不審
カチ……カチ……
真夜中の25時。
ぞくり
不気味な……言い様の無い、悪寒。
そして……
「告げる……勇敢なる騎士よ、世界の守護者よ……我が剣、我が盾となりて、この世界を統べよ」
クローバー姫の言葉に。
周囲の者の手に槍が……もう片方の手に盾が……現われる。
俺、槍スキル持ってないんだけど。
<称号『剣スキルも持ってないから大丈夫ですよ』を獲得しました[1]>
大丈夫じゃねえよ。
ヒュンッ
凄い速度で、集っていた者達が散開する。
クローバー姫がこちらを見ると、
「皆さんは、配置に就きました。王都──人々に残された、最期の砦……周囲を巡回し、迫ってくる悪夢を駆除します。勇者様達も、遊撃を御願いします」
現実に比べれば微々たる力だが。
少しは力が戻ってきた。
純粋に武器と盾が現われただけではなく、身体能力も向上したようだ。
「ふむ。我には武器も盾も無いが、一部魔法が使えるようになったようだな」
キース君が呟く。
魔法……俺は使えなさそうだ。
人によって、付与された力は違うらしい。
俺は、クローバー姫に頷くと、外へと視線を向けた。
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ばしゅ
槍で黒いもやを一突き。
霧散、消失する。
これで、25匹……多いな。
悪夢の中でも雑魚っぽい奴等。
だが、放っておくと、この時間動けないで止まっている人々を……捕食する。
「翔べ!」
産み出した槍を投擲。
尖塔に上っていた、もやを貫く。
「聖なる矛は裁き給う──ホーリーブレイド!」
キース君の魔法。
白い光が、無数のもやを霧散させる。
エースアタッカーだな。
「戒めよ──ディヴァインリング!」
エメラルドの放った光の輪が、もやを拘束していく。
ずしん……
来た……あれが、夢魔。
一際大きい、漆黒の狼。
無数のもやを引き連れ。
クローバー姫の指示で、あまり王都からは離れない。
中型のもや、昆虫型のもや……ぷち強い悪夢を蹴散らし……なかなか、本体に届かない。
そして……
時間切れ。
夢魔は踵を返し。
悪夢達も、地面に溶けるように消えていく。
結局、倒した夢魔の数は0。
見た夢魔の数は4。
何でも、夢魔は数十体いるらしいが、全部が来る訳でもないらしい。
……うん、これ2週間で全滅させるとか、無理じゃね?
大分倒した筈なんだが……
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翌日は山へと遊びに行き。
夜、王都を護り。
翌日は海へと遊びに行き。
夜、王都を護り。
そして──
一週間が過ぎた。
「満喫しているな、相棒よ」
「ああ。修行もできなければ、状況打破の為の調査も何もできないからな……なら、遊ぶしかない」
それなりに楽しめてはいる。
この世界に来て、初めての休息。
だが……
夢魔の討伐数は未だ0。
悪夢の物量が膨大で、近づけないのだ。
王都から離れられないという制約も痛い。
だが。
不思議と、焦りは感じない。
クローバー姫は、時々、俺達に混じって遊ぶ事がある。
素直で、純真な良い娘だ。
クローバー姫が、大丈夫だと太鼓判を押している。
なら……きっと大丈夫だ。
そう思える。
「むう、やはり、信じられぬな」
キース君が呻く。
「どうした?」
「うむ……あのクローバー姫が、献身的に世界の為に尽くす……それが信じられぬのだ」
「王族の最後の1人になり、世界の危機が迫り、自身も危険な目に遭えば……意識も変わるんじゃ無いのか?」
「だが、クローバー姫はな……何というか……性根が、小者なのだ」
ちょ、酷い。




