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空振り美食道〜大根一本で魔王と勇者を飼い慣らすまで〜  作者: 向陽葵
【第3部:魔王の裏庭と、禁断の大根編】

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78/90

勇者の来襲:聖剣は野菜を切るためにある(前半)

「……待っていろ、魔王ベルゼ・ブート! 貴様がこの地に張り巡らせた『緑の呪い(農園)』を、この僕が浄化してみせる!!」


 魔王領の境界線。帝都最強の勇者シグルドは、愛剣『グラム』を抜き放ち、眼前に広がる広大な大根畑に向かって叫んだ。  彼の目には、エリカが耕した肥沃な土地が「世界を飲み込む暗黒の植物兵器」に見えていた。


「ハァッ!! 聖なる光よ、不浄なる大根を焼き払え!!」  シグルドが聖剣を振り下ろすと、まばゆい光の斬撃が大根畑へと突き進む。


 その時。  光の斬撃の「数ミリ横」を、凄まじい風圧が通り抜けた。


「……ダメだよ。……それ、明日、お漬物にするんだから」


 ドォォォォォォン!!


 ――一回目、空振り。  エリカが放った「逆方向の衝撃波」が、聖剣の光を霧散させ、シグルドの白馬を優しく(風圧で)後退させた。


「な、なんだ!? 僕の聖なる一撃が、ただの『風』に掻き消されただと……!?」


 砂塵の中から現れたのは、麦わら帽子を被り、泥のついたリヤカーを引く少女だった。


「……お兄さん。……剣、キラキラしてて、かっこいい。……それ、千切り、できる?」


「せ、千切り!? 貴様、何を言っている! 僕は勇者だ! 魔王を倒し、この呪われた菜園を滅ぼしに来たのだ!!」


「……魔王おじさんなら、あっちで肥料混ぜてるよ。……お兄さんも、そんなところで暴れてないで、……キャベツの芯、抜くの手伝って」


「な、何だと……!? 魔王が……肥料を……?」  シグルドが視線を向けると、そこには首からタオルを下げ、鍬を持って「ここの土壌は窒素が足りんな」と部下に指示を出す魔王ベルゼ・ブートの姿があった。


「……お兄さん、お腹空いてるでしょ? ……聖剣さん、……ちょっと、貸して」


 エリカが、無防備に(驚きすぎて)固まったシグルドの聖剣へと手を伸ばした。

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