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第十四話

 人数がだいぶ増えたので、昨日の夜よりも少し離れたところにみんなの馬を隠してから、シルビアとジギルと俺の三人だけで馬で向かい、昨日と同じく手形を老人に見せ屋敷に入り会場へと歩き出した。


 「で、合図はどのタイミングでやるんだ?」


 ジギルがシルビアに問う。


 「そうだな昨日のように異世界人の競売が始まってからかな。そうしたら今日もいるけどあの赤い髪の女を魔法弾で打ち抜く、もちろん加減してね。そこで騒ぎになったところで打ち合わせの通りに、私が向かってくる敵を排除、ジギルは主催者の捕縛そしてタケルは捕まっている異世界人の救出にそれぞれ集中だな」


 シルビアは、淡々と話しているように見えて少し気持ちが高ぶっているように感じた。


 「各自最善を尽くそう。 健闘を」


 そう言ってシルビアは拳を俺たちに向けてきた。


 「了解」

 「おうよ」


 それに俺とジギルはそれぞれ答えながら拳をぶつけた。

 それから数分後赤髪の女がステージに上がり商品である異世界人を紹介し始めたところでシルビアが仕掛け、赤髪の女は脚を撃たれて倒れ込む。それをきっかけに悲鳴が飛び交い会場は一気に混乱した。

 

 そして、ジギルはドアを守ろうとする警備兵を殴り飛ばし、屋敷の裏へと向かっていった。


 「これでまず、合図はオッケーだな。貴方は言葉は話せますか」


 俺は、シルビアに解放された異世界人に声をかける。



 「はい、大丈夫です。 助けていただき感謝します」


 男性と、会話が成り立つことに安心しつつ油断せず注意を払いながら、ドアを開け保管部屋に入る。



 「感謝するのはまだ早いです。捕まっている人たち全員を、助けて無事に俺たちの街まで連れて行くまで油断しないでください。そんで体調に問題がなければ手を貸してもらいたいんですが」

 「もちろんです。 私の他にあと十人くらいはいたはずです」


 保管部屋に入ると獣臭いのが気になり、並んでいる檻を見ていくと俺が居た世界では見たことのない赤黒い体毛をした狼のような獣がいて、こちらを威嚇して唸っていた。


 「これ・・・・・・魔物ってやつ?」

 「そうみたいです、私も似たような檻に入れられて見回りの人たちが話していました」

 「そうなんですか・・・・・・魔物と人を同じ扱いってか本当にクソだな」


 俺は怒りを露わに吐き捨てる。


 そこから数歩進むと、別の檻がありその中に男性がいっていた通り十人くらいの異世界人が、同じようなボロ切れのような布を一枚来ているだけの格好で、しゃがみ込んだり俯いて座り込んでいたりと様々な様子で憔悴しているようだった。



 「あのみなさん、俺の言葉分かりますか!? 助けにきました!」


 俺は声を張り上げて励ますように声をかける。


 「体調が悪くて思うように動けないという人はいますか?」

 「一人、体が弱っている子がいるんだ!頼む見捨てないでくれ!」


 檻の中で一人の初老の男性が、俺に見えるように小さな小学生くらいの女の子を手を引きながら教えてくれた。


 「わかりました、大丈夫です。俺だけじゃなくて他にも沢山の応援が、こちらに向かってます絶対全員無事に助けます! 安心してください」


 俺はそういって持ってきた、ナイフでカギを無理やり壊し檻の扉を開けてやると、ぞろぞろと捕えられていた人たちが出てくる。


 「ありがとう! 本当にありがとう!!」

 「もう死ぬしかないと思っていた。 助けてくれてありがとう!」


 檻から出る時、それぞれ感謝の言葉をかけてくれるのがくすぐったい気持ちになったが、まだ街に戻るまでは気を抜くわけにはいかない。


 「捕えられていた人はここにいる皆さんで全員ってことで良いんですよね? もしそうなら今度はここからまず脱出しましょう」

 「これでここに閉じ込められている人たちは全員で間違いないです」


 最初に助けた男性が、答えてくれたので俺はそれに頷き体が弱っていると言っていた女の子をおんぶして、元来た通路を戻り扉を開けると丁度応援に来てくれた街の人たちと鉢合わせした。


 「おう、タケル!無事か?」

 「はい、捕まっていた人たちはこれで全員です。ここを離れましょう!」

 「よし、お前ら周囲警戒しつつ離脱だ!」


 さっきまでいた赤髪の女とシルビアの姿は無く、男たちの死体だけがあり炎が激しくなりつつある会場を俺たちは可能な限りの速度で移動して、馬の隠し場所まで駆けて行った。屋敷のあちこちに火が燃え移っており、逃げ惑う警備の連中が見えたがシルビアの姿は見つける事が出来なかった。


 「シルビアとジギルは首尾よくやってるかな……」


 それから数分後、ジギルの合図と俺たちが近づいている事を確認したラフィールの魔術によって、屋敷は宣言通り跡形も無く吹き飛び瓦礫の山になった。合流先の馬の隠し場所までたどり着いた俺たちを待っていたのは、大暴れしたはずなのに疲労などを感じさせないシルビアと最低限の止血処理をされた上で、縄で拘束されている赤髪の女と抵抗する意思がないのか、ただ突っ立っているのだけの手形配りをしていたあの爺さんだった。

 その光景を見て、頭に血が上るが女の子をおぶっているのでそれ以上どうすることも出来ずに居る、とジギルも無事に主催者と思しきかなり身なりの良いおっさんを縛りあげてやってきた。


 「さて、役者は揃ったし色々聞きたいところだが、優先すべきはこの人たちを我々の街に連れていき体に異常が無いか検査することと十分な食事と睡眠を与える事だ」


 シルビアはゆっくりと方針を離す。


 「タケル、一刻も早くこの者たちから色々と聞きたいだろうが堪えてくれ」

 「分かってる。夜も遅いし、いくらなんでもこんな格好の人たちを野宿させるわけにはいかないしね」


 俺は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせるとおぶった女の子を下して頭を撫でてやると、女の子は下を向いてしまったが俺のローブの裾をきゅっと掴んでいるので、嫌われてしまったわけではないらしい。


「しゃあ!つうわけでさっさと帰って遅めの飯にしようぜ!」


 ジギルはある程度抑えたつもりだろうが、それでも十分にデカい声にみんなで呆れながらそれぞれの馬に乗り、もってきていた荷車に異世界人の人たちを乗せ、体を冷やさないように一緒に持ってきていた毛布を全員に行き渡ったのを確認して、俺たちは街へ駆け出した。


少しでも楽しいと思ってくれる人がいてくれたらうれしいです。

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