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真っ直ぐな少年

作者: 島波 奏楽

 少年は、小さいころから野球一筋で生きてきた。三歳のころから地元の野球チームに入り、ひたすらに練習してきた。日が暮れても、家の駐車スペースで素振りをしていた。マメも幾度となくでき、幾度となく潰れた。しかし、少年はひたすらにバットを振り続けた。

 少年のポジションはピッチャーだった。だから、素振りのほかにも、様々な投球練習を積み重ねた。そして、ついにチームの不動のエースとなった。

 中学に入っても、少年は野球部に入り、人一倍練習した。また、元々積み重ねてきた練習の成果か、一年生のうちからレギュラーとしてマウンドに上がり、三振の山を築いた。中学校最後の夏には、全国優勝も果たした。


 しかし、高校に入って最初のゴールデンウィークに彼は交通事故にあい、利き肩である左肩が動かなくなってしまった。彼は医師から「もう野球はできないだろう」と言われ、絶望の淵に立たされた。もう野球ができないと思うと、自分が消えてしまいそうだった。しかし、見舞いに来た顧問の先生に「俺はいつまでもお前を待っている。」と声をかけられ、彼は復活することを決意した。

 彼は、怪我が治るとすぐにリハビリを始めた。希望をくれた先生の想いに応えたかったのだ。彼は来る日も来る日もリハビリに励んだ。そしてついに、彼はキャッチボールができるようになった。気づけば、高校二年生の夏が終わろうとしていた。

 高校最後の夏、彼は地方予選の決勝戦にいた。しかし、以前のように背番号一を付けることはできなかった。それでも彼は、ベンチに入るまでに復活した。試合は八回が終わって、一点差でのリード。その時、投手の交代を告げるアナウンスが鳴り響いた。

「ピッチャー、変わりまして――。」


 告げられた名前を聞いた瞬間、彼は涙を零し、長年使ってきたグローブを手に取った。



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