を見たせいだろう。
あいつは考えを変えて、昔の過ちを取り戻そうとしている。
民を酷使するだけでなく、生活を支えることで忠誠心を集めていた。
ただの傍若無人な存在ではなくなったのだ。
だからどうすればいいか迷っている。
(人間よりも良き王になるんじゃないか……?)
一瞬、そんなことを考えてみる。
あながち間違っていなさそうなのが始末に悪い。
もし魔王ルイズが悪逆の道を退くのなら、それを支援すべきか。
脳内で議論しながら、俺は首都の整理を進めていくのだった。




