強いやつは空から。
王都へ入るには指定されたゲートを通って簡単なチェックを受ける必要がある。ジーク曰く、悪意とかの類いを検知する仕組みだそうだ。悪い人は王都に入れないって事か。
「王都には防壁もあるからな。上に監視してる兵士がいるから乗り換えられる心配もない。」
高さがあって見張りもいるとなると簡単には侵入出来ないだろうな。防壁を眺めながら空を見上げていると上空に鳥っぽいものを発見した。
「ジークさん、あれってなんでしょうか。」
示した方向を確認したジークに、アレは近づいてくれば分かるぞ。と、勿体ぶられた。アリシアは少し驚いたような顔をしてる。近づいてくるにつれて順番待ちしている人も空の物体に気づいてザワザワしてる。だんだんハッキリと確認できるようになってきた。
「燃えてる鳥?」
炎で出来た鳥みたいな、、、いや。人から炎の翼が生えているのか!
「あれが″華炎のアリス″。リエルよりも幼い頃に冒険者になったSランクの冒険者だ。」
二つ名がちょっと恥ずかしく思えるのはまだ異世界に慣れてないからだろう。アリスはゴスロリファッションで炎の羽を羽ばたかせながら地上へ降り立った。
「ちなみに冒険者はFから順にAランクまで評価があって、実力で分けられているわ。なかでもランク外の実力者にはSランクの評価が与えられる。更に上だとSSとかも存在するって噂ねよ。」
アリシアが冒険者ランクについて教えてくれる。つまり目の前にいるのは最強のゴスロリってことか。こちらをチラ見したアリスはスタスタと歩いていく。行列待ちの人達からの視線を気にもせず、ゲートへと進んでいく。門番の兵士が緊張した面持ちで対応した後アリスは王都へと消えていった。
「アリスは王都を拠点にしてるから見かけることは多いんだ。しかし、いつ出会ってもSランクは纏ってるオーラが違うというか、別格だな。」
感嘆としながらジークが話す。確かに威圧感というか圧迫感というか、ヒシヒシと伝わってくるものがあったな。チラッと見られた時なんかビクッてなった。
「よおし!俺もSランク目指して頑張るぞ!」
ジークが僕の頭をガシガシと撫でつける。強さには興味無いけど死ぬのは嫌だ。頑張って死なない程度に強くなって異世界を堪能してやるぞ!と、心の中で決意を新たにしてるとゲートをくぐる順番が来た。
「冒険者に子供か。よし、一人ずつゲートを通過してくれ。」
悪意なんかにゲートは反応するそうだが特に問題無く通過できた。腕に巻きつけたリリーが心配だったけど人を襲う意識はないからか反応は無かった。
ゲートを通過して王都の門をくぐる。
そこには活気に溢れる街が広がっていた。大きな道が噴水の見える広場へ繋がっており、道端には屋台が多くみられる。
「中央の噴水を奥に進めば貴族街へ入って行く。それを更に進むと王城へ行くことが出来る。もちろん簡単には入れないけどな。」
日本のお城では無く、西洋のお城に近い印象だ。まあ行くことは無いだろうな。ジークの先導に従って街中を進んで行く。横に並ぶアリシアからはお店の案内を受ける。
「あそこは服屋さんで、あっちは防具を売ってるお店。アクセサリーのお店とマジックアイテムのお店が分かりにくいんだけど何となく高級っぽい方がアクセサリー屋さんね。」
「色んなお店があるんですね。あのお店は何ですか?ステキな夢をどうぞ…」
「あ、あのお店はリエルには早いわね。き、気になるならジークに聞いてね。」
なるほど。そうゆうお店もあるんだな。感心していると先へ進んでいたジークが立ち止まる。
「着いたぞ。ここが王都の冒険者ギルドだ。」
ほかのお店と比べるとかなり大きい建物だ。入り口はオープンになっており中では武装した人達がカウンターで手続きをしたり、テーブルでご飯を食べてる人もいた。
「さて、サクッとリエルの登録をやってしまおう。この後は剣を見に行かないといけないからな。」
「剣の購入もいっしょに来ていただけるんですか?」
「ジークは武器が好きだからね。半分は自分のためね。」
アリシアが嬉しそうにそう答えた。王都まで案内してもらって武器選びまで一緒に来てもらえるなんて。ひたすら感謝だな。本当にありがたい。
「ありがとうございます。では、さっそく登録して来ます!」
僕は足早に空いてるカウンターへと向かった。