第51話 蹂躙撃
ノアは少し先を疾走する。
その状態で俺に声をかけてきた。
「レード! 我の真名を呼ぶのだ!」
「元の姿になるが、いいのか?」
「構わぬ! ここで見せ場を作っておきたいのだッ!」
動機が不純だった。
正直、人間形態でも問題なく戦えるはずだが、彼女としては物足りないのだろう。
とは言え断る理由もないので、俺は以前に伝えられた真名を口にする。
「――赤竜ノルミティア」
次の瞬間、ノアが激しく発光した。
その輪郭が大きく膨らんで変形し、赤い竜となって滑走する。
真の姿となったノアは、歓喜の声を上げながら加速した。
「フハハハハハァッ! 弱き魔族どもよ、竜種の力に畏怖せよ」
大質量のブレスが前方一帯を舐めていく。
当然、そこにいた魔王軍に直撃して、彼らを一瞬にして塵に変えた。
防御や回避などできるはずもない。
絶対的な死が叩き付けられただけだった。
初撃のブレスで数千の魔族が即死した。
帝都の外壁が焼けて崩壊し、飛び出てこようとした魔族もさすがに躊躇する。
青炎の魔王リエアが防げたのが異常なだけで、本来なら逃れようのない攻撃なのだ。
ノアは縦横無尽に飛びながらブレスを連発する。
魔王軍は的になるばかりで、有効的な反撃もできずに被害を増やすばかりだった。
(ここは任せても大丈夫そうだな)
そう判断した俺は帝都の外周を回って別の入口へと向かう。
派手に暴れるノアを陽動に、さらなる追い打ちをかけるつもりだ。
狙いは既に絞っている。
俺は視線を帝都の中央部へと移した。
そこには威光を示すかのように立派な城が君臨している。
(城は魔王軍の象徴だ。ぶっ壊せば士気に関わるだろう)
きっとリエアも動揺するに違いない。
そうすれば、間接的にルイズの援護にもなる。
俺は空中を蹴って高い位置へと移動した。
帝都を守る魔族がしきりに矢や魔術を飛ばしてくるが、命中することはない。
幻創魔術を用いれば、避けるという行動を取らずに避けられるのだ。
俺はそれなりの高度に到着し、そこで新たな幻創魔術を発動する。
帝都とそこにいる魔族達を泥にした。
泥になった魔族は動きが途端に鈍くなる。
さらには転倒して陥没したり、四肢がもげている者も続出した。
泥になったせいで極端に脆くなっているのだ。
そこに雨を降らせると、帝都の街並みが崩れていく。
一緒になって魔族も溶けて泥水になった。
すべてが洗い流されて白い空間の汚れとなって広がる。
事実上、帝都が消滅した瞬間だった。




