酒池肉林の渇望と、退廃せる心
「どうして……」
血塗れになり、倒れた男性。
肌が所々露わとなった女性。
「鬼め……どうしてこんな事ができるんですか?」
女性が涙を目に浮かべ、叫び。
「勇者様……何故、この様な事を……?まさか強姦なんて……?!」
……くっ。
俺は、傍についてきていた娘を突き飛ばすと、家の外へと駆け出る。
「勇者ぁああ!おかあから奪った宝石を返しやがれ!」
「この食い逃げ犯め!」
「俺の恋人を殺しやがって!」
「お兄ちゃん……どうして……どうしてお父さんとお母さんを?!」
俺の顔を見るなり、次々と怨嗟の声が。
<称号『ピピ……戦闘力が1桁の雑魚ばかりですね。町ごと焼いちゃいますか?』を獲得しました[1]>
焼かない。
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希望は潰えた。
勇者はその欲望に身を委ねた。
もはや勇者には、酒池肉林の渇望と、退廃せる心しか無い。
その手は億万の罪に汚れ。
目を覚ませ、人類よ。
今や、座して悪鬼に怯える刻では無い。
石を手に持て。
包丁を握れ。
非服従の心だけが、未来へと希望を繋ぐのだ。
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おい、システム、何だこのフレーバーテキストは。
<称号『駄作ですよね』を獲得しました[1]>
<称号『火鷹の手に掛かれば、この街の皆を焼き尽くすのに、刹那の刻も必要としないのに』を獲得しました[1]>
駄作とかそういう話では無いし。
あと、俺そこまで強くないからな?
「ホダカ!」
「ホダカ殿!」
凄い形相で睨む、エメラルドとマリア姫。
いつもの優しい表情は影も形も無く。
叫びながらも、マリア姫は印を結び、大規模魔法を構築。
エメラルドは、致命的な威力の剣技を構え──
「ま……違うんだ!」
無駄とは理解しつつ……叫び……
とりあえず此処を離れなければ──
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時は遡る。
「永遠の幻ドゥーアー……それが次のターゲットか」
召喚とか名前に入っていれば、何をするか想像はついたが。
いや、召喚以外の部分が超強かったんだけど。
パイロを倒し、作戦会議中。
「ドゥーアーに関しては、国が遠い事もあり、情報を一切持っていません。マリアは何か知っていますか?」
エメラルドの問いに、
「妾も情報は皆無なのじゃ。かたじけない……」
しゅん、とマリア姫が項垂れる。
「次の国もやっぱり、壊滅的な被害にあっているのか?」
俺の問いに、エメラルドが、
「いえ。森の国エルフィアは、未だ栄えていますよ……王族は滅ぼされましたけど。千年以上前に民主主義に移行し、王族は森に隠れ住んでいたのですが……2年前、義勇軍により殺されました。理由は分かりませんが、恐らくは災厄が……」
「……扇動家に騙され云々って奴だな」
溜息をつく。
「ともかく、虎穴に入らずんば虎児を得ず……とにかく情報を集めようか。恐らく、エルフィアでも何かおかしな事が起きている筈……そこから、災厄への手掛かりが得られる筈だ」
怪しいのは、その扇動家か?
王族を滅ぼした義勇軍……そのあたりを突いてみるか……
後は、クラスメート達がいれば、そこから辿る事もできるかも知れないが。




