第10話 幻創は竜を翻弄する
射撃の連打を受けた鎧に亀裂が走る。
砕けて破片が散り、その衝撃で竜が後ずさって呻いた。
「ぐぬぅ、小癪な……ッ!」
堪らず竜は旋回する。
背中の翼を利用した回避移動だ。
幻創魔術で変貌させられなかった部位が、本来の力を発揮している。
(機動力が高いままだと厄介だな。集中的に潰すべきだ)
さっきは効かなかったが、弱らせた今なら結果も違うかもしれない。
俺は竜の翼を凝視する。
すると鱗が赤から灰色へと濁った。
艶やかな質感が失われて石に変わっていく。
「うおっ!?」
飛行能力を失った竜が岩壁に激突し、受け身も取れずに落下した。
背中を打ってから立ち上がるも、その姿は弱々しい。
剣は砕けて、盾と鎧は大きく破損していた。
翼は石となって重りと化している。
それらが原因で魔力の減少も顕著だった。
「奇怪な術だ……何をされたのか、分からぬ」
竜は忌々しそうに呟く。
本来の姿がどうなっているのか不明だが、きっと無視できない損傷になっているはずだ。
攻防共にままならないと思う。
しかも、竜からすれば幻創魔術の仕組みも分からないのだ。
自らが追い詰められている展開が意味不明だろう。
先ほどまでのように積極的に攻撃してこない点からも、どれほど警戒しているかが窺える。
俺は距離を取りながら弓を構える。
(いいぞ。この調子だ)
あとは慎重に攻撃を重ねるだけだ。
仮に攻撃を受けたとしても、即死しなければすぐに治せる。
竜を逃がさないように注意しながら、幻創魔術で確実に倒せばいい。
俺はいくつもの攻撃方法を脳内に展開し、その中のどれを採用するか吟味する。
一方、怒り狂う竜が全身から熱気を放出させた。
鎧全体が赤熱し、砕けた剣から炎が噴き出して刃を形成する。
石化した翼は砂のように崩れて背中から消えた。
地面を焦がす竜は一歩ずつ近づいてくる。
「――この我が、人間に負けるはずが、ない」
竜が追い詰められて本気を出した。
この局面から強くなれるのは、幻創魔術を凌駕している証拠だ。
姿は騎士のままなので、完全に術を突破されたわけではない。
それでも弱体化を過信すると痛い目を見そうだった。
「上等だ。やってやる」
俺は弓を一本の剣に変える。
禍々しい魔力を帯びた漆黒の武器だ。
膨大な力を消耗する代わりに、尋常でない切れ味を発揮する魔剣である。
本来は魔王軍の幹部が使う武器だった。
以前に見かけたそれを模倣した。
どれほどの脅威であるかは身を以て知っている。
こいつならば、たとえ竜だろうと斬ることができるだろう。
(剣術は素人同然だがなんとかなる。幻創魔術で動きを矯正すればいい)
思い込みが物理法則を超越する。
魔剣を握る俺は、真正面から竜に攻撃を仕掛けた。
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