冒険者の色々。
次の村で一晩過ごした僕たちは次の日、パンや少しの食料を買って野営に備える。いよいよ王都へ向かうが徒歩だと2日ほど掛かる距離だそうだ。
「ここからは山越えだ。強くはないが魔物も出るから気を引き締めて行くぞ。」
そういってジークとアリシアは僕を間に挟んだ形で山道を進む。山にはどんな魔物が出てくるのだろうか。魔物と言えばアリシアが倒そうとしたリリー(フォレストピード)も魔物だったらしい。魔物って人に懐くんだな。
「リエル、あの大きい石はマウンテンロックっていう魔物だ。分かりにくいが呼吸しているから微妙に動いてるのが見極めるコツだな。」
「見た目は完全にただの石ですね。」
感想をこぼすと同時にジークが剣で倒していた。実はジークって凄い剣士なんだろうか。少なくとも僕はあんなに速く動けない。ジークの動きに見惚れていると後ろからアリシアが解説してくれる。
「マウンテンロックはとにかく硬いのが厄介だけどジークは【両断】のスキルを持ってるからね。」
どうやらジークは優秀なスキルを持っているようだ。ちなみに技能の事を冒険者達はスキルと呼ぶそうだ。
「こいつは大人しいけど不意に破裂するんだ。破片が飛んでくると痛いし、致命傷になり兼ねないから見つけたら倒しておくのがオススメだよ。」
と言っても外側はかなりの硬さがあるから並のダメージでは倒せないそうだ。ジークは解説しながらマウンテンロックの内側から宝石のようなものを取り出す。
「魔物から採れる魔石は討伐の証明になる。ギルドでお金と交換できるし、魔物の一部は素材として買い取ってくれるものもある。」
マウンテンロックは殆どが石で出来ているので魔石しか需要がないそうだ。魔石の色は綺麗な琥珀色で属性によって色が変わるそうだ。
「じゃぁ先へ進もうか。今日は山頂を越えて少し進んだ所で野営にしよう。」
野営までの間にジークはマウンテンロック3体と、マウンテンマイマイ2体を討伐していた。マウンテンマイマイはデカいカタツムリだな。麻痺毒を持ってるけどノロノロと動くから危険度は低いそうだ。
「マウンテンマイマイはちゃんと処理すれば食べれるのよ。でも、塩をかけると溶けちゃうから要注意ね。」
慣れた様子でアリシアが晩ご飯の準備を進めている。前世でいうエスカルゴだな。
「見た目は微妙だけど味は良いぞ。」
ジークが剣の手入れをしながら話す。いかにも冒険者って感じだな。
「ところでリエルって魔法は得意?」
そういえば話してなかったかな。僕は魔素保有量がゼロなのです。
「お。なら剣士志望か?そうなると俺と一緒だな。王都に行ったらまずは剣を選ばないとな!」
ジークが嬉しそうに答える。確かに武器を持ってないな。冒険者登録を済ませたらまずは武器を買いに行こう。お金はそこそこ両親が持たせてくれているので有り難く使わせていただく。自分で稼げるようになれば返しに行くか。
「さぁて!ご飯の準備が出来たよ。マイマイステーキとマイマイスープ、おかわりもあるからね!」
初めての野営は見張りをジークとアリシアの二人でしてくれたから、焚き火の音をBGMに僕はぐっすりと眠る事ができた。