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青春の底を走る  作者: タカキ ショウゴ
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中学卒業

 現代では誰にでもある高校時代、みんながみんな楽しく学生生活を送っているわけではない。

幸せはない人にはないのだ。


 桜がまだ咲き掛けの平成最後の3月僕は昭和の初期から平成の初めにかけて栄えた都市郊外の中学校を卒業した。

最後のホームルームで担任が「皆さんは竹のようにしなやかなんです。だからこれから色々なことがあると思いますが今までの経験をバネにして飛び越えてゆけると思います。」こう言い放った。

最後の最後保健室登校だったぼくには量産型の大人がよく口にするたわごとだと感じ言葉たちを右から左へとスライドさせる。

最後に一人一言ずつ全員の前でしゃべらされる時間があった。「皆さんお元気で。」一言そう言い放つと保護者、同級生を含めた若干の微笑が全体から見受けられた。「ウケる」そう確信した僕の心が瞬時に作り出した7文字だった。

義務教育最後のホームルームが終わると、僕は一番で昇降口えと向かい一目散に在校生、教職員と在校生が作った花道を夜逃げする者のごとく抜けようと考えたがその考えは甘く教頭、校長、一年次の担任のところで検問のように止められた。「がんばれよ」どの先生もみんな同じ言葉を手のひらを握りしめながら発してきた。その花道の奥には一番お世話になったであろう養護教諭の先生がいたが僕は、よくわからない悲しみと後ろめたさで不道徳の王道を行くスルーをしてしまった。前から分かっているが、近所の人に挨拶もバカほどにすらできない人間だからという諦めが僕の脳裏に走っていた。

二番目三番目とクラスで仲の良かった話の合う者達が僕の周りに少しずつたまりだしていた。スクールカーストの頂点に立つ者ほど後から後から遅く出で来る。どの生物にも食物連鎖があって中学生にもあるのだとこの頃の僕は若干十五歳にして気ずき始めていた。やがて溶岩ドームのように固まった生徒たちは保護者に買い与えられたばかりの文明の利器を手に部活の仲間、クラスメイト、先生などと過去の産物にしかなりえないデジタルデータを作っていく。

僕は恥ずかしながらも所属していた剣道部の最後の集まりに参加した。後輩たちが一列に並んで「今までありがとうございました。」寸分の狂いもなく全員から同時に発せられた。文字が聖書のように詰まった色紙と後数日もすればしぼみ、枯れるだろと思われる花を全員もらい、保護者たちの撮影会が始まる。普段から写真写りの悪い癖をして、皮肉にも死んだ魚のような眼をしてしまった。これから始まる地獄や恐怖、苦しみに飲み込まれていくことを僕も周りの人間もまだ知らない。



 昔ある人が「義務教育を終えたら余生」といったそうですが、ほんとそうだと思います。

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