第100話 魔王の定義
元勇者の死から五年。
またも世界は新たな局面に突入した。
一時期のように魔王を名乗る者は激減したが、ただ飽きられたわけではない。
世界規模で魔王狩りが始まり、安易に名乗る行為が死を意味するようになったのである。
誰が始めたのか正確には分からない。
きっと魔王の乱立を危惧した勢力が発端になったのだろう。
とにかく暗殺もどきの方法で次々と自称魔王が襲撃されて、やがてそれが世界的な運動となった。
誰もが魔王を憎悪する。
鬱憤晴らしに迫害されて、寄ってたかって暴力に晒す。
悪を叩き潰すための正義は、どれだけ穢れていようと構わないのだ。
相手は魔王なのだから、すべての行為は容認される。
あれだけ魔王を持て囃した世の中が手のひらを返した瞬間だった。
見栄や虚勢で魔王を自称する者は一気に減った。
何も利点がなく、理不尽に命を狙われるだけだからだ。
気軽な気分で使ってはいけない名になったのである。
正義の大義名分を得た人々は、新たな魔王を求めて目を光らせている。
この状況で魔王を名乗り続けるのは至難の業だった。
しかし、完全にいなくなることはなかった。
未だ魔王を続けたのは本来の意味から外れない者達――すなわち魔族の王としてふさわしい力を持つ存在である。
各地の魔王は徒党を組んで連合軍を結成した。
そして、魔王狩りをする勢力を虐殺を開始する。
彼らの目的はただ一つ。
世界に魔王の威光を知らしめることだ。
いくら紛い物とはいえ、魔王と名のつく者が蹂躙される展開は好まなかったのだろう。
連合軍と魔王狩りでは戦力差が歴然であった。
災害級の能力を持つのが魔王で、そんな存在が集まって一大勢力となっている。
紛い物を潰して喜ぶ奴らが勝てるはずもない。
人々に破滅的な被害が出て、国の体裁を失っていく地域もあった。
再び魔王が脅威に至ったのだ。
ちなみに闇の魔王ルイズはこの乱戦に参加していない。
支配地にて静観を貫いて、攻撃してきた勢力のみ迎撃するだけに留めていた。
ノアと俺は以前と同じく魔王を狙って暗殺をした。
この勢力図は良くないと思ったのだ。
発端はどうであれ、このままだと魔王がすべてを支配する時代が来てしまう。
人々の魔王狩りは容認できないものの、やはり抑止力が必要だろう。
俺達は連合軍に宣戦布告し、並行して魔王狩りをしていた人々に警告した。
そうして主犯だった狩りの過激派を処刑すると、穏健派と連携して終戦への道を模索するのであった。




