曇りが好きだった君へ
掲載日:2026/07/29
君は昔から変わった子だった。
皆の輪に入る事はなく、世の中をどこか遠くから見ている様な子だった。
僕はそんな君に惹かれた。
幼なじみだから君の少し特別枠に入れたのが酷く嬉しかった。
僕は君に毎日懸命に話しかけた。けれど、君の話は難しくて、半分、いや八割は理解できなかった。
でも、印象に残っている話がある。
ある日、ふと天気の話をした。「今日は曇っているね」と言うと、君は珍しく嬉しそうに笑った。
「私は曇りが一等好きだ」
理由を聞くと、晴れの様に元気を強制されず、雨の様に気分を落ち込ませない。柔らかく、曖昧に、私を覆い隠してくれる曇りが好きだと饒舌に語ったね。
その言葉は何故か僕の心の中にずっと残っている。だが、ついぞ理解はできなかった。
君が死んだ今も。
君が自殺した理由はわからない。僕は君の事を何も理解できなかった。
曇りが好きな理由も僕にはわからなかった。僕は晴れが好きなんだ。外で遊び回れて、煩わしくなくて、元気になれる。
今日は君に言う事があるんだ。今度、雨が好きな子と結婚するよ。僕は彼女が雨が好きな理由も理解できないけど、いつかわかる日が来るのかな。君の事も。
じゃあね、また来るよ。今日はよく曇っている。
君は笑っているかな。




