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犯人と決意の夜。

長くなってしまいました。



「うう…。」



リリーと共に穴を覗くと女性は呻いていた。咄嗟に落とし穴を作ったけど少し深く作り過ぎたかもしれない。もう一人の男性も意識がある事を確認して、とりあえず村へ大人を呼びに行くことにした。







「いやー、助かりました。まさか蜂にやられるとは。」



二人は村へ運び込まれて手当を受けると日が沈みかけた頃に目を覚ました。蜂の毒は命を奪うまでは無く、しっかりと処置をされた今では刺された所が少し腫れた程度で収まっていた。



「あなたが無事でよかったわ。でも、どうやってフォレストピードから逃げたの?」



女性の方も大きな怪我はなく、落ち着いた様子で僕へ訪ねて来た。ちなみにフォレストピードとはリリーのことだ。僕の代わりに父さんが答える。


「フォレストピードは害意が無ければ人を襲うことは無いからな。ハチミツを堪能した後は森へ帰っていったのだろう。肉食でも無いしな。」


女性はなるほど。と納得した様子で頷いていた。村の人達へはもちろん父さんにもリリーの事は黙っている。女性は他にも疑問があったようだが村長さんが先に質問をした。


「して、お二人はどうしてあの森へ?」


森へ来る冒険者というのは稀で、村へ訪れる冒険者は旅の途中に立ち寄ったというのが殆どだ。


「恥ずかしい話ですが実は…」


二人は見た目の通り冒険者だったようで森へ来た理由を語り出した。なんでも、この森には大きな巨人が住んでいると言うのだ。その巨人を仕留めて冒険者としての株をあげようと森へやってきたそうだ。


「王都から来たものの巨人など全く見当たらず。さすがに手ぶらでは帰れないのでハチミツでも採取して帰ろうとして、この有様です。」



「巨人?村ではそんな噂話を聞いたことないが…リエルは聞いたことあるか?」



不意に話しを振られるが聞いた事は無いと首を横に振る。、、、聞いた事は無いけど心当たりならありますが。







この世界へ転生してから2年。魔法に触れる機会は多かった。日常の至るところで魔法が使われており、元地球人としては興味津々で特別な技能を授けられた身としては期待に胸が踊っていた。ある日、そんな気持ちを裏切るように告げられたのは。



「魔素保有量ゼロ?あらあら。リエルは魔法の適性が無いのね。」


「きっと父さんに似たんだな!はっはっは!」



魔法を使うには体内の魔素を使用する。2歳の誕生日におこなった僕の魔素量計測の結果はゼロだった。



「大丈夫。魔法が苦手でも武器の扱いを覚えれば立派な騎士や冒険者を目指せるぞ!」



父さんは剣の腕でそこそこ有名になり現在は村の守りを務めている。でも、せっかく魔法の世界に生まれたんだから魔法が使えるようになりたい。



「そうね…残念・・だけど魔法は諦めた方がよさそうね。」



残念。もしかして転生前に技能をくれたヤツが言ってた残念ってこれの事だったのか?いやいや、魔法の才能が無いと言われてハイそうですかと諦めるつもりはないぞ。


それからは大人が使う魔法を観察したり、村の大人達に魔法の事を聞いてまわった。前世の記憶を交えて考えていくと魔法の発動に対して疑問が出てきた。



「体内の魔素じゃなく大気中の魔素で魔法が使えないんだろうか?」



聞けば魔物の発生は大気中に含まれる魔素が原因だとか。大気中の魔素を利用すれば保有魔素なんぞ関係なく魔法を使えるのでは?その仮説のもと、大気中の魔素をイメージして魔法を使えないか試行錯誤を繰り返した。



結論、使えた。



4歳になったころ。川で石を使って自分だけの池を作っていた時だ。欲しい形の石をイメージして探していると必ず地面に転がっていた。あまりにもイメージ通りの石ばかりが見つかるのでおかしいと疑った結果、魔法だと気づいた。


そこからは魔法で出来る事と出来ない事をひたすら検証していった。どうやら火や水、風に関する魔法は全くダメで、土にまつわる魔法だけが発動出来るようだ。


6歳になる前には繊細なコントロールも覚えて地面からダビデ像を作り出すことぐらい造作もない程になっていた。その頃だったか。大きさにこだわりだしたのは。


それがいけなかった。








「まさかアレがみられていたとはなぁ。」



家の窓から星空を見上げる。月の色は異世界らしく青く煌めいている。魔法の研究も楽しいがやっぱり異世界を見て回りたい。冒険者として活動する人達の話を聞くたびにその気持ちが大きくなる。物思いに更けていると後ろから声をかけられた。



「リエルはやっぱり冒険者になりたいのかい?」



隣に来た父さんが窓枠にコップを置きながら問いかける。月明かりに照らされた顔は妙に渋い。



「いつか大人になったらね!」



前世と比べるとこちらの世界の成人年齢は低いが、それでも6歳だとまだまだ子供だ。



「リエルは歳の割に落ち着いていて賢い。それに剣の腕だって立派なもんだ。親バカなんかじゃなくて剣士としての意見だよ。」



剣の練習は魔法の才能が無いと発覚した2歳のころから父さんと毎日続けてきた。



「これは提案なんだけど王都で暮らしてみないか?冒険者としてね。」



聞けば父さんのお姉さんが王都で魔法にまつわるお店を営んでいるそうだ。そこへ下宿して冒険者をやってみないかとの事だ。



「この村だとリエルの才能を持て余してしまう気がしてね。森も探検し尽くしただろう?」



森の奥まで探っていたのがバレてたようだ。それはともかく僕の人生について父さんも色々と考えてくれてたんだな。こっちに来てから愛情を受けっぱなしで良い両親の元に生まれたなとつくづく思う。



「父さんや母さんは離れてしまうのが悲しいけれど、リエルの事を考えるとこれがイチバンかなってね。一晩考えて明日の朝に答えを聞かせてくれるかい?」


「そっか。うん、考えてみるね。」



もちろん答えはすでに決まっている。

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