死亡理由。
「あ、残念ながらハズレです。」
死後の世界でそう告げられ、意識が再び遠くなる。
数時間前。
「近づくんじゃねぇ!近づくとコイツを撃つぞ!」
まさに俺の命は風前のともし火だ。給料日にウハウハで銀行に訪れたものの銀行強盗と思しき奴らに捕まり、こうして人質となってしまった。
「君は完全に包囲されている。ムダな抵抗はやめなさい!」
警察の方が説得を試みているが果たして、それで諦める強盗は過去にいたのだろうか。銃口を頭に突き付けられながらも、あまりの非日常感に現実味が湧かず余計な事ばかりを考えてしまう。
(もしかしてモ◯タリングの番組企画とか?)
思考がポジティブな方へ流れだした時だった。
「うぉー!その人を離せー!」
ガタイのいい正義感溢れるイケメンが強盗犯に向けてタックルをかまして来た。焦る強盗犯だったが咄嗟の事にも関わらず律儀に有言実行をかました。
ドーンッ!
そう。引き金を引いたのだ。
目を覚ました俺は何となく死んだことを理解した後に、前にいる人(?)を眺めた。そこには美を象徴するかの如く美しい、天使の羽を携えた女性が立っていた。
「ようこそ。ここは死後の世界です。残念ながらあなたは亡くなってしまいました。しかし寿命までに外的要因で亡くなった方には細やかながらギフトがございます。」
トントン拍子で話が進んでいくな。えらく事務的に話をされたけど、とりあえず悪い話ではないようだな。
「まず前世と同じく人へ生まれることを約束致します。そして前世の記憶や技能を少しですが来世へ継承させて頂きます。さらに、特別な儀式によってあなただけのオリジナルな技能を付与させて頂きます。」
おお。いい事尽くめだな。殺されてプレイ中のゲームがクリア出来なくなって悶々としていたが捨てる神あればなんとやら。
「あなたが来世を過ごす星は数多の星の中でも特に魔法の技能が優れております。儀式で付与される技能も魔法に関するものとなるでしょう。」
なるほど。つまりこれは異世界転生って事になるのかな?今の俺のまま来世へ生まれ変わるって訳では無さそうだがワクワクするな。
「では、時間もありませんので早速儀式へと移らせていただきますね。私の手を握っていただけますか?」
前世では女性に触れ合う機会がなかったからな。何気に緊張してしまうな。めちゃくちゃ美人だし。
「…はい。これであなたの魂に技能が付与されました。」
もう終わったのか?なんか呆気ないというか…
「それでは時間になりましたので、魂の転送をさせて頂きます。」
ところで、技能って何が付与されたんだろう。確認する方法とか無いんだろうか。
「あなたに付与された技能ですか?時間が無いんですけど…。確認しますね。」
なんかメンドくさそうな顔された。美人なだけに妙に傷つくな。俺が悪いみたいじゃないか。
「あ、残念ながらハズレです。」
その声を最後に俺の意識が遠のいていった。