第15話 今後の方針
移動の最中、ノアがぎらついた目で俺に問う。
「ところでレード。魔王はどこにいるのだ? さっさと殺して子作りするぞ」
色んな意味でやる気満々だった。
ノアの頭の中には子作りしかないのだろうか。
竜の生態には詳しくないが、生殖本能が強いのかもしれない。
今にも押し倒されそうな気配を感じつつ、俺は宥めるように答える。
「魔王の居場所はだいたい分かるが、まだ向かわない」
「なぜだ。早く世界を救うべきだろう」
「情報が足りないからだ。世界情勢を把握するまでは、迂闊に動くべきじゃない」
俺は森の中で五年を過ごした。
現在の状況がほとんど分かっていない。
さっきの村も辺境なので情勢を把握していなかった。
だからまずは大きな街で情報収集を行う必要があるのだ。
方針を聞いたノアは、やや不満そうに首を傾げる。
「随分と消極的だな。我を凌駕する力があるのだから臆することもなかろう。レードなら正面からでも魔王に対抗できる」
「魔王の戦闘能力は未知数だ。いくつもの国が討伐隊を派遣したが、一度たりとも魔王城にすら辿り着けていない。いくら能力があると言っても、無策で突っ込むのは危険すぎる」
「ううむ、そこまで言われると確かに不安だな……」
ノアは腕組みをして悩む。
彼女が知っているか不明だが、歴代魔王の力は竜を凌駕している場合が多い。
魔物の突然変異という形で不規則に降臨する魔王は、基本的に世界最強なのだ。
さらには時代ごとに種族や能力が異なり、過去の討伐例が参考にならない。
まずは今代魔王の情報を少しでも多く集めるのが先決だった。
「ではレードはこれから何をするつもりなのだ?」
「魔王軍の情報を集めつつ、新しい仲間を探す。俺達と一緒に戦ってくれる人を見つけるんだ」
「必要なのか? 我とレードだけで十分だと思うぞ。足手まといが増えても困る」
「仲間はいた方がいい。軍隊みたいな大所帯は動きづらくなるが、最低でも四人パーティにしたい。やれることが大幅に増えるからな」
俺は勇者パーティの行動をなぞっている。
その自覚はあるものの、別にあえて違う道を辿ることもない。
仲間集めは合理的な判断なのだ。
意地になって避けるのは愚かと言えよう。
幻創魔術の特性上、発想のきっかけとなるような仲間が近くにいるとありがたいのもあった。
「何か特定の分野に秀でている人物がいいな。もちろん信頼できるのが絶対条件だ。旅の中でそういった仲間を探したい」
「ううむ、難しそうだな……本当に見つかるのか?」
「分からない。もしいなかったら俺が魔術で生み出すさ」
生物をまったく別の存在に変えられるのだ。
それを応用して理想の仲間を用意するのも可能だろう。
倫理的にあまり使いたくないが、魔王討伐の前では些事とも考えられる。
手段の一つとして脳裏に残しておこうと思う。
そんな考えを伝えると、ノアは引いた様子でぼやく。
「レードの術は本当に規格外だな」
「自分でもそう思っている。きっと魔王より危険な力だ」
俺は本心からの言葉を呟いた。




