表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空振り美食道〜大根一本で魔王と勇者を飼い慣らすまで〜  作者: 向陽葵
【第2部:帝都追放? 借金まみれの美食旅】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/90

帝都の門:思い出の味は泥の味(後半)

「……二回目、三回目ッ!!」


 エリカの『大根丸』が残像を描く。襲いかかる衛兵たちの槍は、エリカが放つ「空振りの壁」に阻まれ、磁石の同極同士が反発するようにあらぬ方向へと弾き飛ばされた。


「な、なんだこの娘は! 衛兵、何をしている、早く捕らえんか!」 「フォアグラ卿……無理です! 彼女の周囲だけ、気圧が狂っていて近づけません!」


 混乱の渦中で、エリカはリヤカーから最高級の『帝都大根』を取り出し、宙へ放り投げた。   「……ミラ、お塩! リノ、お水!」 「任せなさい!」 「はいっ、一気に沸騰させます!」


 空中で舞う大根に向け、エリカが「四回目」の空振りを放つ。  シュババババッ!!  直接触れずとも、真空の刃が大根を完璧な乱切りにし、黄金の塩と共に巨大な鍋へと吸い込まれていく。さらにエリカが鍋の「底」の空気を叩くことで、摩擦熱が瞬間的に一万キロカロリーに達し、大根が飴色に透き通っていく。


「……最後。……これが、本当の『帝都の味』だよ」


 五度目の一撃。  エリカは広場の中心で、剣を地面スレスレに横薙ぎにした。    ドォォォォォォン!!    爆風が広がり、フォアグラ卿が配っていた泥スープの樽をすべてなぎ倒した。代わりに、エリカの鍋から溢れ出したのは、黄金の塩とマンモスの出汁、そして大根の甘みが溶け合った、目も眩むような芳醇な香りの湯気だった。


「……あ、あぁ……。この匂い……昔、まだ帝都が豊かだった頃の匂いだ……」  一人の老人が、震える手で差し出されたお椀を受け取る。一口啜った瞬間、彼の瞳に涙が溢れた。


「……美味い。……美味いぞ!! これだ、これが俺たちの食べたかった飯だ!!」


 その声は連鎖し、瞬く間に広場を埋め尽くした。  食事を終え、活力を取り戻した市民たちが、フォアグラ卿と衛兵たちを包囲し始める。


「おい、フォアグラ! 今まで俺たちに何を食わせてやがった!」 「この娘さんの爪の垢でも煎じて飲ませろ!」


「ひ、ひぃぃぃっ! おのれ、覚えおれ、エリカ・フェルナンド! 次は正式な『美食裁判』で、貴様の舌を抜いてくれるわ!」


 フォアグラ卿は捨て台詞を残して逃げ出したが、市民たちの歓声は止まらなかった。  エリカは、空になった鍋を見つめて小さく笑った。


「……よかった。……大根さん、みんなに喜んでもらえて、嬉しそう」


「エリカさん……借金はまだ返せていませんが、今のあなたは、帝都で一番の『英雄』に見えますよ」  リノが誇らしげに言う。だが、エリカの目はすでに、フォアグラ卿が逃げ込んだ「帝都中央キッチン」へと向けられていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ