説明回
改めて、会話の節々からわたしが組織に入ることになってしまった理由を把握する。どうも一般人の範疇外に分類されてしまったみたいだった。
一、魔法少女まくあが侵入してきた時、異常事態であることを検知し、一般人が入らないようにする結界を張ったのに何食わぬ顔で入ってきた。
一、そんでもって、魔法少女まくあの放った攻撃や八尋君が出す手のひらの光が見えたから。
色々ツッコミどころがあるが、意外とこの展開は好都合だと思い至った。組織を利用して魔法少女まくあを止めればいいし、一方で雪乃が殺されないようにどうにかできるかもしれない。わたしは自分の思惑でこのビッグウェーブに乗ることにした。
「まぁ、わたしからもよろしくね。八尋君、伊藤君」
公園の時計の短針は2の文字を指していた。神社の状況確認や組織の説明は改めて明日行うと八尋君が宣言することで解散の流れになった。育ち盛りの中学二年生にとって睡眠はとても大事なのである。
「じゃあ、バイバイ」なんて言葉で手をひらひら振って踵を返すと、その両脇を八尋春樹と伊藤タクミで固められる。
「こんな時間だし送るよ」
「大丈夫だよ。日本の夜は平和だし」
「送る」
「三室さん、仲間になったんだし、遠慮は不要だよ」
「はい……」
二人はジェントルメンである。
次の日の雪乃は全くの普通だった。魔法少女まくあのことはおくびにも出さず、変化もない。記憶の中の三室やえ(わたし)なんて、空が飛べるようになったってだけで一週間は浮ついていたのにね。昨日のわたしはずいぶん挙動不審だったようだけど、悩みのなくなったわたしも普通に接することができた。
──雪乃の手首にあるブレスレットは、石が一つだけ空色に変わっていた。
放課後、雪乃は塾がないみたいだった。わたしの手首を両手で掴んで言った。
「やえちゃん、この後一緒に遊ぼう」
「えっと」
視界の隅に八尋君と伊藤君の姿が映っている。わたしを見ていないが、意識しているぞと八尋君の背中が語っている。
「ごめん、今日は用事があるんだ。また遊ぼう」
「どんな用事なの?」
あなたが昨日壊した神社の視察と、そのおかげで入ることになった組織の説明を受けるんだよ。
「ちょっと、親戚が遊びにくることになって、夜までお守りしないといけないんだよ」ぺろっと嘘が出た。
「私一緒にお世話するよ」手強い。
「人見知りする子だから……ごめんね」
「そっか」
しょんぼりしながら雪乃はわたしの手を離してくれた。
「じゃあ、またね」
中学生にもなると惚れた腫れたが何かと話題になりやすいお年頃になる。特に伊藤タクミみたいな美形はもう二人きりになるだけでNGだ。だから、待ち合わせは戦いの舞台となった街の外れの神社になった。元々寂れているというのもあるが、まだ結界が作動しているらしく、一般人の姿はない。
最後に到着したのは何故か一番最初に教室を後にしたわたしで、八尋春樹と伊藤タクミが壁にもたれかかって待っていた。
「それで、被害状況はどうかな」
見たところぼろぼろである。御神体の楠はみまかわれたと言われても頷いてしまう外観だ。境内もガタガタで、本殿も半分ほど瓦解している。八尋君は手に持っている機械をわたしに差し出した。液晶部分には『000001.423』とあってとてもガイガーカウンターぽい。
「気が千分の一に減った。もはやここは聖域たりえない」
聖域という言葉に失笑しかけ、表情筋を引き締めた。『気』というのは、おそらくマナのことだろう。ガイガーカウンターぽいものは、マナの濃度を表示するものだ。これが進化して魔法少女まくあのバイザーになるに違いない。
「三室さんには説明したほうがいいね。気って分かる?」
伊藤タクミが真面目な顔をして訊いてきた。
「まんがで見たかも。気功とか、発勁とかでしょ」
「大体あってる」とは八尋君。
「全然違うよ」伊藤君の呆れ声は八尋君に向けたものだろう。
伊藤タクミは片膝を付いて片手を地面にあてた。厨二っぽい恰好なのに、イケメンだから違和感がない。
「どちらかといえば風水かな。気というのは目には見えないけど、絶えず僕たちの周りを流れているものなんだ。そして、気が湧き出るところを組織では聖域としている」
魔法少女まくあの記憶があるわたしは、伊藤君の言っていることがすんなりと理解できた。自称『時の精霊せろっこ』は、マナの強いところを狙ってブレスレッドにためろといっていたが、語弊があって、正確にはマナの発生源を取り入れる必要があった。この場所ではもうマナが生まれ出ることはない。
「聖域がなくなるとどうなると思う?」
わたしは答えを知っている。八尋君が魔法少女まくあに教えてくれたのだ。
「気は世界を安定させるためのものなんだ。失われてしまうと、災害が起こりやすくなるし、人にとっても負の感情を抱きやすくなり、戦争の火種にもなる」
「組織の使命の一つが聖域を守ることだった……」
八尋君は眉を顰めながらつぶやいた。
「近いうち東欧で何かあるぞ」
昨日投げ捨てた銃器を回収し、八尋君はおもむろに崩れかけた本殿に入った。伊藤君についていくように促されたのでわたしも続く。
中では傷一つないわたしと同じぐらいの高さの仏像が鎮座していた。八尋君はスマートフォンをスラックスの後ろポケットから取り出し操作する。
がこん、と音がして、仏像が立ち上がった。とてもファンタジーだ。
「ここが組織の入り口だ。後で三室にもやり方を教えるよ」
「う、うん」
わたしとてもびびっている。仏像が座っていたところに階段があった。男子ズに続いてわたしも降りる。まんがやライトノベルだと、こういうときの階段はものすごい長いものだが、ここの階段は一階分ぐらいしかなかった。その代わり、行き着いた先にはエレベータがある。きっとここを建築した人も、永遠と続く階段の上り降りはしたくなかったんだろう。
わたし含む三人は無言でエレベータに乗り込んだ。
組織の本拠地は寂れた山の神社からして地下50階にあるらしい。エレベータにあったボタンがB50Fとなっていたので間違いないだろう。
エレベータの扉が開いて、わたしは単純に驚いた。広い。人も多い。そして、大人もいる。
こういう厨二病集団っていうのは、大抵少人数でつるむものとばかり思っていたがそうでないようだ。メンバーもしっかりしてそうなスーツ姿の男女で、怪しげなローブや民族衣装を着ている人はいなかった。
部屋の内装はドラマでみたオフィスによく似ていた。窓があったらきっとここがオフィスビルの50階と言われても信じてしまうほどだった。窓のない分観葉植物が多く、鬱屈さは微塵も感じなかった。
厨二病集団ではなかったのか……。
「会議室に行こう」
そう言って八尋君が歩きはじめた。勝手につかってもいいものなのか不安になったが、誰も止めないので問題ないのだろう。
行き着いた部屋は定員六人のこじんまりとした部屋だった。わたしたちが着席すると同時に事務員らしい女性が飲み物を運んできてくれた。八尋君が緑茶、伊藤君はミルクティーだった。わたしの前にはブラックコーヒーが置かれる。わたしの好みをいつの間にか把握されていたらしく、この組織にいることに若干の不安を覚える。テレパスとか有名だもんね。
「別に心読める人がいるわけじゃないから安心して」
そうわたしの心を読んだかのように声を掛けたのは伊藤君だった。八尋君は用意されているMacをプロジェクタにつなげている。もともとOSが起動していたのか、壁にスライドが表示された。
『ようこそ組織へ』萌え萌えな巫女さんイラスト付きだ。我が組織の呼称はそのまま『組織』らしい。
「なんでこんな名前なの?」
「揉めるに揉めて結局何も決まらなかったらしい」
「……」
八尋君がキーを押して次のスライドへとうつった。右下にはデフォルメされた先ほどの巫女さんがお祓いの棒で中央を指している。中央の一番大きい丸の中に『組織』があり、周囲に大小様々な宗教や団体名が書かれた丸が紐づいている。
「僕たちの組織はオカルトの国連だとでも思ってくれたらいい」
国連、だと?
「カバラ、ローマ正教、マニ教、ゾロアスター教、陰陽道、呪禁等、オカルトの総てを統括し管理する組織だ」
魔法少女まくあの敵が大きかったことに驚いた。道理で短期間に武器の改良を進めて無双だった魔法少女まくあを倒すに至るわけだ。
八尋君はスライドを使って大まかに組織の成り立ちを説明した。かつては各組織仲が悪く啀み合っていたが、時代が経つにつれオカルトが大きく衰退し、業界として存続の危機にたたされた。このままじゃいけないと立ち上げたのがこの組織らしい。本部はここ。
「でも、この組織って世界規模なんでしょ?」
この組織には全世界で大体五万人ほど所属しているのだとスライドにあった。わたしの疑問に八尋君は眼鏡のブリッジを押し上げて答えた。
「ここはいわば、地球の心臓みたいな場所だ」
「は」
スライドは一旦閉じられ、代わりに地球儀が壁にうつった。日本列島にある一つの点からにゅっと各地に矢印が伸びる。凝ってるアニメーションだ。
「この点が、ここ。この矢印はさっきタクミが説明した気の流れ、龍脈だ。ここ周辺には色々な聖域があって、そこから世界に気が送り込まれているんだ」
「つまり、この街周辺の聖域を狙ったら、世界がダメになる可能性があるってこと?」
「理解が早くていいな」
ぞっとした。こんなしょぼくれた街なのに、そんな爆弾を抱えていたとは。
「組織のことは大体わかったけど、勝手にわたし入っちゃっていいの?」
昨日のノリはかなり軽かった。
「大丈夫だよ。所長は僕で、タクミは僕の補佐」
八尋君はお偉いさんだった。組織の代表者ではないのだけれど、この基地の責任者ではあるらしい。
「三室みたいに異能が見える人って結構貴重なんだよ。ここの組織でも約半分が普通の人だ。だから、もし見つけたら積極的にリクルート掛けるような規則になっているんだ」
「なるほど」
昨日証明したとおり、わたしは本当に見えるだけだけど、それでいいようだ。
でかい会議室に場所をうつし、魔法少女まくあについての会議になった。この場には我々中学生トリオだけでなく、偉そうなおじさん、ぼんきゅっぼんのお姉さん等色々なメンバーがいる。大きい部屋には20人ぐらいいて、壇上に八尋君が立って司会をする。スクリーンには魔法少女まくあとなった雪乃ちゃんの行動と戦闘の動画が流れていた。
「では分析班」
「はい」
ぼんきゅっぼんのお姉さんが立ち上がった。よく見るとうっすらと隈がある。
「ご覧のとおり、我々の攻撃は彼女に効きません。それは身体を纏う魔力によるものだと考えられます」
弾丸を喰らった部分が一瞬だけ白く光る。スロー再生でこそわかるが、肉眼では全然見えなかった。
「この魔力による防御の式は高度すぎて解析できませんでした。どの攻撃をどの程度まで無効化するのか、データが必要です。しかし、憶測ですが、打破は可能です。相手の、あるいは魔道具の魔力を枯渇することで、この防御は展開できなくなるでしょう。問題は、どの程度の魔力を保有しているかです」
魔力といっているのは、バイザーに表示される残エネルギーで間違いない。わたしは上唇を舐める。彼女の見解は的を射ていた。
「彼女の目的についでですが、今回に限って言えば聖域の破壊で間違いないでしょう。今後も聖域を攻撃してくるかどうかは不明ですが、警戒にあたるのが良いかと」
「それで正体は?」
彼女は悔しそうに顔を歪めた。
「不明、です。我々組織が知るよりもはるかに高度の隠蔽魔術がかかっていました。オーラによる判定は不可能です。また、容姿についても偽っている可能性が高いでしょう。その……」
八尋君は頷いた。
「こんなに痛々しい恰好をしていますし」
えっ。
ざわざわと会議出席者から所感が漏れ出る。
「外見は中学生ぐらいだが、最近男の子が魔法少女になるって流行っているしな」
「あれが厨二病ってやつか……」
「結構美人っぽいもんな。容姿をいじっている可能性があるな。喪女かもしれない」
わたしは自分のことではないにも関わらず、穴があったら入りたい気分になった。
会議は雪乃の魔法少女まくあ姿を『痛少女』と呼ぶことに決定して終了した。
わたしが正式に組織へ入社してから三日目の月曜日、アゼルバイジャンで一万人を超える負傷者を出した大規模なテロ行為があったが、マイナーな国のため、そのニュースが日本で報じられることはなかった。
「ぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜー……」
わたしは組織の地下51階でスクワットをしていた。
「三室さん、あと100回だよ、がんばろう」
そうわたしに付き合ってくれているのは伊藤君だ。わたしの教育係を買ってでてくれたのだ。と同時に彼はエースであるにも関わらずあっさりとサッカー部を辞めた。言葉には出さないが、わたしに付き添うためだというのがわかるから申し訳なさでいっぱいだ。その分強くならないと。
当初、八尋君はわたしをあのぼんきゅっぼんお姉さんのいる分析班とやらに所属させるつもりだったらしい。デスクワークだし、体力のないわたしにはぴったりだった。しかし、わたしは前線で戦うことを希望した。いざとなったとき、雪乃を殺させないためにだ。だから、これは必要なことなのだと自分にいいきかせる。
「ぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜーぜー……」
もう辞めたい。
銃を撃つにしても、筋肉が必要なのだと説明を受けた。重い銃器を持つ手、打った反動を吸収するための下半身……。それに、魔術──八尋君が手のひらから出した光もこれに分類される──を使用するのも体力を使うそうだ。ゲームやまんがの魔法使いはもやしっ子やしなびたじいさんが多いがとんでもない。
一応組織に来るのは雪乃が塾のある日だと決めた。雪乃となるべく一緒にいる方が魔法少女まくあの動向を把握するのに良いと判断したためだ。
「少し休憩する?」
「うん」
スクワットを200回やり遂げたわたしはそのまま床に座った。伊藤君からタオルをもらい、顔をごしごしと拭く。伊藤タクミも汗まみれだが臭くない。しかも髪から雫が滴っている姿はなかなかに絵になる。やっぱり王子様だなぁと思った。
「はぁ。警護班ってきっびしいね」
「そうだね。でも、自分の身を守るためだから」
「うん」
スポーツドリンクも彼からもらいごくごくと飲んだ。そんなわたしに伊藤君が目を細める。
「ずっと三室さんとお話したいって思ってたんだ。こうして仲良くなれてよかったよ」
笑顔がまぶしい。
「伊藤君の周りって伊藤君狙いの女子が多くて近寄れないんだよね。こっちの方が気軽でいいな」
「ははは。僕もだ」
あ、でも。
「こっちじゃわたしと話してても雪乃と仲良くなれないよ。どうしようか」
ここ数日でわたしは伊藤タクミに心を開きつつあった。少しなら協力してやってもいいと思いはじめている。だけど、伊藤君はキョトンとした顔でわたしを見返した。
「水守さん? なんで?」
「あ……、何でもない」
伊藤君は雪乃狙いではなかったらしい。クラスのムードメーカーだし、ぼっちのわたしを気に病んでいたのだろう。なんだか難しいな。
次に魔法少女まくあが狙う場所はいくつかあった。街の外れにある遊園地、駅に隣接しているショッピングモール、海……。記憶の中の三室は決まって遊園地を襲撃したが、今回は魔法少女まくあが雪乃なのでどこに行くのかわからない。襲うのは休日だろうから、雪乃ちゃんにそれとなく予定を聞き出す。友達なのに、スパイになった気分だ。
「今週末って何か予定ある?」
給食を食べ終わって、箸を置いたところでさりげなく訊いてみた。
「ううん。ないけど、どうしたの?」
なんだか休日お誘いするようなニュアンスになってしまったことに内心慌てる。
「えっ、えっとね」どうしよう「い、い、一緒に遊ぶのどうかなぁって」
「歓迎!」
ぱぁぁぁあああという効果音とともに輝くような笑顔になる。同時に聞こえる野太いうめき声。後ろを振り返ると男子数名は鼻に手をあてて顔を逸らしていた。顔を元に戻すと、雪乃の瞳は潤んでいた。よっぽどうれしかったらしい。
そういえば、わたしは今の人生で友人と一緒に休日を過ごすのは初めてだ。わたしたちぼっちにとって人生始めてのイベントが発生したわけだ。そう思い至って、わたしも今更焦ってきた。うわぁ。何軽々しく誘ったんだろう。ハードル高い。
「どこいこう。遊園地? お買い物? この前行けなかったカラオケもどう?」
さすがに、わたしと一緒の時に魔法少女まくあにならないだろうと思う。前回戦闘を経験したのだし、マナを集めるのに危険が伴うのだと分かっただろうから。
「今週始まった映画が見たいんだけど、いいかな」
映画を見てランチ、その後はショッピングで夕方に解散。完全にデートコースだ。
待ち合わせの十分前に来たにも関わらず、雪乃はすでに待ち合わせ場所にいた。彼女は白いワンピースにピンク色のリボンをつけた女の子らしい恰好だ。桜の髪飾りが黒髪によく映えていた。チャラそうな男に声を掛けられていたが完全無視で、タブレットを色々操作している。
わたしは普段着のパーカーにジーンズのスカートなので少し気恥ずかしいくなりながらも声をかけた。
「お待たせ!」
わたしは駆け足で雪乃に向かった。彼女は顔を上げて微笑む。ナンパ男はその笑顔に息を飲んだが、気を取り直してわたしの姿を認め、にやりと笑った。
「よぉ、かのじょぉ」
男はぬっと手を伸ばし、わたしの肩に触れようとする。
「やえちゃん、目を閉じて」
瞬間、ドゴッっと鈍い音がした。次に認識したのはナンパ男は倒れているということだった。雪乃の回し蹴りが決まったのだ。
「やえちゃんに手を出したら、殺す」
パチパチと周囲から拍手が生まれた。
最初こそトラブルがあったものの、雪乃とのデートとは純粋に楽しかった。映画は今話題になっているディズニーアニメで、展開に一喜一憂する雪乃はとてもかわいかった。ランチで映画の感想を言い合った後、雪乃はわたしを着せ替え人形にして笑った。彼女一押しの服を買って、ぶらぶらとウィンドウショッピングをする。
「あ、やえちゃん。私ちょっとハンカチをトイレに忘れたみたい。とってくるからちょっとだけ待ってて」
「いいよ」
ショッピングモールの中の円になっているベンチに座った。
友達っていいものだなぁなんてわたしはほのぼのとした気持ちになっていた。今度はカラオケに行ってみたい。雪乃はその外見っぷりから想像できないがアニメ好きで、記憶の中の三室やえ(わたし)とよくアニソンを歌った。家で一緒にアニメ鑑賞もやりたいな、なんて雪乃と遊びたいリストを作っていく。
魔法少女まくあなんて忘れて、ずっとこうして友情を育みたいって思った。
ほんの少し離れただけだった。「お待たせ」と駆け寄ってくる雪乃の手首を見て、楽しんでいた気持ちに冷水が掛かった。
色の変わった精霊石が二個に増えていた。