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人間国宝

「どうしたのですか、ホダカ?」


エメラルドが首を傾げる。


「守岡、倉谷……何故、お前等はそんな行動に出た?誰かからそんな話を聞いたんだろ?」


「そうだ。沢山の人が消えた地……人々、そしてこの土地を慰める為、人形を作っている……それでも、1人では限界が有る……だから手伝って欲しい、と」


「そうよ。確かに、私達の手で、人々を……土地を慰められるなら……きっと、私達の生き様にも実りが有る……」


「邪魔をするなよ、組長。俺達はみんなと違い、あんたの胡散臭さには辟易していたんだ」


「そうよ、私達は知っているわ。貴方は……いつも上手く誤魔化しているだけ……本当の貴方は、無能なのよ」


守岡と倉谷は、超絶技巧の持ち主。

数々の後継者のいない伝統工芸に師事し、身につけた……この若さで人間国宝に認定された、本物の天才。

当然、俺のメッキなど、通じない。

何かにつけ、因縁をつけてくる。


本来、自分の負けを認め、さっさと引き下がりたいのだが。

残念ながら、そうも行かない事がある。


なので、売られた喧嘩を、適当に煙に巻いて、誤魔化して……こいつらからすれば、俺に負かされて、従わされた、という状況になるのだ。

極めて面倒。


「この虚け者共は、相棒の友人かね?」


「ああ、そうだ」


キースの問いに答える。


友人なのか?

知り合いではあるが。


そんな事を言うとややこしいので、言わないけど。


次の災厄。

死幻蝶ヴネディア。


名前以外、何も分からない。

エメラルドも、キース君も、情報は持っていなかった。


だが、俺は確信している。


「ともかく、馬の置物とやらは、王都に置いてこい。そして、複製を作るのも駄目だ」


「組長、お前は何時も唐突だな。いい加減にしろよ」

「そうよ。結果的に言う事に従って、後から肝が冷える思いをした事は数あれど……今回こそは、貴方の言う事には従わないわ!」


「いや、いつも相棒が結果的に正しいのなら、そろそろ学習して、大人しく従ったらどうかね?」

「状況は分からないけど、ホダカの言う通りにした方が良いと思うわ」


「何だよ、お前等……痛い目に遭いたいのか?悪いが……俺は強いぞ?」

「そうよ。今なら、組長には絶対に負けないんだから。いつもみたいな誤魔化しは通じ無い……魔力と魔力の純粋な戦い……それで雌雄をつけるのはどうかしら?」


埒が明かない。


「分かったよ。守岡、倉谷。魔法勝負で雌雄を決めよう。負けた方が、大人しく従う……それで良いな?何時も通りの、約束だ」


「「勿論!」」


「……相棒よ、あの華田とかいう奴よりも、数段劣る……本当に加減せねば、殺してしまうぞ?」


「大丈夫だ。今度は火でいくからな。氷魔法の様な事にはならないよ」


「ホダカ、待って下さい。相手に撃とうと思っている魔法を、あちらの建物に向けて撃って下さい」


手の内を晒せと?!


まあ、仕方が無いか。

対策されたら……もう1つ用意した魔法で……


「顕現せよ王の庭……ムスペルヘイム!」


ジュッ


近くにあった家が蒸発する。

周囲の地面が溶け、ふつふつと熱気を上げる。


「行くぞ」


「組長、俺が悪かった。確かに良く考えたら怪しいよな。言う通り、この馬は返してくる」

「組長、何時も通り男前よね!勿論、この馬は返させて貰うし、造るのもやめるわ!」


守岡と倉谷に向き直ると、何故か態度を豹変させた。

……ああ、冷静になって考えたら、自分達がおかしな事をしようとしていると気付いたらしい。

どう考えても怪しいもんな。


守岡、倉谷と別れ。


「ホダカ、何故あの2人を止めたのですか?それはまあ……怪しいとは思いましたが」


俺は溜息をつくと、


「恐らく……あいつらの行動、災厄の被害を増大させるか、もしくは、災厄への対抗手段入手を阻止する……ともかく、災厄を利する行為だからだ」


俺の言葉に、


「相棒よ。ヴネディアの情報を仕入れたのかね?」


キース君が尋ねる。


「何も知らないよ。ただ、さ。俺のクラスメートが何かをやっていれば……それは、災厄の手助けなんだ。それは間違いない」


俺が、吐き捨てる。


「ホダカ、何か根拠が有るのですか?」


根拠ならある。


「様式美、だよ」


「様式美……ですか?」


知識は無い。

だが、確信している。


クラスメートが何かやると……必ず、災厄を利する事になる。

それで、俺が後から呪詛を吐くのだ。


この国に起こった悲劇。

それに、馬の置物は、絶対に関与している。

間違い無い。


本当なら破壊したいが、それも危険な気がする。

ともかく、王都に積んでおく……それが次善の策だ。

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