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横浜万博 第6話 短編版

作者: 岩田 ヒロ
掲載日:2026/05/21

9月、万博は無料招待券の効果で人が溢れ返っていた。

桜木町のゲートは長蛇の列。そんな喧騒を横目に、僕はバイトを休み、久美と一泊二日の新島へ向かった。


二人とも実家暮らし。親にはそれぞれ「友達と旅行」と嘘をついた。

フェリーで島に着くと、まだ夏の熱気が残っていた。原付を借りて海沿いを走り、静かなビーチで泳ぎ、写真を撮り合った。久美の髪も、海も、太陽もまぶしかった。


夜、ホテルの部屋で二人きりになると、久美から“あの匂い”がした。

一瞬だけ、中学のあの子の記憶がよぎる。


夜11時、僕は「星を見に行こう」と久美を誘った。

浜辺のひな壇に座ると、空には信じられないほどの星が広がっていた。流星がいくつも流れ、僕らはしばらく黙って空を見上げた。


ふいに久美が僕に覆いかぶさってきた。

髪がカーテンのように落ち、暗闇の中で彼女の顔は見えない。

彼女は僕の目を探るように覗き込み、やがて額が触れ、鼻が触れ、唇が触れた。


何を読み取られたのか分からない。

直子さんのことが一瞬頭をよぎり、不安が胸を刺した。


そのあと並んで星を見ながら、久美が言った。


「高校から続いてるカップル、もう私たちだけみたいよ」


なぜそんな話をするのか。

また不安がよみがえる。


「俺はずっと久美といたいよ」

「わたしも。でも未来は分かんないよね」


手を握り合うと、少しだけ安心した。


「タイムマシンで未来を覗いてみたいね」

「見たくないな。見ちゃったら、こうしていられないかも」


久美はそう言って笑った。

その笑顔を見て、僕は彼女を大事にしなきゃと思った。


新島から戻ると、夜のゲートで結城さんとの“報告会”が再開した。


「で、久美と直子さん、どっちがいいの?」


核心を突かれ、僕は苦笑いするしかなかった。

久美が好きだ。でも直子さんとも続けたい。

若さと愚かさが混ざった気持ちが、夜の静かなゲートに漂っていた。


僕はこの、ひと気のない夜の会話が好きだった。

本編はこちらから

https://ncode.syosetu.com/n7939lr/6

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