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第四十三話

 大群が押し寄せてくるまでまだ猶予はあるのが救いだった。グラーフが上空から群れの様子を念話で逐一報告してくれているので、それに合わせて防御陣地の作成と人の配置に専念出来ている。

 しかし、数が数だけに凌ぎ切れるかどうかという不安と悪天候により、視界不良や足場の土がぬかるみで前衛が思うように戦えないのではないか、という懸念もあるが流石に天気まではどうしようもないのでなんとかなると思うしかない。


 「テスタと師匠は非難したのか?」

 「うん。テスタも私と一緒に行くって聞かなかったけど一緒に避難してきた小さい女の子が不安がって泣いちゃっててね。 テスタったら急にお姉さんぶってその子をあやし始めてね?なんだかあの子も成長したんだなって黙って見てたら、やっぱり私はここに残ってみんなが帰ってくるのを待ってるってさ」

 「そうか」


 豪雨の中を時折引き裂くように稲光が見え、ビリビリと音が響いてきていた。


 「皆、守る物がある。私はまだここに来て日が浅いがそれでもここで暮らす人々の温もりを知るには十分な時間が過ぎた。もはや私は以前の帝国貴族の私ではない。ここで暮らす人々の役に立てるのならどんな窮地も乗り越えてみせよう」


 決意の籠った目で正面の平原を見つめるクレスタの横顔を見ていたその時だった。


 『タケル、まもなく群れの先頭と接敵する!用意を頼む!』


 シルビアからの念話が届いた。俺は声を張り上げた。


 「戦闘準備ぃぃぃっ!」


 俺の声が周囲に響き、それを聞いたバリケードの内側にいる伝令が駆け出す。警戒を知らせる鐘も鳴り響く。


 『まずはワシが先手をとって数を減らす』


 念話でグラーフの声が聞こえたかと思うとかなり距離の離れた前方で強烈な爆発音が上がりそれを見た俺は身震いした。

 ふと、そんな俺の肩を左右から叩くモデナとクレスタ。


 「心配するな、俺たちが居る」

 「そうよ、多少は戦闘になれてる私たちがあんたを守るから」


 クレスタはともかく、女であるモデナにまで守られるというのが正直情けない事この上なかったが、現実モデナにすら敵わないのだから俺の無能さが浮き彫りになり嫌になる。

 そんな自己嫌悪に浸っていると、グラーフの攻撃による爆発の間隔が次第に短くなっていき、少しずつ前衛の人たちの勇ましい声が聞こえてくるようになった。


 「あれだけの爆発でも削りきれない数なのか……」


 戦いの行く末がどうなるかは降り続ける豪雨が、いつ止むのかと同じくらい先の見えない物に感じた。

最近カレーに合うのはウーロン茶という定番な組み合わせの他にビールも案外合う事に気づいて一人で楽しんでます。

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