第16話 ノアの頼み
その後も俺とノアは街道を辿って地道に移動を続ける。
目指すは王都だ。
最も多くの情報が集まる場所であり、地理的にも各所へ行きやすい。
個人的には、勇者パーティの動向を知りたかった。
五年前に俺を見捨てたあいつらは、果たして何をしているのか。
村の話によると、魔王軍は依然として活動中なので、まだ世界は救えていないようだ。
(復讐する気はないが、一言くらいは文句をぶつける資格はあるだろ)
生憎と俺は聖人ではない。
普通に怒るし、嫌なことがあれば不満を垂れる。
だから勇者パーティにも気持ちを伝えたい。
おそらく謝罪はないだろうが、今の強くなった自分を見せたかった。
たぶん奴らが束になろうと俺には勝てない。
幻創魔術とはそういう能力なのだ。
その気になればいくらでも凄惨な復讐ができるからこそ、自制しなければならない。
俺は英雄になるのだから。
決意を固めながら歩いていると、ノアが話しかけてきた。
「レード、相談があるのだが」
「何だ」
「今の服装をどうにかしたい。これでは落ち着かないぞ」
困ったように言うノアはその場で回る。
彼女の装備は俺が魔眼で改変した姿――すなわち赤い鎧の騎士だ。
ただし俺との戦闘を経て半壊している。
破損箇所の修復は自然治癒の進みを示しているのだろうが、それでも痛ましい状態には違いない。
(すっかり忘れていたな……)
指摘されるまで特に気にしていなかった。
これはさすがに俺が悪い。
仲間になったのだから配慮すべきだろう。
立ち止まった俺は虚構の両目でノアの全身を捉えた。
さらに集中力を上げて凝視していく。
「そこで動かないでくれ。すぐに変える。具体的な要望はあるか?」
「特にない。強いて言うならレードの好みがいいな」
「……分かった」
ノアは受け入れる姿勢なので、魔眼を使うまでもない。
俺は自然な動作から幻創魔術を発動した。
ひび割れた鎧が修繕されて、重そうな剣と盾が縮小した。
さらには兜が外れて素顔が露わになる。
長い赤髪と金の瞳を持つその容貌は、端正な顔立ちも合わさって神秘的な雰囲気を醸し出している。
術の行使を終えた俺は思わず呟く。
「美人だな」
「ううむ、同族にもしきりに褒められたことがある。どうだ、子作りしたくなったか?」
ノアは自信満々にそう答える。
快活に笑うその姿は、涼やかな美貌が台無しだった。




