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魔眼の幻創術師 ~勇者パーティに見捨てられた三流幻術師は真の力に目覚めて世界を翻弄する~  作者: 結城 からく


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第3話 幻創術師は真実を歪める

 まず手始めに周囲一帯の地面を底なし沼にした。

 一方で俺は空中に不可視の足場を作って落下を免れる。

 存在すると思い込めばそれが反映される。

 幻創魔術は真実より優先されるのだ。


 底なし沼にはまった魔物達は慌てて抜け出そうとする。

 しかし、暴れた分だけ沈み込んでいく。

 身動きが取れない彼らは、格好の獲物だった。


 高みから見下ろす俺は悠々と微笑する。


「どれどれ……」


 魔物達を視界に収めて、魔眼の出力を調整していく。

 色彩が絶えず変動し、物体の輪郭が陽炎のように揺らぎだした。

 すべてが曖昧となって不確かな領域へと落とし込まれる。


 輪郭のぶれが消えた時、魔物達は無数の苗木に変わっていた。

 苗木は土の鉢から伸び上がっている。

 脈動する木の実は、心臓か命を表しているのだろう。

 邪悪な魔力だけは変わっていない。


 よく見ると、苗木ごとに細かな違いがある。

 葉が鱗になっているのは、元がリザードマンだったのだろう。

 根元から尻尾が覗くのは獣系統に違いない。

 頂点から角が生えたのは鬼系統だろうし、全体が白く乾いているのはスケルトンだ。


 他にもいくつかの苗木があった。

 いずれも魔物の種族的な特徴を示している。

 奇妙な苗木が密集するその光景は言うまでもなく奇妙だった。

 自分でやったというのに、ついそう思ってしまう。


 魔物達が苗木になったのは、もちろん幻創魔術の効力である。

 認識を意図的に歪めて、その誤った状態を現実にしたのだ。

 数の利を活かした暴力を得意とする彼らも、さすがに苗木となっては本領を発揮できまい。


 今回は相手が弱いので簡単だったが、生物に干渉するのは難しい。

 実力差によってはここまでの無力化はできないだろう。

 具体的にどのような歪め方になるかは魔眼の調整次第なので、今後はこまめに練習したいと思う。


 苗木となった魔物達は、風もないのに激しく揺れていた。

 それが彼らの唯一とも言える抵抗だった。

 動きたくても決して動けない。

 土の鉢に根を張ったままでは、頭上の俺に近付くことさえ不可能だ。


「少し卑怯な気もするが、まあいいか」


 俺は特に気負うことなく指を鳴らす。


 刹那、苗木が黒炎に覆われて燃え始めた。

 魔物達の憎悪と殺気を変換したのだ。

 彼らは自らの激情によって死に向かっていく。


 苗木の木の実が破裂した。

 粘液を噴きながら次々と弾ける。

 軽いその音こそが、魔物達の絶命を意味していた。

 黒炎に炙られた苗木から連続で破裂音が聞こえてくる。


 すべてが燃え尽きた時、場には炭化した魔物の死体が散乱していた。

 原形も分からないほど砕けている。

 苗木ではなく、元の姿に戻っていた。


「…………」


 惨状を前にして俺は佇む。

 五年前の復讐を遂げたわけだが、別に清々しい気分にはならない。

 幻創魔術の可能性と危険性を再認識しただけである。


 何はともあれ、ようやく過去を清算できた。

 俺はまた進むことができる。

 止まるわけにはいかない。

 魔物の群れに打ち勝った俺は移動を再開した。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 黒い炎に幻術。まさにアレっぽいんですけど、オマージュな感じでしょうか? イイですね! 好きな感じです!
[良い点] 今話もありがとうございます! >幻創魔術の可能性と危険性 清々しいほどチート! この能力を極めれば創造神を気取る事すら可能でしょう。 これほどチートだと、その後に来る『ざまぁ』への期待…
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