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駄文集

ダンボール箱と青い空

作者: 川柳えむ
掲載日:2015/05/23

 私はダンボールの箱の中にいた。

 狭い――狭いダンボール箱の中。

 いつのまにか身動きがとれなくなってた。

 ときおり覗くのは、閉じた箱の隙間から射し込む陽の光。

 どこまでもどこまでも揺られて、私はただぼーっとしていた。


 ――身動きがとれなくなったのは、いつだろう?


 それは、遠い昔だったような気もするし、つい最近だった気もする。

 視界が開けていて、ただ、私の前には広く長い道とそれを照らす光が存在していた。

 見えない明日に、うきうきどきどきして、それでも、ときおり怯えていたりもしたけれど。

 幸せすぎてわからなかったくらいの。自分の幸せ――


 ガタン!


 ダンボール箱が大きく揺れる。

 ここは、外の様子が見えなくて、怖い。


 出して。出して――


 ダンボールの壁を掻き毟る。

 それは、本当にそこにあるのかないのか、よくわからない。手応えがない。

 大きな揺れと、流れてくるものはかすかな音楽。

 あぁ、懐かしい……。懐かしい音楽、懐かしい日々。

 目を閉じて、日々を思い返した。


 私を捕らえているものは、ダンボール箱――? それとも――


 暗がりばかりのダンボール箱。

 静かに目を閉じた。

 さらなる暗闇に、少しだけ安堵した。


 私を捕らえる暗闇は、私自身?


 それならば、私はこのまま目を閉じていたい。

 暗闇に身を投じていたい。

 このダンボール箱が私自身なら、これは、私の心だから。

 心を護る、唯一の殻だから。


 ――ダンボール箱の天井の向こう側には、青空が広がっているのかな?


 そうだと気づいていても、私はまだ出られない。

 それは怯えているから。


 ――このままどこへ行くのだろう?


 突然、どこかへ放り出された。

 大きく揺れたダンボール箱。

 ひっくり返って体をしこたま打ちつける。


 ここはどこ?

 私はこのまま死ぬのだろうか?


 蓋を開ける勇気はない。

 死ぬのなら、このままなにも知らないまま死にたい。


 ガサッ!


 ダンボール箱の蓋が、誰かの手によって開けられようとしていた。

 怯えた私は、その腕を力いっぱい掴んだ。

 それでもその腕の力には敵わなくて、蓋は開けられてしまった。ダンボール箱の天井はなくなった。

 ダンボールの暗闇ばかり目が慣れていた私には、一瞬、眩しすぎてわからなかったんだ。


 過ぎ去った日々を、それからの怯えすぎていた日々を――


 開いたダンボール箱の外側。

 それは、きっと、明るい世界。


 だって、開いたダンボール箱の向こう側。最初に目に入ったそれは――


 遠くて高い、青い空だったんだ。


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