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空振り美食道〜大根一本で魔王と勇者を飼い慣らすまで〜  作者: 向陽葵
【第2部:帝都追放? 借金まみれの美食旅】

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69/90

美食裁判:舌先の決闘(前半)

「……これより、第128回『美食裁判』を開廷する! 被告、エリカ・フェルナンド!」


 帝都最高裁判所。そこは戦場だった。  高い天井まで届く大審問官の椅子。その眼下で、エリカはいつものリヤカーと共に立っていた。対面には、純白のコックコートを纏い、不敵な笑みを浮かべるフォアグラ卿が控えている。


「エリカ、落ち着いて。……お題は『大根を使った、心震えるデザート』。……デザートですよ! スープじゃありません!」  リノが隣で必死に耳打ちする。


「……デザート。……大根さんの、甘いところ、使う」  エリカは『大根丸』をゆっくりと抜き放った。法廷に緊張が走る。


「笑わせるな! 大根のような野卑な根菜で、高貴なデザートが作れるものか!」  フォアグラ卿が手を叩くと、部下たちが最高級のクリームとフルーツ、そして砂糖を山のように運び込んできた。


「私はこの『帝都の誇り(高級マンゴー)』とクリームで、太陽を模したパルフェを作る! 汚らしい大根など、家畜の餌にするがいい!」


 裁判開始の鐘が鳴り響く。  フォアグラ卿は手際よくクリームを泡立て、芳醇な香りを法廷内に漂わせる。傍聴席の貴族たちが「おお、素晴らしい」と感嘆の声を上げる。


 一方、エリカはじっと大根を見つめていた。


「……一回目、空振り」


 ドォォォォォン!!


 エリカが法廷の「天井」を叩いた。  衝撃波が空中の塵を払い、一瞬にして法廷内の温度が数度下がる。


「……二回目、ッ!!」


 次は、大根の「皮」の数ミリ外側を高速で凪いだ。  命中率「2」の真骨頂。  直接触れない真空の刃が、大根の皮だけを、ミクロン単位の薄さで「螺旋状」に剥き取っていく。その剥かれた皮は、空振りの上昇気流に乗ってキラキラと輝きながら法廷を舞い、まるで透明な羽衣はごろものようになった。


「な、なんだあの動きは!? 皮を剥いているのではない……空気に皮を『躍らせて』いるのか!?」


「……三回目、四回目」


 エリカの剣速が上がる。  空振りの衝撃波が、剥き身になった大根の内部を「共振」させ、組織を壊さずに水分だけを霧状に噴出させる。その霧に、エリカが監獄島から持ち出した「黄金の塩」を、空振りで細かく粉砕して混ぜ込んだ。


「……最後。……大根さん、お菓子になって!!」


 五度目の一撃。  エリカは、調理台の上の空気を「真っ二つに割った」。

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