第4話 魔眼の力
俺は一人で森を歩く。
鍛え上げた魔力感知によって、周囲の状況は筒抜けだった。
さらに魔眼もあるため何だろうと見逃すことはない。
生息する魔物達は、俺を避けるように移動していた。
接近してくる個体はいない。
天敵の種族と鉢合わせになっても争わず、むしろ仲良く揃って逃げる始末だった。
現在は意図的に魔力を放出しながら動いているのだが、効果は顕著に出ている。
幻創魔術を習得した俺は、生存本能を刺激するような存在になった。
絶対に敵わないと確信させるほど強大な力を発している状態だ。
憶測に過ぎないが心当たりはある。
五年前は平凡な幻術師だった。
ただでさえ能力が弱くて不遇な術で、その中でも実力は平均以下なのだ。
使い手が少なく、魔物を混乱させるのが得意だったので勇者パーティに勧誘されたものの、期待されるほどの活躍はできずに最終的には見捨てられた。
しかし現在の俺は飛躍的な進化を遂げた。
魔力量はかつての十倍以上で、感知や制御力や練度に至っては計り知れないほど上達している。
完全に別次元の術者にまで成長していた。
先ほどの戦闘での消耗も微々たるものだ。
それもとっくに回復している。
あれを何百回と連続で繰り返したところで疲労することはない。
仮に疲れたら幻創魔術で肉体を補強するだけだ。
今の俺に実質的な限界はなかった。
魔眼の内包する力は特異な色を放つ。
森の魔物達が退避する最大の理由がこれだった。
本来は存在しない両目は、人智を超えた魔力を秘めている。
意図的に抑えておかないと、いずれ無差別に世界を歪めてしまうかもしれないほどだった。
(普段は力を封じた方がよさそうだな)
魔眼に疼きを感じて、俺はそう判断する。
このままでは人間の街や村を訪れた際に迷惑をかけてしまう。
魔物を苗木にしたように、建物や人々を滅茶苦茶な形に変える恐れがあった。
絶対にあってはならないことだ。
服装と同様、習得した力はきちんと整えておくべきだろう。
これでは歩く災害となりかねない。
俺は魔力を操作して、両目で渦巻く力を段階的に抑制した。
暴発しないように気を付けながら封じ込めることに成功する。
これで問題は起きにくくなっただろう。
必要な時は解放するだけで、別に何も困ることはない。
魔眼なしでも幻創魔術は使えるのだ。
よほどのことがない限り、基本的には封印状態を保とうと思う。




